第17話 地下に行く為の暗号

文字数 1,910文字

 二人は階段を下りた。
 登坂――いや、小野寺はぐっすり眠っている
「登坂さん、眠ってしまってますね」真は田中に行った。
「そうよ。よっぽど疲れてしまってたのね。普段はあんまり眠らないって言ってたけど……」
「あれ、野口さんがいない」村瀬は目を丸くして言った。
「野口なら、早く警察に知らせようと、家を出たよ」
 椎名はまた文庫本を片手に言った。
「まずい……。ねえ、田中さん。この家に地下ってないの?」
「ああ、あるわよ。あるけど、勝手に行くと登坂さんに怒られちゃうよ。私も昔好奇心で行った時、こっぴどく怒られたから……」
「その地下室ってどこにあるの。案内して」
 村瀬は言って、田中は「登坂さんに知られたら、村瀬さん責任取ってね」と、呟きながら立ち上がった。

 三人は外に出て、家の裏に回った。
「ここよ」
 田中はそう言った。
「え、何もないですけど」と、真。
「暗証番号がいるのよ」
 田中はボタンを押した。そこには1から9までの数字が並んでいる。
「私はここに立って何かなと思ってたら、登坂さんに見つかって怒られたから、相当なものがあるのかもしれないわね。私は怒られたくないからこれで……」
 そう言って田中は去っていった。
「暗証番号……。何番だろう」
 真は村瀬に聞く。
 村瀬は首を横に振った。「……取り合えず押してみよう」
 まず、十三年前の事件の『0816』を押した、すると、“ピーピー”と違うという反応をした。
「ダメだね」
「小野寺の誕生日は?」
 村瀬は両手を上げて、お手上げのポーズを取った。「ダメね、わかんない」
「畜生!」真は声を上げた。
「これは警察に言ったら動いてくれる可能性があるよね。警察に任せるしかない」
「でも、池田さんが自殺と断定した場合、警察はそこまで調べますかね?」
「うーん、微妙」
 二人の仲に沈黙が訪れた。ミンミンゼミたちが朝から泣き続けている。今日も日が照って暑くなりそうだ。真は体の中からほのかに汗をかいていた。
「そう言えば、池田さんは何故殺されたんですか?」
 真が聞くと、村瀬も思わず手を叩いた。
「そうだ。すっかり忘れてた。池田さんは本を持ってたよね?」
「まあ、そうですけど」
「もし、あの本にこの暗証番号が掛かれていたとしたら……」
「でも、池田さんでもその番号が地下室の暗証番号何てピンときますかね。この家に地下室なんてあるかわからないし、暗証番号の件も知らないし……」
「わかんない。取り合えず、警察が来るまで探してみるから。いくよ、真君」
「はい」
 何か、完全に助手にされてしまってるなと、真は半分ため息だったが、それが嬉しくもあった。

「やっぱり鍵が閉まってるね」
 真が村瀬の後に続いて階段を上がると、彼女は小野寺の寝室のノブを回していた。
「そこが怪しいですか?」
「一か八か……。仕方ない。ちょっとどいて」
 真が村瀬のそばを離れると、村瀬は一気にドアに体当たりをした。
「何をそこまで……」
「あんたにはわかんないよ。この探偵というものが」そう言って、何度も体当たりをする。
 下からも響いてくる。田中は何事かと思って、階段を上がってくる。
 木造のドアは大分、外れかかっていた。下の蝶番だけが、何とかくっついているようだった。
「わかりました。僕も手伝います。これで同犯ですね」
 真は苦笑して二人はドアを突き破った。
 村瀬は息を切らしている。
「ちょっと、あなたたちさっきから何してるの!」
 そう言ったのは後ろから来た田中だった。
「何って……。これから、真相を暴くんですよ」村瀬はベッドの上に置かれていた本を取った。
「池田さんを殺したのは誰かをね」

 田中を含め三人はまた一階に降りて、家のドアを開けた。
「何だよ、さっきから物騒だな……」
 ずっと本を読んでいた椎名が舌打ちをした。
 小野寺はその音で目が覚めて、伸びをした。
 それに気づかず、三人はまた裏の地下に入るドアまで行った。
「暗証番号はきっと、ここにあるはず……」
 村瀬はパラパラと本をめくった。だが、活字が薄くて数字のようなものは見当たらない。
 あまりにも焦っていたので、最後までめくったら、厚紙の部分に大きく手書きで『5963』と、手書きで書かれていた。
「5963! ご苦労さんって押してみて!」村瀬は書物に書かれていた数字を指差して言った。
「え、ご苦労さん?」真は暗証番号のパネルを見ながら言った。
「5963! あんた耳遠いいの?」
「5963」と言いながら、真は押した。
 すると、ドアが解除になり、ガチャっと音がした。
 村瀬はドアのノブを回した。「これで、入れる」
「私は知らないわよ……」
 田中はその場で立ち止まっていた。
 真と村瀬はそのドアを開けて、入っていった。
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