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活動報告

陰謀。

 二歳の世継ぎが亡くなった。
「誰かに呪詛されて、若君が亡くなったのかもしれない。」
 姫君は空を睨んだ。側近の侍従は頭を挙げた。
「内偵を入れてみましょうか。姫君に邪な意見を言って、悩ませている者がおりますれば、」
「嘉久蔵よ。調べてくれるか。」
「かしこまりました。姫様の望み通りにいたしましょう。」
 もし、次なる若君が生れなければ、わが身の立場が危ういと姫は焦った。
殿の弟である海草丸には三人の元気な若者がおって、人気を集めていたからだ。海草丸の妻と言うのは海女出身で丈夫な体格で、さらに四番目の子供を身ごもったという噂であった。もし、このまま世継ぎが定まらなければ、王権の流れは海草丸に持っていかれるだろう。何かを仕掛けなければならない。
年が明けて、新年の挨拶を兼ねた一族の宴が催された。
玉座には年老いた王が居て、臣下の舞を見ていた。宴たけなわになって海草丸が王の前に出て、大君に舞を捧げたいと申し出た。
「そちに、若が生れたらしいな。めでたいことだ。上手に舞えば、褒美を取らせるぞ。」
「ありがたき幸せです。」
 この時、大君が酔って、足をふらつかして、立ち上がろうとした。その大君の前に抜き身の刀が、床を滑るように投げ込まれ、大君の足元で止まった。海草丸は突然の出来事に仰天した。
「お前は、わしを殺すつもりなのか。」と大君は怒鳴った。

2016年 12月29日 (木) 16:47|コメント(0)

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