第一話、初戦
文字数 698文字
五十人程度、ドワーフの兵が丘をのぼってくる。お世辞にも早いとは言いがたい。人間の兵百が丘の上で待っていた。ドワーフの兵は重厚な鎧に身を固め、両刃の斧を持っている。等間隔に整列している人間側の兵に対してドワーフの兵は一つの塊にまとまっていた。静かだった。
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馬上の人間側の指揮官が命令を出した。地の利を生かし、上から下へ、丘の上からドワーフの兵五十を潰そうとした。戦になれている兵とは言いがたい、丘の傾斜の勢いを借りようと考えていた。
足並みをそろえ進軍する。徐々に速度を上げる。駆け足になる。ドワーフの兵との距離が徐々に近づいてくる。最前線にいる人間の兵の口から悲鳴のような叫びが漏れる。ドワーフの兵は足を止め、低い背をさらに低く構えた。ぶつかる。人間側の兵は勢いにまかせ槍を突く。ドワーフは頭を下げ、槍を兜で受けた。ドワーフの職人がミスリルを混ぜた合金で作った兜である。槍は兜の表面を滑るように、ことごとくはじかれた。
兵と兵の体がぶつかる。ドワーフは動かない。斧。人間の兵が飛んだ。ドワーフの斧で切り吹き飛ばされた。右に振り左に振り、あるいは縦に、両刃の斧を振るった。ドワーフは人間の胴にあるいは足に斧をたたき込む。鉄の鎧は易々と裂け、鎧の下に着込んでいる鎖帷子を食い破り、中の肉を臓物をまき散らす。動揺が走る。馬上の指揮官は撤退を命じた。が、坂の勢いで止まれない。立ち止まる前線の兵の背中に後続の兵がぶつかる。ドワーフは動かず斧を振るう。人間側の兵は左右に割れ、横に流れるように丘を駆け上り撤退した。
人間の死体が残った。
ドワーフの兵がゆっくりと斜面を登ってくる。
指揮官は戦線を下げた。
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