第10話 写真撮影

文字数 1,211文字

「はい!完成!どう?」
「わ……これが私?」
鏡に映ったのは可愛い女の子。ツインテールにくくられた髪の毛は緩く巻かれ、前髪も巻かれた後、ケープで固められて首を振っても動かない。アイメイクのお陰で目はパッチリ。チークもリップも、顔を明るくしてくれる。
「服も可愛いでしょ?」
「はい。とっても……。」
ふわふわのパニエスカートに、ピンクの可愛らしいトレーナー。本当に可愛い。萌愛みたいなクールな可愛さじゃない。ふわっとした可愛い感じが、私と萌愛の違いを明確にしてくれた。
「とっても可愛いです!」
「はい。望愛さんによくお似合いです。私のイメージにもぴったりです。」
「七川さんありがと!後は……。」
七川さんの隣に、小柄で可愛らしい女性がいた。
「あ!申し遅れました!カメラマンの上雲晴香です。」
「カメラマンの!」
新人さんっていうだけまだ若い。雰囲気が可愛い感じで、笑顔が素敵。この人もモデルになれそう。
「よろしくお願いします!さて!早速始めましょう!」
「は、はい!」
ここがスタジオ?一帯がピンク色。お洒落な家に置いてありそうなイスと、小さなテーブル。
「じゃあ、そこに座ってみますか。」
「は、はい。」
七川さんの目が小さく光る。うわ!これが七川さんの仕事の目?私を勧誘する時もこんな感じの目してたよね。
「まずは好きな感じでいいんで!ポーズお願いします!」
「え……。」
好きな感じって何?難しいけど、座って笑ってればいいの?思った通りにやってみる。すぐにシャッターが切られる、けど……。
「う~ん。もうちょっと自然に出来ますか?」
上雲さんが苦い顔を見せ、七川さんもカメラの隣に置かれた画面を覗き込んで、同じ顔をした。
「私も見ていいですか?」
現状を確認するのはいい事っていうのは何でも同じ、多分ね。でも写真を見た私は、絶望した。
「これが私?」
笑顔が引きつって、簡単に言うと、可愛くない。これならメイクしてなくても、いつもの写真の方が可愛いよ。
「望愛さん。」
私が絶望していると、七川さんが私の前に立ち、優しく目を覗き込む。
「誰かに届けるつもりで笑顔を作ってみてください。」
そのまま私に近づいてきて、耳元でそっと囁いた。
「萌愛さんに届くかもしれません。」
「え?」
萌愛に?届くかも……。認めてもらえるかも?この写真一つでも印象が変わる?
「頑張ります!」
萌愛にはあれだけ拒絶されているけど、萌愛の事を思うだけで、私は笑顔になる。きっと私の事を認めてくれる。いつか認めてくれる。そうやって願うだけでモチベがぐ~んって上がっていく。席に座りなおして、カメラを捉える。目線を合わせて、そっと笑顔を作る。
「体の角度を変えてください。」「次は窓辺に座って。」「髪の毛を降ろしてみましょう。」
もちろん、モチベーション一つですぐ出来るようになったわけじゃない。でもさっきより確実に撮影は進んでいった。上雲さんもどんどん笑顔になっていく。
「よし!okです!お疲れさまでした!」
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登場人物紹介

秋山望愛(のあ)

クラスで顔が可愛いと有名。


秋山萌愛(もあ)

そこそこ人気のモデル。

かっこいい路線で売り出している。

七川優花

望愛のマネージャー。

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