9話―2

文字数 3,587文字

 森の中は大人でも迷う迷宮。二人は遊歩道を見失わない範囲で散策していた。初夏の爽やかな風が木々の間を通り抜け、とても心地良い。冬の間に折れた小枝や、春の時期の落ち葉が多く、手持ちの袋はすぐに満杯になった。

「そういえば、あなたは私より一つ年下よね? 学校には行くの?」

 ふかふかの苔の絨毯に腰を下ろし、ミンは水筒を取り出す。トルマのハーブティーをコップに注いで渡すと、ミディは頷いた。

「うん。引っ越しも落ち着いたし、来週から。ふもとの小学校に行くんだ」
「そうなのね。だったら毎日は会えなくなるかな……」
「だっ、大丈夫だよ。学校が終わったら急いで行くから」

 思わず寂しさを口にすると、ミディは慌てて弁解する。ミンはその返答を聞き、笑顔になった。

「そうだ。ミンも同じ学校なんだよね? 来週から、いっしょに行かない?」

 本来なら嬉しいはずの、約束の言葉。しかしそれは心に突き刺さり、ミンは声を詰まらせる。
 ミディは自分の異変に気づいたのか、心配そうに見つめている。ミンは苦しげに口を開いた。

「私、学校には行ってないの。セントブロード孤児院ってところで暮らしてて……」

 素性を聞いたミディの顔が、明らかに白くなる。ミンは心が痛むのを感じた。
 その時、近くの茂みが大きく揺れた。二人は飛び上がり、同時に目を向ける。茂みの中から、大きなイノシシが顔を出した。

「ミディ、下がって!」

 イノシシは二人を睨みながら、地面を蹴って威嚇する。ミンはミディを守るようにイノシシと向き合った。彼は左腕を掴み「早く逃げよう!」と急かすが、今背中を向けたら間違いなく襲われるだろう。
 迷っていると、イノシシは唸り声を上げて突進した。逃げ道はない。ミンは[潜在能力]を発動させ、イノシシに立ち向かった。

 ミンの[潜在能力]は[金属化]。その名の通り、『体を金属に変化させる』能力だ。発動中は全身が硬くなり、ずっしりと重くなる。ミンは右腕を体の前に構え、イノシシを簡単に跳ね返した。
 怒り狂うイノシシは我に返り、森の奥に逃げてゆく。その姿を見届けてようやく、ミンは[金属化]を解除した。

「い、今のは、いったい……」

 左腕の温もりに気づき、ミンは再び凍りつく。恐る恐る振り返ると、ミディが自分の腕を掴んだまま震えていた。
 ミディは手を放し、そのまま走り去る。その後ろ姿を目で追いながら、ミンは膝から崩れ落ちた。[金属化]している間、その体は金属同様に冷たくなる。ミディは体温が消えた腕を、ずっと掴んでいたのだ。

「そんな……!」

 ミンは声を震わせ、涙を零す。個性的な[潜在能力]を持つ『家族』に囲まれ、自分は『皆と同じ人間』だと思っていた。しかしミディに拒絶された今、自分は『皆とは違う人間』なのだ、と悟ってしまった。両親を持つ子供と、施設で暮らす孤児。それだけでも大きな壁があるというのに。
 涙は止まらず、嗚咽が漏れる。ミンは生まれて初めて、普通の人間ではない自分を激しく呪うのだった。


――
 遊歩道に出ると、辺りは鮮やかな夕焼け色に染まっていた。どうやら、数時間経っていたらしい。
 ミンは暗い気持ちのまま、ぼんやりと道を進む。自転車を停めた場所まで到着すると、聞き慣れた声に呼びかけられた。

「あれっ、ミン?」

 ゆっくり顔を上げる。診療所の玄関前に花壇があり、リベラが花に水やりをしていた。彼女はミンの両目を見た途端、血相を変える。

「どうしたの、目が真っ赤だよ?」

 リベラはジョウロを地面に置き、急いで駆け寄ってきた。[感情透視]で、壊れかけた心が見抜かれたのだ。
 ミンは再び泣き崩れ、リベラに抱きついた。彼女は黙ってミンを抱きしめ、診療所の中へ移動する。受付の前でニティアとすれ違ったが、夫は妻の視線に重く頷き、温かい目で見送ってくれた。

