第1話 早稲田の便り
文字数 551文字
早稲田の便りを故郷から貰った。長男である自分が農家の実家を出て、早十年である。
私は、農家の仕事が嫌いではなかった。が、到底一生やるものでもないという想いが強かった。
都会への憧れというか、もっと大きな仕事がしたかった。田舎者の承認欲求みたいなものだったのかもしれない。
私が都会に出て情報処理の仕事に就いている間、次男である弟が家を継ぎ田畠を貰い受け、嫁を貰い子供も産まれた。
毎年、この時期になると弟は家族の写真とともに早稲田の便りを送ってよこすが、なぜかそれが心に刺さるのである。痛い。
私は、まだ都会にあって独身である。渋谷の人間交差点にあって、何か抜け人のような疎外感と孤独を感じるのは何故だろう。
休みの日、会社の同僚の誘いで埼玉県のYS市に行った。ここは、棚田が保存されている田舎然とした風光明媚な所だ。
私は、居並ぶ案山子を見て、「いやあ、久しぶり」と思わず挨拶してしまった。なんと恥ずかしいことをしたのかと含羞の念にとらわれたが、周りに人なぞいない。
友人は、ここに土地の一角を借り受けていて小さな田んぼをやっている。ワタシが手早く手伝うのをみて、友人は腰に下げたタオルで首筋の汗を拭いながら「素人じゃないな」と笑った。
私は、農家の仕事が嫌いではなかった。が、到底一生やるものでもないという想いが強かった。
都会への憧れというか、もっと大きな仕事がしたかった。田舎者の承認欲求みたいなものだったのかもしれない。
私が都会に出て情報処理の仕事に就いている間、次男である弟が家を継ぎ田畠を貰い受け、嫁を貰い子供も産まれた。
毎年、この時期になると弟は家族の写真とともに早稲田の便りを送ってよこすが、なぜかそれが心に刺さるのである。痛い。
私は、まだ都会にあって独身である。渋谷の人間交差点にあって、何か抜け人のような疎外感と孤独を感じるのは何故だろう。
休みの日、会社の同僚の誘いで埼玉県のYS市に行った。ここは、棚田が保存されている田舎然とした風光明媚な所だ。
私は、居並ぶ案山子を見て、「いやあ、久しぶり」と思わず挨拶してしまった。なんと恥ずかしいことをしたのかと含羞の念にとらわれたが、周りに人なぞいない。
友人は、ここに土地の一角を借り受けていて小さな田んぼをやっている。ワタシが手早く手伝うのをみて、友人は腰に下げたタオルで首筋の汗を拭いながら「素人じゃないな」と笑った。