第2話 定子様のこと

文字数 554文字

 定子様は、道隆伯父と高階高子様の長女でいらっしゃる。高子様は、一条帝の父上(円融天皇)の御代に内侍として仕えた、漢詩も和歌も才能と知識にあふれた才女であられた。その才を受け継ぎ、定子様は知性にあふれ、明るく美しく、ただお一人の女御として一条帝と仲良く過ごしていらっしゃった。
 その時のご様子は、かの清少納言の書き著した「枕草子」という書き物に詳しい。
 ところが、その栄華は、定子様19歳、わたくしが8歳の時に突然終わりを告げる。正暦5年(994年)4月、道隆伯父が病に倒れ、帰らぬ人となられた。後を継がれたのは、定子様の兄君ではなく、道兼伯父だった。そのうえ、道兼伯父も同年5月にあっという間にお亡くなりになってしまう。次に後を継ぐのは、父道長か、定子様の兄君伊周様か。
 一条帝は、定子様を大切に思っていらっしゃったから、伊周様をとお考えだったらしい。ところが、一条帝の母君東三条院様(藤原詮子)が強く推されて父道長に決まってしまった。
 一条帝には、太政大臣藤原公任と親王様の娘、藤原義子様、左大臣藤原顕光の娘、藤原元子様が次々と女御が入内される。定子様は、お父上をなくされて悲しみの中、中宮としてあたらしい女御様方と贈答の品や文を交わし、交流を持っていらっしゃった。
 しかし、殿方は、そうはいかなかった。
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