第184話「海弦(カイト)の思惑」
文字数 3,427文字
まぁ、今日はそのまま泊まるので何も気にしなくても大丈夫ッスよ
あの後、廃炉さんはホシ猫さんをフワフワの毛布に包み、客間の準備をしてからCaffeの方に戻ってきた···
鬼族なのにおもてなし力が半端ない··!
そして···イカタル*さんはと言うと、驚くべき速さで次から次へと美味しいお料理とお洒落なカクテルを作っては持ってきてくれるを繰り返していた―――
お二人共、150年の間に凄い職人さんのようになっている···
私達は言うまでもなく楽しい時間を過ごし、私とホシ猫さんの長い旅路での出来事や、イカタル*さんと廃炉さんのラブラブ生活の話題で大盛り上がりだった
その中でも夜叉丸は、昔とは打って変わって静かなもので―――――
····私としては夜叉丸の生い立ちについて凄く聞きたいのだけれど····
皆の前では言いたくないのかな···?
····昔は、私みたいなガキんちょには興味ないって言ってたくせに···
···優しくて太陽のような所と――――でも意思が強くて真っ直ぐな所でしょうか····
後は···、私のために自分を犠牲にしてしまう所―――――
····辛いことを耐えて、我慢して··、それでも泣き言を言わない所····
ずっと····、私を信じて待っていてくれた所―――――
·····夜叉丸の口からそんな言葉を聞く日が来るなんて信じられないよ··
昔の私は···極めて深刻なへそ曲がりでしたから······
それじゃあ、ようやく出逢えたお二人は、もう一時も離れることはありませんね!!
そう言って、少し困ったような顔をした夜叉丸はその後···
何も話そうとはしなかった―――――
そ、それはこっちのセリフだよ!急に居なくなるなんて!
····いや、いろはが寝たのを見計らったんだけどな――――
····どういう意味?
また、私の前から居なくなるの?
····疑ってんのか?
本当だから··そんな顔すんなよ
···いろはとは久々に会ったのに、俺はいろはを不安にさせてばかりだな
·····俺が自己中なゲス野郎なのはお前も知ってるだろ?
····いや
俺は結局自分の為だけに、いろはを手に入れたかった―――――
もし、いろはの俺に対する気持ちが冷めていたとしても、そんなもんはお構いなしだっただろう····
そしてそれは、今現在でも自己中まっしぐらだ―――――
····もし、そうだったとしても私はカイトが自己中だなんて思わな――――――
···俺は旅に出るまでの間、不老不死についてずっと調べていた
桐生家は、遥か昔から不老不死の研究をしていた一族だが····
沢山の犠牲を払いながらも、実際に不老不死になれた者など一人もいなかった·····
そう、不老不死になれた者はいない―――――、のだが····
何故か·····
不老不死から人に戻るための記述が書いてある書物を見つけた――――――
不老不死の研究は成功していない··不老不死になった事もない人間が人に戻る方法を探るなんてあり得ない
どう考えても眉唾物で、何の根拠もない書物だ·····
だけど····
その内容は、リスクはデカイが理に適っている記述だった
···因みに、いろはは不老不死の伝説を知っているか?
···じゃあ、その不老不死から人に戻るための記述は何のために―――――
····ここからは俺の想像の域だが、八百比丘尼はただの伝説じゃ無い可能性がある
そうなると、あの記述は信憑性が出てくるんだよ····いろは――――
····カイトと一緒に生きて、一緒に死ねるなら···他に望む事なんて何も無いくらい――――
わ、私には···孔雀明王様から言われている使命があるわ···
···いろは、さっき俺が言ったことを覚えているか?
·····一つ目は、不老不死から人に戻るために、例の記述の通り施さなければならない事があるんだが···
····それでも、俺は―――――
いろはを人に戻したいんだよ
今までも散々···、高リスクの中で鬼と戦っては怪我したり喰われたりしたから
一番酷かったのはね、腕を引きちぎられてそのまま目の前で喰われた時だった····
最初の頃は戦い慣れて無かったから、酷い目にあってばかりだったんだよ
····だから、そんな私のせいでホシ猫さんが力を使う事が増えてしまって――――
最近では寝ている時間の方が多くなってしまったわ····
····だから、それを思えば私はホシ猫さんの事も開放してあげなくちゃいけないんだ····
······だったら私のリスクなんてどうだっていいよ
それより····
二ツ目って、「復元」に関する事だよね···?
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