読書感想文にどうぞ! 『111本の木』
文字数 5,091文字
第68回青少年読書感想文全国コンクール
小学校中学年の部(3,4年生) 課題図書
原著:111 Trees : How One Village Celebrates the Birth of Every Girl
文:リナ・シン、絵:マリアンヌ・フェラー、光村教育図書、2021年
これは、インドの小さな村に住むスンダル・パリワルさんの物語です。
その村では昔から、男の子が生まれると盛大にお祝いしますが、女の子が生まれるとがっかりして静まりかえっていました。
女の子が結婚するとき、両親は結婚相手の家族に渡すために、たくさんのお金を用意しなければならないからです。
大理石の採掘のせいで、村はどんどん乾いて、荒れ地になっていきました。
村長に選ばれたスンダルさんは、豊かな自然を取り戻さなければと、決意しました。
翌年、スンダルさんの娘が病気で亡くなりました。悲しんだスンダルさんは、娘の思い出のために若木を植えました。
それからスンダルさんは、女の子も男の子と同じように大切な存在であることを分かってもらおうと、活動を始めました。
スンダルさんは、村に女の子が生まれるたびに、111本の木を植えてお祝いしました。
女の子がいるすべての家庭に、娘を学校に行かせること、18歳になるまで結婚させないよう説得しました。
村の人たちに反対されても、スンダルさんはあきらめませんでした。
そして現在、村には25万本以上の木があり、食料と水が十分にあります。
女の子たちは学校で学び、村の女性たちは生計を立てることができるようになりました。
シャム・スンダル・パリワルさん
"Piplantri: The Indian village where girls rule". BBC News. Retrieved 9 January 2022.インドの英字新聞、The New Indian Expressの記事によれば、
ピプラントリ村は、大理石の採掘のせいで一時は砂漠のようになっていましたが、地元の人たちのがんばりで、今では緑のオアシスに変身しました。
(『111本の木』より)
十分な教育を受けられない女の子や、子どものうちに結婚させられる女の子がたくさんいました。
想像してみて!
あなたがまだ中学生なのに、学校をやめて結婚しなさいと親から言われるの。
歴史的に、結婚とは財産の交換を意味していました。
結婚によって、メンバーを失った家族と新しいメンバーを引き受ける家族がいます。
この新しいメンバーの価値をどう考えるかによって、結婚時の財産の移動の方向が決まるのです。
女の子に十分な教育を受けさせると、その間に婚期が遅れるため、家族はより高い持参金を支払わなければいけなくなるの。
女の子が生まれた両親には、その子を養育し、教育を与え、18歳になるまで結婚させないことを約束する文書にサインさせました。
さらに、生まれた女の子の名前で3万ルピーの定期預金口座を開設し、18歳になったら教育費や結婚の費用として利用できるようにしました。
人口5,500人のピプラントリ村では、毎年約60人の女の子が誕生します。
村の人たちは一年中、女の子が生まれるたびに111本の木を植えています。
女の子たちは、自分の名前で植樹された木を「自分の兄弟」だと考えます。
毎年8月のラクシャ・バンダン祭では、女の子たちは「兄弟の木」にラキと呼ばれる聖なるひもを結んでお祝いします。
"Piplantri plants 111 trees for birth of every girl child". Village Square, Feb 20, 2021.
血のつながった兄弟でなくても、ラキを結ばれることで兄弟とみなされるそうです。
生まれ故郷の村では、女性たちは古い習慣に従ってグーンガットとよばれるベールで顔を隠していましたが、ピプラントリでは顔を隠す必要がありません。
サンゲータさんは、少女時代にはほとんど教育を受けることができませんでしたが、ピプラントリに引っ越してから、通信教育で大学を卒業し、車を運転し、仕事を始めました。
娘ヤナちゃんの名前で植樹をしたサンゲータさんは、娘は結婚をあとからにして、まず勉強をしてほしいと願っています。
"Piplantri: The Indian village where girls rule". BBC News. Retrieved 9 January 2022.より
トレーニングセンターには、国内の他の場所でピプラントリの集水・植林モデルを実現したいと願う、たくさんの人たちが集まっています。
技術者や公務員など、毎日50〜60人の人びとがピプラントリ村を訪れ、トレーニングセンターで学んでいます。
(『111本の木』より)
フランス革命の影響を受け、メアリ・ウルストンクラフトが『女性の権利の擁護』(1792年)を書いて、ヨーロッパでベストセラーになります。
こうして、女性が教育を受ける権利、財産を持つ権利、政治に参加する権利、労働する権利などを求めて、フェミニズム運動が始まりました。
自由と平等をめざす場所がどこなのか、政治や経済なのか、家庭内なのかで考え方の違いがあるの。
その目標達成の進ちょく状況は、国や地域によって違います。
目標4「教育」
目標5「ジェンダー平等」
目標6「水・衛生」
目標15「陸上資源」
17のゴールと169のターゲットからなり、2030年までに達成することをめざしています。
2022/08/16 書き下ろし
"Padma awardee Shyam Sunder Paliwal turned Rajasthan village into oasis". Hindustan Times. 26
"Girl empowerment, afforestation tied in unbreakable bond". The New Indian Express. Retrieved 22 May 2022.
"Piplantri: The Indian village where girls rule". BBC News. Retrieved 9 January 2022.
"Piplantri plants 111 trees for birth of every girl child". Village Square, Feb 20, 2021.
エコフェミニズムの流れを示したチャート図は、イネストラ・キングによるエコフェミニズム分類と鬼頭秀一氏によるエコロジー分類を参考にして、筆者が作成しました。
イラストはAdobe Stockからヨモヨリさま、REIさまの作品を使用させていただきました。