第11話 昭和は逝く。数え日

文字数 530文字

 師走も押し迫ると、子供もざわつく。
庭の端の木守り柿に雪が舞い、
水ぐるままで忙しげな音を立てている。
12月28日にはお餅をつく。
お米も材料もなかったはずなのに、
「ぺったんこ」は1日中続いた。
「おふくさん」といって、うるち米を
混入したお餅がある。
これが、ぶつぶつしていて美味しくない。
「千恵さんは女の子だから少しは『おふくさん』も
食べなさい」と祖母はいう。なんで、
私は欲しくない。

 門松は父が立てた。
おおらかで、どんとした性格の通り
立派な門松だった。
乗合バスの運転手のおじさんの家の分も
松などを切ってきて、
「さあ好きなのを持って帰な」と言う。

 真竹を切って煤払い。
ゴミと一緒に笹の葉も混ざっていた。

 客間の畳替えも済んだ。といっても
新しく作るのではない。
お祭りとお正月のために、積み上げて、
仕まっていた畳を敷き替えるのだ。
畳は青く、いぐさの匂いはお正月の
前触れであった。
十月に張り替えたので、障子は張り替えない。
大掃除がすむと神棚を組み立てる。
松「めんまつ」を棚に設る。
 2段梯子を用意して私は、松飾りをする。
飾り物は、ほとんど昨年のお古である。
金、銀の玉。大判、小判、時には綿で
雪を降らすこともある。

 金屏風を出して、日の出のお軸を床に
かけて、迎春の準備完了。

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