 待合室奥のリビングに入り、二人がけのソファーに座る。リベラはミンの頭を抱き寄せ、優しく声をかけた。

「辛いことがあったんだね。ニティアが先生に連絡してくれるから、落ち着くまでゆっくりしていって」

 ミンはしばらく涙が止まらなかったが、つっかえつつも少しずつ、事情を説明する。リベラは最後まで傾聴し、語り終わった後も長い間、頭を撫で続けた。

「確かに、[潜在能力]が目覚めた私達は普通の人間じゃないかもしれない。でもねミン、たとえ住んでいる環境が違っていても、人の心は通じ合えると思うんだ」

 涙が引いた頃、リベラはゆっくり語り始める。思わず「ほんとうに?」と返すと、彼女はにっこりと頷いた。

「ミディがあの時、学校が始まっても会いに行くって言ったのも、一緒に登校したいって言ったのも、あなたの傍にいたいから。ミンと同じように、一緒にいるのが楽しいって思ってるはずだよ」

 昼間に見た、嬉しそうな笑顔を思い出す。あの瞬間は確かに、二人の心が通じ合っていたような気がした。

「で、でも……ミディは私を、怖がって……」
「信じられないことが起きて、びっくりしたんだろうね。でも大丈夫。ミディはきっと、また会いに来てくれるよ」

 ほんとうにそうだろうか、と不安になるが、リベラの励ましの言葉は温かく、じんわりと心に染み渡った。


――
 外が真っ暗になった頃、レントが車で迎えに来てくれた。彼は問いただすことはせず、ミンを優しく抱きしめた。無口なニティアは、詳しい事情を伝えなかったはずだ。それでもミンはレントの気遣いが嬉しく、再び涙するのだった。
 そして『家』に帰り、誰にも説明しないまま一日が終わる。

「ごっ、ごめんください!」

 翌日の朝食後。授業の直前、玄関から甲高い声が飛んできた。ミンは心臓が止まりかけた。その声は紛れもなく、ミディのものだったのだ。
 いち早く駆け出したミンに続き、レントや生徒達も玄関に向かう。ドアの前には、青白い顔をしたミディがいた。

「ミン! よかった、無事だったんだね! 自転車が森の中でそのままになってたから僕、心配になって……」

 彼は心底ほっとした様子で駆け寄り、ミンの両手を取った。あの時と全く同じ温もりが伝わり、ミンは動揺する。

「昨日は逃げちゃって、ごめんなさい! あと、僕を助けてくれて、ほんとうにありがとう」

 ミディは手をぎゅっと握り、謝罪と感謝を口にする。ミンの視界は、涙でぼやけてきた。

「どっ、どうして……私、普通じゃない、のよ?」
「うーん。ちょっとびっくりしたけど、ミンは大切な友達だから。普通か普通じゃないか、なんて関係ないよ」

 真っ直ぐに見つめる朱色の瞳。リベラの指摘通り、二人の心は繋がっていたのだ。ミンは感極まり、ミディに抱きついた。『家族』が囃し立てるのも構わず、優しい温もりを噛みしめる。
 異なる特徴を持っていても、立場が違っても、心は通じ合える。ミンは「ミディと出会えてよかった」と、泣きながら歓喜するのだった。


――
「あれっ、お出かけ?」

 部屋を出る瞬間、リタに呼び止められる。彼女の傍らにいたサファノとルビナは、ミンがよそ行きのワンピース姿だと気づき、騒ぎ出した。

「あー、わかった! あの子に会いに行くんでしょー?」
「デートだ、デート!」
「もう、違うわよ」

 ミンは呆れ返る。しかし、リタもにやにやと追い討ちをかけた。

「ミディだっけ? あいつ絶対ミンに気があるよ。こないだ抱きついてた時、顔真っ赤だったもん!」
「こーなったら、つき合っちゃえー!」

 三人はからかいながら、廊下を駆け抜けてゆく。ミンは恥ずかしげに、深い溜息をついた。

 ミディが『家』に訪れた日から一週間経つ。今日は週末で、ミディと彼の両親から遊びに来てほしい、と誘われていた。
 確かに自分は、お気に入りのワンピースに花飾りがついたヘアゴム、更にいつものリュックではなくパステルカラーのポシェットを身につけている。だが、断じてデートではない。と思っている。

