蚊の襲来、そして

文字数 745文字

 パチン! 蚊だ。もうこんな季節か。僕は大きくため息をついた。地球温暖化のせいか近年の夏は尋常じゃない暑さだ。だけど、僕にとって暑さなんてどうでもいい。僕がこの世で一番嫌いなものは、蚊だ。
 ブーン、パチン! またか。今年はやけに多いな。
「ん?」
数十メートルほど先に耳障りな音を立てながら大きな黒い塊が近づいてくる。あっ!あれは蚊の大群だ!
「なんでこんなに一気に蚊が出てくるんだ!くっ……とにかく今は逃げよう」
僕は全速力で走りだした。こんなに全力で走るのは久しぶりだ。しかし、いくら走っても蚊の大群は僕を追ってくる。まるで殺人鬼のようだ。
「ちくしょうっ!一体何が起きてるってんだ!」
僕は必死に逃げ回った。だが、ついに足がもつれて倒れこんでしまった。蚊の大群は、もうそこまで迫っている。もはやこれまでか。そう思った瞬間、手に何かが触れた感触がした。
「フマキラーだ!!」
僕はとっさにフマキラーを手に取り、迫りくる蚊の大群に、一気に噴射した。目の前の蚊どもが見えなくなるほどの毒という毒を振りまいた。さっきまでの蚊の大群の騒音は鳴りやみ、静かになった。間一髪、僕は助かったようだ。しかし、あの蚊の大群は何だったのだろうか。あいつら蚊は人間にとって害をなす敵だ。決して油断してはならないのだ。それにしても、今日はとても疲れた。その夜、男は歯を磨くのも忘れ、泥のように眠った。
 翌日、その男は顔面から足先まで、体中が腫れ上がった状態で発見された。眠っている間に大量の蚊に体中を刺されていたようだ。この日から、世界中のあらゆる所で同じように大量の蚊に刺され死亡した人たちが発見された。大量発生した蚊に刺され、人々は滅び、生き血を吸えなくなった蚊も、やがて滅亡することだろう。
 僕の嫌いな蚊はいなくなる……
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