セリフ詳細

二葉はそんな豊にどう接したらいいかわからないようでしたし、

僕は、何度説得しても非行をやめず、連中と付き合い続ける豊に……

正直、苛立っていました。豊のために言ってるのに、

僕達の方があんな奴らよりずっと、豊を思っているのに、って……

それが思い上がりだと、その時の僕は気が付かなかったから。


そうして手をこまねいている間に、最悪の事態が起こってしまいました。

非行仲間とのもめ事で、豊と仲間のひとりが集団暴行を受けて、

重傷を負って病院にかつぎ込まれました。

豊の友人は助かりませんでした……

病室に駆けつけた僕は豊に向かって、

ため込んでいた不満をぶつけ散々に責め立ててしまったんです。

豊は口の中も怪我をして、反論も出来なかった。

おまえのことなんかもう知らない、

もう僕達には一切関わらないでくれ、と、言い捨てました。


怒りとやるせなさを抱えて家に帰ると、二葉に責められました。

僕は豊のことをこれっぽっちも信じていない、 

こういう時に信じてあげられなくて何が友達だ、って。


二葉は心から豊を心配していたのに、僕は、

こんなに心配しているのにどうしてわかってくれないんだと、

勝手に裏切られたつもりになって。豊のことなんてちっとも考えられない、

自分がかわいいだけのどうしようもない人間だったんです

作品タイトル:TEAR~魔物の森の涙さん~

エピソード名:76/ 譲れない一線

作者名:ほしのそうこ  sohko3

6|ファンタジー|連載中|99話|360,426文字

高校生, 進路選択, 友情, 魔物, ヴァンパイア, ダークファンタジー

4,882 views

高泉敦(こういずみ あつし)は姉の親友、海月涙(みつき なみだ)に片想いしている、ごくごく普通の高校生……の、つもりだった。実は敦には世界で最強の「無限に湧き続ける魔力」が宿っていて、この世界では人間の上位に君臨し支配している魔物達にとっては都合の悪い存在であり、密かに命を狙われていた。

高校二年生になって間もなく、敦の身に魔物側から最初の襲撃が降りかかる。敦を守って目の前で友人が命を落とし、敦も死を覚悟した時、「涙さん」は自らの正体を表す。彼女は敦を守るため、魔物の森からやって来て人間の世界に隠れ住んでいた「狼少女」だった。

自分と彼女の秘密を知った敦は涙さんと共に生き延びるため、最強の魔力を使いこなすべく魔物の世界で修業する道を選ぶ。しかし、涙さんには敦にひた隠しにしている秘密が他にもあって。彼の気付かぬところで涙を隠しながら戦い続けてきたのだった。

ひと夏だけの悲恋と、喪失から立ち上がり未来を目指す少年達の、涙と進路選択の物語。

※魔物と人間が共生し、人間の身分が低い世界。魔物の世界はハイファンタジーで人間の世界は現代日本風というご都合世界観です。
【世界観の都合上、メインキャラクターでも死ぬ人がいたり負傷・流血描写があります。苦手な方はご注意ください。】

本作品に出てくる魔物の設定は名前だけ借りて独自設定になっている種族も多いです。他の作品・通説と設定が全く異なることをご留意ください。


【エブリスタ執筆応援キャンペーン「涙」で佳作受賞しました!】

2022/7/1 表紙を有償依頼にて「ふぬゅ様」(TwitterID:@fufufu_matsu )に描いていただきました。この表紙とそれを用いたアイコンは転載、二次利用禁止です。それ以外のアイコンは自分で描いた絵や撮った写真をAIイラストメーカーで変換したものです。