十五 同期の懇親会

文字数 1,118文字

 午後九時だ。午後六時から始まった同期の捜査会議は三時間に及んでいる。
「さて、話はこれくらいにして、飲むか?
 ふたりとも、明日は非番にしたんだろう?」
 三島は明日の非番を再確認した。

「ああ、非番だ」と大島と池上。
「父も母も、二人が来ると話したら、楽しみにしてたんだ。
 なんせ、卒業以来だからな。
 二人とも親になったもんだから、私も早く親になれとうるさいんだ。
 まだ、相手もいないのに・・・」
 三島の言葉に大嶋と池上が苦笑している。

「何だよ。私か言うと、変か?」
「そんなことはない。三島は美人だ。引く手あまただろう?」
 大嶋が真顔で言った。三島はアマゾネスだ。美人で肩幅が広くて背が高い・・・。
「まあ、いい。晩飯にしよう。
 二人とも、奧さんに、泊りだ、と話してきたんだろう?」
 三島は大嶋と池上の妻たちとは顔馴染みだ。

「明日は非番だ、と三島のお袋さんに話したら、お袋さん、我家と池上の家へ電話して、
『今夜は我家に泊めるから』と言ってたぞ。
 嫁に気を使ってる。ありがたいよ」と大嶋。

「三島のお袋さんらしいな。仕事がらみだと気づいてる・・・」
 大嶋が感心して続ける。
「今回の事件。親爺さんに訊いたらどうだ?」

「私は父の存在を忘れてた。父は自分から志願して交番勤務だったらしい。父が何をしてたか詳しく知らないんだ・・・」
 三島がそう言っていると、座敷に三島の父が現れた。
「そろそろ、飯にせんか?」
「噂をすればだな・・・。さあ、飯にしよう」
 三島は二人を居間の食卓へ移動させた。


 父は居間の食卓で、三人にビールを勧めながら、今回の変死体事件について、
「警視庁の上層部四人の惨殺は、内部腐敗の処分だ」
 と、父なりの考えを示した。
「誰が考えても、私のような結論に至る。処分したの本庁の情報に精通した所轄の警官だろう。
 二〇〇三年以前から、私は上層部の腐敗を知っていたから上層部の不当な命令を拒否し続けていた。その結果、本庁から所轄の警ら勤務(地域課勤務)になった。
 二〇〇三年四月一日に、暴力団等の取り締まりを担当してきた刑事部捜査第四課暴力団対策課等に代わり、組織犯罪対策部が設置された。それ以前の事だ。
 私のような警官は何名も居た。皆、正義感があって不当の命令を拒否したが、警視庁上層部の圧力に屈して、内部告発できなかった者たちだ。今も所轄で現役の者もいるはずた・・・。
 私のように所轄へ移動になった警察官を調べてみろ。その部下や、その子どもで、警察官になっている者を調べるんだ・・・。
 余計な話になってすまない。
 さあ、飲め!
 ところで、幸子に相手を見つけてやってくれ!いい男は、他に居ないか?」
 父の話に、三島がやれやれという顔をしている。
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