第1話 恐怖の克服

文字数 619文字

ここは竜の国。

薄暗い廊下に、ひとつの部屋がある。

僕は…どうせ父上のようにはなれないんだ…ずっとこうして…独りで…
その時、ドアがノックされる。
ねぇねぇ。誰かいるの?
っ!?誰…?
私はアイゼン・ルーヘルン。君の名前は?
…ファイナルだよ。ファイナル・ドラゴン…
ファイナル…いい名前ね!
…君はなんでここに来たんだよ。こんな城の誰も来ないような部屋なのに
うーん?よくわかんないけどここに来たんだ〜。ねえ、お部屋に入ってもいいかな?
っ…それだけは…
ドアが開く。
お邪魔しま〜……
ひっ…!
赤く滲んだ包帯。

ボサボサになった黒色の髪。

こちらを怯えた目で見る男の子。

今にも泣きそうな顔だ。

…大丈夫、だよ。私は君を傷つけたりはしないから…
ゆっくり、背中をなでる。
大丈夫。だから─
私は君の味方だから─泣かないで。
…アイゼン……僕は…僕は…!
アイゼンが来るようになってから数週間後。
入るよ〜
うん…
なんの抵抗もなく部屋に入れるファイナル。
今日はねー、こんなものを持ってきたんだ〜。
これは…なに?
お菓子だよ。クッキーを焼いてもらったんだ。
恐る恐る口に運ぶ。
はむ…
どう?おいしいでしょ?
…うん!とっても。
それが、ファイナルがアイゼンに見せる初めての笑顔だった。
ファイナル!ファイナル!
どうしたの?
「外」に行こうよ!
外…?僕はいいよ。どうせ…
もう!いっつもそうなんだから!
無理やり手を引っ張られる。
あっ!ちょっ!まっ…!
抵抗出来ずに部屋の外へと引き摺られていく─

(次回へ続く)

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登場人物紹介

ファイナル※子供時代

2度の誘拐で人間不信になる。

アイゼンの存在は心の癒しだった。

悲しい運命だとは、本人もまだ知らない。

アイゼン・ルーヘルン※子供時代

ファイナルへの「好奇心」が彼女達の歯車を回す。

血の味がする初恋相手。

約束は、永遠に─

ファイナル・ドラゴン

成長したファイナル。

本編開始直前に左目を失う。

もっと前に同じく左目に傷を負う、不幸な人。

力丸

今現在のゼロ部隊隊長。

ファイナルとジェイの幼馴染。

ジェイから言わせると「脳筋に見えてそうでも無い」らしい。

ジェイ

ファイナル、力丸とは幼馴染。

ゼロ部隊の3人の中では割と常識人。

でも本人はそんな事ないと思っている。

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