「そもそも、これは『恋』じゃないわ。だって……」

 ミンは、昨年の秋に亡くなった義兄コンバーのことを思い出す。彼は生前誰にも言わなかったが、『家族』のファビに恋をしていた。コンバーが一人きりで苦悩する様子を度々見かけ、ミンは幼いながらも心配したものだ。
 ミディと会うのは何よりも楽しく、心が弾むような気持ちになる。だが、コンバーが抱えていた『恋』の病とは、明らかに違う。『恋』とは相手のことを想うあまり、息が出来ないほど苦しく、震えるほど辛くなるはずなのだ。

「そうだ。今度また、リベラさんに聞いてみよう」

『人の感情が理解出来る』彼女なら、的確な答えを教えてくれるだろう。とりあえず対応策を決めたところで、ミンは機嫌良く『家』を出発した。

 しかし、この時のミンはまだ知らない。『恋』の病は既に、心の中に芽生え始めていた。



We can overcome the wall of prejudice
(どんな人とでも、心は通じ合える)


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登場人物紹介

【ノレイン・バックランド】

 男、35歳。[オリヂナル]団長。SB第1期生。

 焦げ茶色の癖っ毛に丸まった口髭が印象的。

 喜怒哀楽が激しくおっちょこちょい。

 髪が薄いことを気にしている。趣味は手品と文章を書くこと。愛称は『ルイン』。

 [潜在能力]は『他の生物の[潜在能力]を目覚めさせる』こと。

【メイラ・バックランド】

 女、32歳。ノレインの妻。SB第3期生。

 カールがかかったオレンジ色の髪をポニーテールにしている。

 お転婆で気が強い。怒ると多彩な格闘技を繰り出す。

 趣味は写真撮影。口癖は「まぁ何とかなるでしょ」。

 [オリヂナル]では火の輪潜り担当。[潜在能力]は『一時的に運動能力を高める』こと。

【ラウロ・リース】

 男、25歳。

 腰までの長さの薄茶色の髪を一纏めにしている。

 容姿・体型のせいで必ず女性に間違われる。明るく振舞うが素直になれない一面がある。

 ある事情から[家族]に素性を隠している。優秀なツッコミ役。趣味はジョギング。

 [オリヂナル]では道化師担当。[潜在能力]は『治癒能力が高い』こと。

【ナタル・シーラ・リバー】

 女、19歳。RC社長の娘。

 肩までのストレートの金髪。瞳は緑色。右耳に赤いイヤリングを着けている。

 母親を殺害した父親に復讐を誓う。勇敢で頼もしい性格。RCを欺くため男装している。特技は武術。

 [オリヂナル]では動物のトレーナー担当。[潜在能力]は『一時的に筋力を上げられる』こと。

【アビニア・パール】

 男、28歳。SB第5期生。占い師『ミルドの巫女』。

 黒い長髪で声が高く、女性に間違えられる。ひねくれた性格の毒舌家だが、お人好しの一面を持つ。

 幼少期の影響で常に女装をしている。職業柄、体を鍛えている。ソラとは犬猿の仲。愛称は『アビ』。

 [潜在能力]は『相手の未来が見える』こと。

【ソラ・リバリィ】

 女、25歳(初登場時は24歳)。SB第7期生。『Sola』の名で歌手活動をしている。

 天真爛漫な性格。空色の長髪を一筋、両耳元で結んでいる。特技はアコーディオンの弾き語り。

 音楽の才能は素晴しいが、それ以外はポンコツ。自他共に認める腐女子。アビニアとは犬猿の仲。

 [潜在能力]は『相手の感情を操る』こと。

【ユノー・ミストリス】

 男、48歳。カルク島出身の宝石職人。

 人情深い性格。運が悪く『疫病神』と呼ばれていたが、[オリヂナル]の公演をきっかけに人生が変わり、現在はアビニアのアパートで宝飾品の工房を営む。

 事故で意識不明になって以来、老化が止まったらしい。見た目は20代後半。

【チェスカ・ブラウニー】

