プロット

文字数 1,231文字

起)柚月心愛(ゆづきここあ)は幼馴染の男の子・氷雨柊(ひさめしゅう)のことが好きだ。しかし柊には「彼女」がいるらしい。「彼女」が誰かは知らないのだが、少なくとも学校では特に柊の周りにそれっぽい子は見当たらないので、他校の子なのではないかと心愛は思っている。柊はしょっちゅう「彼女」があんなことをしてくれた、一緒にこんなことをしたなどと惚気を言ってくるので、彼らの仲は良好であるようだ。心愛はそれを聞く度に心が張り裂けそうだったけれど、少なくとも顔だけはずっと笑顔を保って、柊と良き友達としての付き合いを続けていた。

承)そんなある日、学校に登校した心愛は教室に入ろうとして、はたと動きを止める。中から柊を含めた男子たちの話し声が聞こえてきたからだ。漏れ聞こえてきた話によると、どうやら柊は何かの遊びに負けたようで、罰ゲームとして次に教室に入ってきた女子に告白することになってしまったらしい。……柊にはあれだけ仲の良い「彼女」がいるというのに。柊は心愛に詳しいことを教えてくれないだけでなく、他の人々にはそもそも「彼女」の存在すら言っていない。だから、このままではその秘密を暴露することになるか、あるいは二股をかけることになるか、どうなるのかはわからないけれど少なくとも柊が困ることになるのは間違いない。少し迷ったが、教室に入ろうと近づいてくる他の女子の声が聞こえてきて、心愛は覚悟を決めた。自分が柊の仮初めの彼女になろうと。そうすれば心愛がこの関係をコントロール出来るので、少なくとも柊に不利なことにはならないだろうと。一度大きく息を吐いた心愛は、がらりと教室のドアを開けた。

転)柊は動揺した様子だったが、他の子たちのプレッシャーに負けてか、心愛を教室から連れ出す。それから場所を移した後、柊が何事かを口に出そうとしていたが、それに先んじて心愛ははっきりと宣言した。安心してほしい、と。目くらましのために自分が少しの間だけ仮初めの恋人になってあげるから、と。少し時間が経ってほとぼりが冷めれば、しれっとお別れしても他の子たちは何も言わないはずだよ。そんな心愛の申し出を、柊は受け入れた。その後、二人は恋人っぽい時間を過ごす。終わりのある関係だからこそ今を全力で楽しみたいと、心愛は柊から惚気とともに聞かされていた様々な「恋人とやりたいこと」を実行したりもした。そして、お祭りデートという本当の恋人なら幸せの最高潮であろうところで、ここらが潮時だろうと心愛は別れを切り出す。

結)柊には最愛の「彼女」がいるのだから、喜んで別れを受け入れるだろう。そう思ったのに、現実は違った。柊は別れたくないと言い出したのだ。そこから柊が告げたのは、衝撃の事実。実は本当は彼女はいなくて、ただ心愛とやってみたいことなどの夢物語を言っていただけだというのだ。意気地無しで嘘をついてしまったと、ちゃんと本当の恋人になりたいと言う柊。心愛は彼の気持ちを受け入れ、二人は本物の恋人同士になる。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み