第17話

文字数 757文字

作品18 作品名 
『ロゴス《言葉》』

「教授、本当に大丈夫なんですか。私達が、やろうとしている事は恐ろしい事なんじゃないんですか」
「君。進歩だよ。勇気をもって、未開の世界に進むんだよ。だいいちに大勢の人達が喜ぶはずだ。君だって大好きなペットと会話をしたいと思った事ぐらいあるだろう」
「はい。でもシュミレーションみたいに上手くいくんですかね。動物が知能を持って人間のようにな人格を持ち、人間と会話も出来るなんて信じられません。大昔の漫画じゃあるまいし」
「君は感覚的に物事をとらえる人だね。理屈は簡単なんだよ。旧式のコンピューターに最新のハードディスクとCPUを外付けするだけの事だよ。要は動物という箱に人工知能という補助器を外付けするのさ」
「あとは人工知能が勝手に学習していき、連動している動物の意識によって、知能という道具を使う。学習が進めば、人工の声帯で人間の言葉もしゃべりだす。という事ですね」
「その通り。ああ、楽しみだ。私のペットの犬と猿は、いつも、ギャンギャンと吠えて、いがみ合っているように見えるけど、本当は、どんな気持ちなのか。半年後には解るぞ」
「えっ。教授はそんな事の為に、こんな研究をしていたんですか。大丈夫かなぁ」


「はぁ―」
「どうしたんですか、教授。疲れていますね。最近は帰宅時間も遅いようですが」
「あぁ。自宅に帰ると、うるさい犬とヒステリックな猿が愚痴ばかりを私に聞かせて、もう、うんざりなんだよ。言葉の無かった頃は良かった。ペットと触れ合う時間が私の癒しの時間だったのに。今は帰宅するのが苦痛で仕方ない。いっそ、私の思考回路から言葉を消してしまおうかと思うよ。きっと、悩みの無い世界なんだろうなぁ」

(了)

701文字
※あらすじ
言葉を使うようになった弊害と言葉の存在しない世界への憧れ。
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