 男、27歳。RC諜報部長。

 薄桃色の長髪を一本に束ねている。瞳は灰白色。灰色の額縁眼鏡をかけている。

 物腰が柔らかく、どんな相手でも丁寧に接する。

 諜報班時代のフィードの部下で、彼のことは『チーフ』と呼ぶ。

【フィード・アックス】

 男、30歳。RC社長代理。

 青い髪をオールバックにしている。蛇のような細い目が印象的。

 冷酷な性格で無表情だが、独占欲が強く負けず嫌い。

 ナタルの教育係を務めていた。鼻を鳴らすのが癖。

 [潜在能力]は『舌に麻痺させる成分を持つ』こと。

【アース・オレスト】

 男、10歳。

 さらさらした黒い短髪。

 実の父親から虐待を受け、『笑う』ことが出来ない。

 控えめで物静かだが、優れた行動力がある。特技は水泳。年齢の割にしっかり者。

 [オリヂナル]では水中ショー担当。[潜在能力]は『酸素がない状態でも呼吸出来る』こと。

【ミック・ラガー】

 女、10歳。モレノの妹。

 ふわふわした栗色の長髪。

 引っ込み思案で無口。古びた青いペンダントを着けている。

 世話を焼きたがるモレノを疎ましく思っている。アースのことが気になっている。

 [オリヂナル]ではジャグリング担当。[潜在能力]は『相手の[潜在能力]が分かる』こと。

【ヒビロ・ファインディ】

 男、35歳。SB第1期生。[世界政府]の国際犯罪捜査員。

 赤茶色の肩までの短髪。前髪は中央で分けている。飄々とした掴み所のない性格。

 長身で、同性も見惚れる端正な顔立ち。同性が好きな『変態』。

 ノレインを巡り、メイラと激闘を繰り返してきた。

 [潜在能力]は『相手に催眠術をかける』こと。

【シドナ・リリック】

 女、28歳。ミルド島出身の[世界政府]国際犯罪捜査員。シドルの姉で、ヒビロの部下。

 明るい緑色のストレートの長髪。真面目でしっかり者。策士な一面を持つ。

 海難事故により、[潜在能力]に目覚めている(『相手の記憶を操作する』こと)。

【アンヌ】

 女、24歳。ミルド島の女怪盗。『猫』。

 肩までの黒い巻毛。瞳は黄色。露出度の高い服装を好む。

 我が儘で気まぐれだが、一途な一面も見せる。

 ユーリットを女性恐怖症に陥れた張本人だが、事件後何故か彼に好意を抱くようになった。

【ウェルダ・シアコール】

 女、27歳。SB第6期生。SB近所の交番勤務。

 赤みがかった肩までの黒髪。瞳は茶色。

 曲がったことは嫌いな性格だが、面倒臭がり。ソラの親友。

 [地方政府]に在籍したことがある。ソラとアビニアに振り回されたせいか、しっかり者になった。

 [潜在能力]は『手を介して加熱出来る』こと。

【デラ&ドリ・バックランド】

 男、12歳。バックランド家の双子の兄弟。

 明るい茶色の癖っ毛。無邪気で神出鬼没。

 見た目も性格も瓜二つだが、「似ている」と言われることを嫌がる。

 [オリヂナル]では助手担当。[潜在能力]は『相手の過去を読み取ること』(デラ)、『相手の脳にアクセス出来ること』(ドリ)。

【モレノ・ラガー】

 男、15歳。ミックの兄。

 真っ直ぐな栗色の短髪。

 陽気な盛り上げ役。帽子をいつも被っており、服装は派手派手しい。

 割と世間知らずな面がある。妹離れが出来ない。

 [オリヂナル]では高所担当。[潜在能力]は『一時的にバランス能力を高める』こと。

【ミン・カルトス】

 女、12歳。SBの生徒。生まれて間もない頃、SBに捨てられた過去を持つ。

 黒髪を低い位置でツインテールにしている。チェック柄のワンピースが好み。

 おとなしい性格だがお喋り好き。SB近所の町で幼い子供達の世話を手伝っている。

 コンバーとは実の兄妹のような間柄だった。

 [潜在能力]は『一時的に体を金属に変えられる』こと。

【レント・ヴィンス】

