5月7日 石ころ12:求婚に至る旅

文字数 569文字

 乙女は鉄の靴を三足、鉄の杖を三本、鉄の帽子を三つ、鉄の聖餅(せいへい)を三個携えて、消えた恋人を探しに出かけました。

 鉄の靴を履き潰し、鉄の杖をすり減らし、鉄の帽子が雨に貫かれ、鉄の聖餅を舐め尽くした頃、鶏の一本脚の上に立つ小屋を見つけます。小屋は独楽の如く回転していました。

「小屋よ小屋! 森の方に背を向けて、わたしに表を見せよ!」

 ぴたりと小屋は止まりました。

「フッ、フッ、フッ! これまで人間は見たことも聞いたこともなかったが、いまのいま目の前に姿を現したぞ!」

 バーバ・ヤガーが仰向けに寝ています。

「どこに行くんだい?」

「人探しに。姉たちがひどい悪戯をし、彼は飛び立ってしまったのです」

「かわいそうに! 遠い遠い世界の果てまでいかなくてはいけないよ! それに、あの男は、別の国の王女に求婚したのだよ」

 乙女はめげずに旅を続けました。

「今日は婚礼前夜の祝いの日だよ!」
「あの男は結婚しちまったよ!」

「たった一回の勘違いで恋人を見捨て、正否の確認もせず、自由の身となれば即座に別の女に言い寄る男のどこがいいんだい?」

「それもそうね」

 乙女はバーバ・ヤガーに弟子入りしました。

 偉大な魔術師として、歴史に名を残します。
 三つの鉄の靴、杖、帽子、聖餅を使い果たした末に求婚してきた男と結婚しました。

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