夜の壁

文字数 702文字

ハサミで紙を切る瞬間の時間を裂くような感覚が好きで
            僕はよく知り合いに嘘をつく

指先から這うように伝ってくる小刻みの振動は無意識だ
            誰も悪意の象形を覚えらない
 
手の平の中心に穴が空いていないか見つめる癖があった
            人を殺したことを忘れていく

振動が止まった夜に星の音はどうしても鳴り止まなくて
            右と左に分かれても冷静な土

それを僕は白い夢と呼びトイレの鍵を180°回転させる
            胸の奥にいる邪魔者は死んだ

慌ただしい鐘が鳴って闇の中にお前の背中を認めたくて
            墨汁の後ろに壁を築いていく

それは腐る壁だから僕はいつも手を洗うようにしている
            そう習ったからまだ幼い頃に

握るべきだったのは本当にスマホでよかったのだろうか
            無地の封筒に無地の手紙だけ

鏡に映る倫理を知る前の世界はいつまでも夜が明けない
            だから僕は犯すしかないのか

だから僕は切り続けるしかなくてもう指も残り少なくて
            手の平に穴を空けたい衝動が

黒い電気となって脳みそを徹底的に支配する約束だった
            そして明け方に壁と目が合う

壁は何も語らないから僕はずっと壁に向かって夢想する
            哲学よりも場の空気が理想だ

切り裂いた紙をなんて呼べばいいのか言葉の限界を知る
            夜という雰囲気が落ちていく

穴があるということは周囲に壁があるということだから
            僕はその壁に這うように飛ぶ
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