 男、年齢不詳(見た目は30代)。SBを開設した考古学者。

 癖のついた紺色の短髪。丸い眼鏡を身に着けている。服装はだらしない。

 常に笑顔で慈悲深い。片づけが苦手で部屋は散らかっている。

【ミディ・ホート】

 男、11歳。SB近所の町に引っ越してきた少年。

 朱色の短髪。引っ込み思案だが友達想い。

 子供達の世話をするミンと出会い、彼女を手伝うようになった。

【リベラ・ブラックウィンド】

 女、32歳。SB第3期生。SB近所で診療所を営む。ニティアの妻。

 毛先に癖がある黒い長髪。右の口元のほくろが印象的。

 おっとりとした性格。元々体が弱く、病気がちである。

 メイラの親友。趣味は人の恋愛話を聞くこと。

 [潜在能力]は『相手の体調・感情が分かる』こと。

【ニティア・ブラックウィンド】

 男、35歳。SB第1期生。リベラの診療所の薬剤師。リベラの夫。

 白いストレートの短髪。白黒のマフラーを常に身に着けている。

 極端な無口で、ほとんど喋らないが行動に可愛げがある。

 筋肉質で、体はかなり鍛えられている。趣味は釣り。

 [潜在能力]は『風を操る』こと。

【リタ・ウィック】

 女、10歳。SBの生徒。

 焦げ茶色の肩までの短髪。動き易いズボンを身に着けており、時々少年に間違われる。

 SBを代表する問題児。フロライト兄妹とは悪友で、常にファビを振り回している。

 [潜在能力]は『衝撃波を操る』こと。

【サファノ・フロライト】

 男、8歳。SBの生徒。ルビナの兄。

 紫に近い青い短髪。好きな色は青。やんちゃな性格で、イタズラ大好き。

 ルビナとは双子だが二卵性らしく、あまり似ていない。

 [潜在能力]は『体全体から光を発生させる』こと。

【ルビナ・フロライト】

 女、8歳。SBの生徒。サファノの妹。

 橙に近い赤い長髪。好きな色は赤。

 性格はサファノと似ており、イタズラ大好き。

 [潜在能力]は『体の一部分から光を発生させる』こと。

【コンバー・カインドウィル】

 男、19歳。SBの卒業生。

 黒に近い茶色の短髪。優しい笑顔がトレードマークで、滅多に怒らない温和な性格。

 教師志望で卒業後は文系の大学に通っていたが、転落事故に遭ったファビを[潜在能力]で助け、亡くなった。

 [潜在能力]は『自分と相手の体の状態を交換出来る』こと。

【ギール・グリー】
 男、41歳。グリーンウルフ社の社長。『狼』。
 深緑色の短髪。大柄で強面。威圧感を常に放つ。
 傲慢な性格だが、その割に社員を大事にしている。
 フィードとは昔から面識があるようだが、互いに嫌悪している。
 座右の銘は「働かざる者食うべからず」。

【ラッシュ・シーウェイ】
 男、26歳。RC視察部員。
 黄緑色の短髪を立たせているが、身長が低くカバー出来ていない。
 誰に対しても生意気だが、小心者で臆病。おまけに運が悪く、とばっちりが多い。
 グリーンウルフ社を視察した際ギールに気に入られてしまい、出向扱いとなった。

【サリディナ・ミラード】
 女、29歳。グリーンウルフ社の専務。
 モスグリーンの長髪をきっちりまとめている。首筋にサソリのタトゥーが刻まれている。
 沈着冷静な性格。仕事には私情を挟まず厳格に対応する。

【セドック・ティール】
 男、39歳。グリーンウルフ社の副社長。
 黄土色の短髪。長身だが威圧感はない。
 非常に温和な性格。ギールとは昔からの知り合いらしい。

【イオ・ハウディア】
 男、20歳。ローレンの助手。
 偶然見かけたローレンに一目惚れし、大学を辞めて研究所に入所した。
 黒に近い茶色の短髪に、真っ赤な首輪をつけている。
 人当たりが良く忠実だが、人間としての情は欠落している。
 『犬』であり、生まれた時から自分の『飼い主』を探していた。

