第4話 義母は虹の橋を渡った

文字数 713文字

「おかあさんがだいぶ弱ってきた」
義妹の連絡を受け夫と佐賀へ出向いた。昼の間、ひとりで家に
置いておけないと、義妹は退職して、義母の世話をしていた。
親の背を見て育っ子供たちも、誠心誠意祖母に尽くしていた。
私たち夫婦はたまに顔を見に行くだけで、何のお世話もしない。
  
 この時は病院で臥していた。痴呆症が進んで私たちのことも
理解していなかったように感じた。帰る時、挨拶して手を握っ
たらしっかり返してきたから、まだ大丈夫だと少し安心した。
「帰ってくるけんな。大事にしなよ、またくるけんな」夫の声で
いっとき、靄が晴れたのだろうか義母は
「おまはんは帰らんと残りな」
血は濃い、の言葉がよぎる…朦朧としながら息子と手を繋いだこと
によって一瞬晴れ間を見たのだろうか?反面私は義母にとっていい
嫁ではなかったのだと知って、寒々となった。

 1週間後、義母は旅立ったが、夫は体調が悪いと葬儀にゆかず
長男と葬儀に行った。

 4○年に及ぶ親子の断絶はあったけど、生きていればこそ再会する
ことができ、義妹夫婦に手厚く孝養を尽くしてもらった。終わりよけ
ればすべてよしだ。火葬場の外へ出た。義母の魂は真っ白な煙になって
真っ直ぐ天に昇った。と見たが、肩が重い石を乗せたように重い。
 霊を信じなくなって久しいが、これはきっと義母が何か私に訴えて
いる。久しぶりにお経を心で誦じた。やはり魂は存在するのか
私は死んだら物体になるだけだと思っているのだが?
 夫の健康にも点滅と赤信号がついていたので、私は頑張りすぎて疲労
が、肩で固まったのかもしれない。義母の初七日には元気になっていた。
 
 義母を初めて迎えた日のことを思い出している。
 あの時は貧しかったが、家族が5人もいた。





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