第1話

文字数 1,588文字

「ねえ、おかあさんはまほうつかいなの?」

ひなちゃんはようふくをたたんでいるおかあさんにききました。
ひなちゃんもおてつだいをしています。

「どうしてそうおもうの?」
「だって、おかあさんはなんでもできるから」

おかあさんのたたんだおようふくは、おみせにならんでいるみたいにきれいでした。
それにくらべてひなちゃんのたたんだハンカチは、きれいなしかくになりません。

「おりょうりもじょうずでしょ?」

おかあさんのりょうりはどれもおいしくて、おうちでレストランがひらけるとひなちゃんはおもっていました。

「それから、ひながうれしいことなんでもわかるでしょ?」

おかあさんはひなちゃんがこまっているときやかなしいときにそばにいてくれます。
そんなときひなちゃんはとてもうれしいきもちになります。

おかあさんは「うふふ」とわらって、

「それはまほうとはちがうのよ。おせんたくもおりょうりもたくさんやってうまくできるようになったの」

そういうとひなちゃんのめのまえでじょうずにおようふくをたたんでみせました。

「だけどひなのことがわかるのは、わたしのまほうかもしれないな」
「ひなにもまほうがつかえるかな?」
「ひなもまほうつかってるでしょ?」

ひなちゃんはびっくりしました。じぶんのまほうなんておもいあたりませんでした。

「ひなはものとおはなしができるじゃない」

ひなちゃんはおうちにいるときにはぬいぐるみとよくおしゃべりをしていました。
ほいくえんにいるときには、おにわでありのぎょうれつをみたり、あさひらいたばかりのはなをよくみていました。
そんなときは、どこにいくの? そこからのながめはどうですか? とこころのなかでおはなしをしていました。

「でも、そうたくんはひなをのろまっていうの」
「そうたくんはいつでもげんきだものね。つかえるまほうはみんなちがうのよ」
「みくちゃんはおうたがうまくて、まことくんはえがじょうず」

ひなちゃんはほいくえんのおともだちのことをよくみていました。

「でもね、みんなおとなになるとまほうをつかえなくなるの」
「どうして?」
「おとなってまいにちきめられたことをしたり、えらくみせるためにしったふりをして、すきなことをわすれちゃうの」
「おとなって、たいへんね」

ひなちゃんがおとなびたことをいったのでおかあさんはおかしくなりました。
ひなちゃんはすきなことをだいじにしようとおもいました。

「うちにはまだ、まほうをつかえるおとながいるわよ」

おかあさんがそういうと「ただいま」とこえがして、ぱんぱんにふくれたマイバッグをもったおとうさんがかえってきました。
キッチンでおやさいやおにくをバッグからだしています。

「おとおさんもまほうつかえるの?」
「まほう? つかえるよ」

そういうと、ごにょごにょとじゅもんをとなえて、りょうてでおかしなどうさをしました。

「えがおになあれ」

こちょこちょこちょ……。
おとうさんはひなちゃんのからだをりょうてでくすぐりました。

「あははは、ずるいよ。それはまほうとちがう」

ひなちゃんはからだをくねらせておとうさんからにげだしました。

「ほら、いちごかってきたぞ」

バッグからとりだしたいちごをひなちゃんにわたしました。

「うわあ、おおきないちご!」

ひなちゃんはとたんにえがおになりました。
パシャリ。

おとうさんはとったしゃしんをひなちゃんへみせました。

「ほうら、えがお」

ひなちゃんとおかあさんはかおをあわせていっしょにわらいました。
おとうさんはこどものころからきかいがすきで、じぶんでカメラをつくったことがあるとおかあさんからきいたことがあります。

「ひなももうすぐねんちょうさんだな」
「そっか、ひなもおねえさんね」

はるからひなちゃんのほいくえんには、あたらしくちいさなおともだちがやってきます。

ちいさなまほうつかいたちがどんなまほうをつかうのか、ひなちゃんはいまからたのしみになりました。

おしまい
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