【ローレン・ライズ】
 男、46歳。ミルド島北部にある研究所の所長。
 以前起こした不祥事が原因で『穢れた科学者』と呼ばれ、忌み嫌われている。
 癖の強い金色の長髪に眼鏡姿。瞳は黒。目つきが悪く、猫背気味。
 研究のことになると周りが見えなくなる。
 研究所は不祥事後RC傘下になり、担当のフィードやチェスカにサンプルを押しつけている。

【ナト】
 女、6歳。チェスカの養子。
 チェスカに指示され、男装をしている。パステルブルーの短髪に白いキャップといった少年のような格好。
 この年の少女にしては冷静で、勉強が趣味。学力は大人にも匹敵する。
 元々孤児だったが、チェスカに拾われて以来RC諜報部で生活している。

【スコード=ニグル】

 男、21歳。ポーン島ニグル族の住民で、トゥーイの側近。

 濃い茶色に白が混じる肩までの短髪。冷静で物静かだが、少し抜けている。

 若いながらも剣術に優れ、側近になってからはガウィの弟子になる。

 トゥーイのことは幼い頃から気にかけている。

【トゥーイ=ニグル】

 女、17歳。ポーン島ニグル族長老の孫で、[鍵]の守護者。

 濃い茶色に黄色が混じる髪をお下げにしている。

 責任感が強く時々無茶をするが、年頃の少女らしい一面も持つ。

 甘い物に目がない。カルデムのことを尊敬しており、幼い頃からついて回っていた。

【ヤウィ=ニグル】

 男、84歳。ポーン島ニグル族長老で、トゥーイの祖父。

 ぼさぼさの白髪に、黄色が混じる。見た目はほぼ農民。

 根が呑気なため、多少の物事には動じない。

 トゥーイと同じように無茶をしがちである。よくぎっくり腰をやらかす。

【ガウィ=ニグル】

 男、52歳。ポーン島ニグル族次期長老で、トゥーイの父親。

 濃い茶色の髪を短く刈りこんでいる。毛先は黄色。

 厳格で神経質だが民からの信頼は厚い。狩猟部隊の長を務めており、屈強な肉体を持つ。

 トゥーイを[鍵]の守護者に推薦した張本人だが、何かと子離れが出来ていない。

【ダルク】
 男、30歳。フィロ島の『狩人』で、『鷹』。
 真っ直ぐな氷色の長髪。義父の形見のサングラスをかけている。瞳は赤色。
 冷静な性格で、『狩人』であることに誇りを持つ。猟銃の名手。
 元は孤児だったが義父ヨザを『熊』に殺害され、復讐を誓う。

【クレイ】
 男、21歳。フィロ島の『狩人』で、『虎』。
 少々癖のある氷色の短髪。瞳は黄色。
 感情がコロコロ変わり、落ち着きがない。人懐こい性格だが、狩りの時は別人のようになる。
 ダルクを本当の兄のように慕っており、彼と共に『熊』を狩ることを決心する。

【ヨザ・グラシア】

 男、享年49歳。フィロ島の『狩人』で、ダルクとクレイの育ての親。

 瞳は紫色。猟銃使いであり、黒いサングラスをかけていた。

 7年前『熊』に襲われ、殺されてしまった。

【ハビータ・ジェニアン】
 女、57歳。フィロ市場の責任者。
 ウェーブのかかった氷色の短髪。瞳の色はライトグレー。
 世話焼きな性格で、出店者達に慕われている。
 ヨザの幼馴染であり、長い間親交があった。

【ベイツ・ブライン】
 男、56歳。フィロ島出身の[世界政府]国際裁判官。
 元『狩人』であり、『しきたり』をまとめた指南書の著者。
 瞳は茶色。顔面には一本の大きな傷が走っている。

【ハルモ・ラスキー】
 女、年齢不詳(見た目は10代前半)。フィロ市場の名物売り子。
 さらさらした氷色の長髪。瞳は白色。見た目は少女だが胸だけは大きい。
 よくドジを踏むが、フィロ島の食材については誰よりも詳しい。
『狩人』達とは仲が良く、彼らのことは何かと気にかけている。

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