レビュー05 : ソーラー腕時計

文字数 1,320文字

[ジェントルスタイル]電波ソーラー腕時計 アナログ シルバー カレンダー機能
団塊ダンディ
★☆☆☆☆ 言語道断!
2020年3月3日 色 : シルバー

 十五年もの間寄り添った腕時計もついに虫の息となり修理不能。心機一転、定年を迎えた自分自身へのプレゼントとして、この度新たな腕時計を探す運びとなった。

 昨年から継続的にパソコン教室へ通った甲斐もあり、これを機に予てよりチャレンジを検討していたインターネットショッピングを実現するに至ったのである。求める条件は下記三点とした。

 【一】カレンダー機能
 【二】色はシルバー
 【三】電波ソーラー

 一体何度ミスタイプを繰り返しただろうか。幾つもの検索ワードを組み合わせること三時間半……、結果としてヒットしたのがこの電波ソーラー腕時計である。主張を抑えた精悍な佇まい、大きな文字盤によって担保された視認性。機能美に満ち、モダンかつ魅力的な一品であるに違いないと購入に至った。
  
 しかし実際に現物を目するや否や私は言葉を失い、血圧が急激に上昇した。何故なら届けられた一品は画像とは似ても似つかぬ腕時計だったからだ。文字盤をくまなく凝視したがカレンダー機能は皆無、何処にも付いていない。色はどう贔屓目に見てもシルバーではなく、一晩中イカ墨に浸したかのような漆黒のブラックである。電波ソーラーであるはずが、縁側で日光に当て続けてもまったく微動だにしない。
 
 しばし放心状態が続いた後、私はふとダンボール箱の片隅に説明書と見紛う厚さの冊子が同封されていたことに気が付いた。冊子の正体を悟った私は次の瞬間激昂し、ヒステリーを起こすことになる。

 なんと信じられないことに、それは卓上カレンダーだったのだ。ノートのようにシルバーのリングが付いておりパラパラとめくるタイプである。全てのページには『佐賀ソーラー ~信頼と実績の太陽光発電~』と会社名が印刷されていた。
 
 私は我を失い「馬鹿にするな!」と絶叫した。思い切り障子に投げ付けたカレンダーは、跳ね返った反動で祖母の遺影を直撃した。妻は驚きのあまり、炊飯ジャーのコードに足を取られ転倒してしまった。腕時計を床の間に叩き付けようとした私を、空手初段の息子がやっとのことで制止した。

 怒り心頭に発する、堪忍袋の緒が切れるとはこのことか。私が腕時計に求めていた三点の条件に対し、卓上カレンダーを同封することで明後日の方向から補完を試みるとは……。万死に値する愚行である。空いた口が塞がらなかった。

 さらに腹立たしいことに、カレンダーは一昨年の物であった。ちなみに私の名字は奇しくも「佐賀」である。印刷されていた会社名と合わせたのだろうか?何の意味もなさない、神経を逆撫でする配慮である。
 
 無論すぐに返品希望の連絡をしたが、国籍不明の言語による手紙と共にまたもや同様の卓上カレンダーが届けられるという杜撰な対応を受けた。

 末筆ではあるが、インターネットによる人生初の買い物を検討している諸兄へここに注意勧告の意味を込めてレビューを残すに至った。星一つさえ付けることが憚られる、虚偽に満ち溢れた腕時計であることを記しておく。

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