使者と死者の迷宮〈アースフィアの戦記外伝〉

作者 とよね

[ファンタジー]

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聖所冒涜の旅を続ける少女二人の逃避行×死者の王に取り憑かれた異能使いの追跡劇。
語れ。死者たちよ、語れ。



大陸は、増殖を続ける壁に呑み込まれつつあった。
生者は迷宮に暮らし、楽土を求めさまよう死者の巡礼団が、ときおり死にたい人を連れ去った。
迷宮を生み出しているのは、壁の中心の安らぎの地で織りなされる『壁の聖女』の歌。
けれど、いつの日か死者の巡礼団が安らぎの地にたどり着けば、世界の壁は消えると言い伝えられていた。

生きている鳥が姿を消し、機械仕掛けの鳥たちがカタカタと音を立てて飛ぶ冬の都市で、孤独な少女チルー・ミシマは本物の鳥を手に入れた。
それは異能使いを育てる学園の至宝、死者を呼ぶカワセミだった。

「カワセミが呼ぶ死者たちの後を追えば、壁の聖女のもとにたどり着ける」

たった一人の友人リリスと共に、チルーは学園から逃げ出した。

公教会によって少女たちの追跡を命じられたのは、死者殺しの異能を持つ青年。
一振りの処刑刀を手に、追跡者は革命の炎の中を駆け抜ける。
己の任務に疑問を抱きながら。

全15章。

■アースフィアの戦記とは
 遠い異星アースフィアを舞台に繰り広げられるファンタジー/SF小説群。

・かつて地球人に創造された『言語生命体』と呼ばれる新人類が繰り広げる戦模様を描いた本編
・言葉を魔法のように操る『言葉つかい』たちが異能バトルを繰り広げる外伝

 とで構成されています。
 すべて独立したお話になっているので、どの作品からでもお読みいただけます。

■執筆時期2020年1月〜2022年9月

■登場人物紹介欄のアイコンは、無料アイコンメーカー「charat(キャラット)」様のサービスを利用させていただきました。

ファンレター

遠い異星の革命の魔女

この作品は、SFファンタジー作品である。神学的なSF的設定で世界観が出来ている。その上で、ダークファンタジーである。ファンタジーは大別するとハイファンタジー、ロウファンタジー、ヒロイックファンタジー、ダークファンタジーの四つがあり、ファンタジーのサブジャンルの人気はその四つをぐるぐると周回することになる(なお、ロウファンタジーとは僕、成瀬川るるせが書くタイプの作品などを指す)。その中の、正真正銘のダークファンタジー。ただ、そのSFやファンタジーというのはカテゴリでしかない。とよねさんの描く小説の特徴は、世界観を踏まえた上で〈末端/現場〉を丹念に描くのに重きを置くという点にある。設定も世界観も練り込まれているので、上層の諍いで終始しても小説は成り立つが、とよねさんは〈市井の人々に寄り添った〉視点の描写をしつつ、且つ、彼ら彼女らは各々〈ハードボイルドな価値観〉でその世界を時に残酷にサヴァイヴする。この、作者の視線・目線をロバート・A・ハインライン風に呼称すれば〈月は無慈悲な夜の女王〉となるだろうか。男性の僕が読んでも登場人物に痺れるのは、人物同士のやりとりの軋み合いが、最高にポリフォニーを奏でているからだ。文学は人間を描き、SFは人類を描く。この作品は、SFでありファンタジーであり、同時に文学である。信念を持った理想主義の作者は、モノローグでも十分通用しそうな強度(インセンシティ)を持ったこの作品群を、パイプオルガンのように重層的に、しかし冷徹に奏でる。未読の方は、ぜひとよねさんのアースフィアシリーズに触れてみて欲しい。

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