カレイナノダカラ人とシュウキサイコー人

文字数 1,428文字

アンドロメダ星雲の中にあるQ星には、二種類の人種が住んでいた。
一つは、カレイナノダカラ人で、彼らは男女とも皆、顔もスタイルも抜群に美しい人達だった。ただ、彼らの皆が、彼らの体から出るものは全て、即ち、唾も糞も何もかもムチャクチャ臭かった。地球人の唾や糞も臭いものであるが、そんなものは比較にならなかった。どのように臭かったかというと、想像を絶する臭さだったと表現するしかない。カレイナノダカラ人自身もその臭さに関しては、ある程度嫌悪感を抱いていたが、そういうのを気にしていたのでは、人生が面白くもクソもなくなるというので、あまり気にしなくなっていた。
Q星のもう一つの人種は、シュウキサイコー人で、彼らは男女とも皆、彼らの体から出るものは全て、即ち、唾も糞も何もかも素晴らしくいい匂いだった。そのどれもが、香水として通用する位だった。ただ、彼らの皆が、顔もスタイルもムチャクチャかっこ悪かった。どのようにかっこ悪かったかというと、ムチャクチャかっこ悪かったという表現がまさにピッタリだった。シュウキサイコー人自身も、そのかっこ悪さに関しては、ある程度嫌悪感を抱いていたが、そういうのを気にしていたのでは、人生が面白くもクソもなくなるというので、あまり気にしなくなっていた。
ところで、眉目秀麗なるカレイナノダカラ人からすれば、醜さの極致とでもいうようなシュウキサイコー人を見ると、おかしくてたまらなかった。いくら笑うまいと思っても、ついプッと吹き出してしまうのだった。中には、おかしさのあまり、笑いすぎて死にそうになる者もいた。
逆に、普段からいつも香水のような匂いをふりまいているシュウキサイコー人からすれば、カレイナノダカラ人の臭いは、おおよそこの世のものとは思われず我慢できなかった。カレイナノダカラ人に会うとシュウキサイコー人は、しかめ面を余儀なくされた。中には、その臭気にさらされる機会を人間修業の場ととらえ敢えてカレイナノダカラ人に近づくシュウキサイコー人もいたが、そんなシュウキサイコー人も間違いなくしかめ面をしていた。
だから、カレイナノダカラ人とシュウキサイコー人は、仲が悪かった。
そんなある時、Q星で、ある病が発生した。その病に一度かかれば、いろいろ不快な症状に悩まされなければならなかった。治療薬として様々な物質が試みられたが、どれも使い物にならなかった。
ところが、そうした状況の中、シュウキサイコー人のボタアリロント博士が、驚くべき偉大な発見をした。
カレイナノダカラ人とシュウキサイコー人の、それぞれの唾液を混ぜ合わせた後にできる物質の中に、その病の特効薬となる物質があることを、遂に突き止めたのだ。
Q星の人々は皆、歓喜の声を上げた。
ところで、2種類の大量の唾液を混ぜ合わせて、その中から特効薬となる物質を精製単離するには、どうしてもかなりの手間と費用がかかってしまう。
そこで、カレイナノダカラ人がその病にかかれば近くにいるシュウキサイコー人と、シュウキサイコー人がその病にかかれば近くにいるカレイナノダカラ人と、ディープキスをしてもよい、いや、すべきである、いや、絶対にそうせよ、という法律が賛成全員で可決された。
それによって、Q星のあちこちで、カレイナノダカラ人とシュウキサイコー人のディープキスが見られるようになった。
そのうちやがて、カレイナノダカラ人とシュウキサイコー人は、お互いを理解するようになり、無用な争いもなくなっていった。
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