第二十八話、使者ソロン
文字数 2,698文字
ドルフはひげをなでた。野営中に領主の使者が来たと報告を受けた。使者の名と種族を聞いて耳を疑った。
そう言いながらムコソルは少し愉快そうな顔をした。
草場の腹巻き、とは、ドワーフのことわざである。古い友人が訪ねてきたらはらわたが飛び出ていても会えという意味である。
ムコソルは釘を刺した。
ソロン一行は、広めのテントに案内されていた。簡易なテーブルがあり、折りたたみ式の椅子にソロン、シャベルト、ヘセントは座らせていた。テーブルの上にはエールと塩見の強いチーズが置かれている。テントの入り口にはドワーフが二名立っており、時々こちらの様子を眺めていた。
シャベルトが声を秘めた。ノコギリリスのパン吉はシャベルトの胸元で縮こもっている。
ソロンは答えた。
私を疑っているのか。ソロンはシャベルトをにらみつけた。
ヘセントがいった。
友人にしては、ずいぶん長くあっていないような気がするが、人の尺度とエルフの尺度では違うのかもしれない。ヘセントはそう思った。
ドルフとムコソルがテントの中に入ってきた。ドルフはミスリルの鎖帷子に身を包み、赤いマントを羽織っている。ムコソルはゆったりとしたローブを着ていた。
ソロン達三人は立ち上がり、挨拶と簡単な自己紹介をした。
ソロンは親書を渡した。
ドルフは親書を開け、じっくりと目を通し、ムコソルに渡した。
ソロンは問うた。
ドルフは目を背け答えた。
ぎこちなく笑った。
ソロンはおよそのいきさつを話した。
親書をちらりと見た。
ドルフは言葉を選びながら慎重に答えた。
ヘセントがむっとした顔で言った。
少々あきれた顔をした。
人間同士でよくやるよ。ドルフは付け加えた。
「確かに困難な道だと思います。ですが、戦争となれば、人もドワーフも共に死に、領地も荒れます。そうなれば将来的に両方困ることになるのではないでしょうか。この国がだめなら、最悪、他の国に移住するという方法もあります。人とドワーフ、共に生きる道を話し合うべきなのではないでしょうか」
ソロンが言った。
ドルフは顔をしかめた。
「ギリム山のドワーフは四つの部族で構成されている。四つの部族はそれぞれ緩やかな塊で存在しており、はっきりと自分がどの部族に属しているのか答えられない者も多い。だが部族長達はそれぞれしっかりとした血縁意識を持っている。ドルフはギリムドムの部族長を兼任しているから、残り三つの部族長の調整役が王の役割だ。三つの部族のうちどれかが、あるいはすべてが、話し合いではなく、人間を攻めると言えば、それを止めることは難しい」
ソロンは諭すように言った。
ドルフは舌打ちした。
それから一時間ほど話をしたが平行線に終わった。
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