16歳の話(1)淡い憧れ
忘れもしない高校一年の冬だった。
試験が終わった昼過ぎには、辺り一面真っ白であった。傘を持っていなかった由香は滑らないように俯き加減に一歩一歩踏みしめて歩いた。
「濡れるぞ、傘の中に入れ」
驚いて振り仰いだ由香の眼の前に謙一の顔があった。
「有難う」
だが、そこで、由香がつるりと雪に滑った。慌てて手を差し出した謙一に縋りながら、由香はまた滑った。謙一は、傘を離して両手で由香を掴まえ、上へ引上げるようにした。由香の身体が、長身の謙一の腕の中へ入って来て、二人は抱き合う形になった。由香はずしりと重く、靴底に雪がくっついていた謙一は、押された格好になってよろめき、今度は由香が謙一を支えた。由香が、ふっふっふっ、と笑った。謙一も連れて笑った。他人が見れば、好き合った高校生同士が戯け合っているように見えたのであろう、
それから二人は急速に親しくなった。
目次
完結 全1話
2024年03月31日 10:42 更新
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小説情報
16歳の話(1)淡い憧れ
- 執筆状況
- 完結
- エピソード
- 1話
- 種類
- 一般小説
- ジャンル
- 学園・青春
- タグ
- 課題文学賞その十, 思春期, 高校生, クラスメイト, 雪降る日, 相合傘, 初恋, 憧れ
- 総文字数
- 1,661文字
- 公開日
- 2024年03月20日 21:12
- 最終更新日
- 2024年03月31日 10:42
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