09.5【休日の傍ら】
文字数 3,466文字
週末だからといって教員達も皆休日であるとは限らない。現に、アダルブレヒト・カレンベルクはメルボルンの街に出て生徒達の行動に目を光らせている。街に出た生徒達が問題を起こさないようパトロールしているのだ。出した課題の採点が溜まっているので学校に残りたいと考えていた彼だが、当番で回ってきてしまったのだから仕方ない。
学生というのは自由になると羽目を外しすぎてしまうという傾向がある。既に成人のフリをして酒を買い込もうとしていた数人の生徒の首根っこを引っ張って帰りのバスに強制的に乗せたところだった。息をつき辺りを見渡すと、また何やら不審な動きをしている生徒を見つける。
陰気臭い格好をしているが、基本的にブレインの顔は端正な方だ。背も高く未だ伸び続けているようだし、コミュニケーション能力さえもう少し上がればモテるだろうに。そう考えつつ、アダルブレヒトは”まぁいいか”とブレインから視線を外した。生徒の恋路に興味は無い。その時、視線を外した先で見慣れたブロンドを見つけると、彼は彼女の姿を目で追った。髪を下ろし、つば広の帽子を目深に被ってサングラスをかけてはいるが、あの姿は見紛う筈が無い。アレはベルタだ。
アダルブレヒトはブレインの肩を叩き「ストーカーにはなるなよ」とだけ忠告して彼女の後を追った。ブレインが見張っていた店に入っていくようだ。彼女は今日はオフだったはず。何故わざわざ街に出てきたのだろうか。気になった彼は、ウェイターに案内されたベルタがエイミーらの席の対角にある席に座るのを確認し、二人がけのその席のもう一方に腰掛けた。
更新 2019/11/5 つづり