忘れたりしないから

文字数 1,996文字

私は門脇 美織(かどわき みおり)27歳。

今はただの社畜…

朝は7時に出社帰りは23時前後。土日も遅くまで仕事になることも。ブラック企業に務めていた。

もう、身体が限界だ…

大学を出て5年間よく耐えた…
私には高校時代、大好きな恋人がいた。でも、その人はバイク事故で亡くなってしまった…

彼が亡くなってから10年以上経つのに、私は新しい恋をするどころか、当時のことばかり思い出し、前に進めずにいた。

記憶が薄れ美化されているのだろうか…最近はよくわからない…
今年もまた夏がやってくる。あなたと過ごした夏に帰りたい…

今日も帰宅は相変わらずの時間だ…駅まで疲れ果てて歩く私。

横断歩道を歩いていると、後ろから人の声が、ぼんやりとした私は声が頭に入ってこなかった。
ピィィィー!!!!!

うるさいな。なんて思ったら車のクラクションは私に鳴らされたものだと気づいたときにはもう遅かった…

ライトが眩しいと思った瞬間、私は車にはねられた…

目覚めると実家の仙台の家で私の部屋だった。

あれ?どこも痛くないし、怪我してない?!

車にはねられた記憶がある。でも、どこも怪我してない。なんで実家?時計を見ると朝の5時でまだ薄暗い。

(もしかして…私死んだ?最後に幽霊なって実家来た?!

部屋を出ると階段を勢いよく降り、両親が寝ているはずの和室へ行くと祖父が布団を畳んでいた。

(私は死んだんだ…だって…祖父は去年亡くなって、もういないんだから…)

祖父「なんだ、美織、こんな朝早くから。まだ学校行く時間じゃないだろ。寝ぼけてるのか?」

私「え?!学校?おじいちゃん何言ってるの?私はもう社会人だから(笑)」

祖父「美織、お前熱でもあるのか?大丈夫か?」

そう言って私の額を触るおじいちゃん。

祖父「熱はないな、悪い夢でもみたんだろ。お父さんもお母さんもまだ寝てる時間だから、部屋に戻って、もう少し寝てなさい。」

そう言って祖父に手であっちいけとされたので、渋々部屋に戻った私。

さっきは動揺して気づかなかったが、部屋に高校の制服がかけてあるのが目に入った。

(懐かしいなぁ〜最後だし着てもコスプレにならないよね?)

制服に手を伸ばす私。

手に取ると後ろにあった鏡に映った自分を見て驚いた…

(え?!若返ってる?!幽霊って若い頃の姿になるの?!

カレンダーを見ると日付は2013年8月1日。

(嘘でしょ?!私16歳?)

私が事故にあった日付は2024年8月5日。

彼がバイク事故で亡くなるのは2013年8月5日。

(彼はまだ生きてる?!

私は急いで携帯電話を探す。実家にいた頃は枕元か、机の上に必ず置いていた。

(あった!)机の上に置かれた携帯電話。

私の人生で唯一の彼氏は、中村 拓馬(なかむら たくま)。
地味でカースト底辺な私と対称的でスポーツ万能で頭も良くイケメンで性格も良い。もちろんカースト上位者だ。

完璧な彼だけれど、実は片親で家計を助けるためにアルバイトをしている。学校では禁止されているバイク通学をして、近くの公園にバイクを隠してる所に偶然私が遭遇してしまい、私は誰にも言うつもりはなかったが、バイクの後ろに乗せてもらって、一緒に帰ってるうちに彼から告白され付き合うことになった。

でも、クラスの皆は私が彼女だと知らない。

私が彼に誰にも言わないでと言ったから、彼は秘密にしてくれていた。

だって、付き合ってることがバレたら、彼を狙っている女子は多いから罵倒されそうだし、なんか恥ずかしかったから。

4日後、彼が事故で亡くなる未来を今の私なら変えられる。

事故の場所、時間、原因すべてわかっている。

8月5日は仙台七夕花火大会。彼はその日はバイトだった。私が見たいって言ったから、早上がりさせてもらって、急いで待ち合わせ場所に向かってきたため信号無視をして、トラックと衝突し亡くなった。時刻は18時45′分。

きっと、この日を乗り切っても、彼はこの先、私のために無理をする。そしたら命日が変わるだけ…

だから…

私は、朝早くに彼にメールを入れた。


突然朝早くにごめんね。別れてほしい。花火大会やっぱり行かない。

その後の彼からの着信やメールはすべて無視した…

学校が始まってからも、私は彼を避けた…

本当はこんなことをしたいんじゃない…

大好きなんだ…

でも…あなたに生きていてほしいから…

あなたに幸せになってほしいから…

涙が止まらない…好きなのに…でも…未来を変えたい…

神様がくれた、たった1度のチャンス…無駄には出来ないから…

例えもう会えなくても忘れたりしないよ…どこかで生きていて幸せになってね…

泣きながら寝てしまったのだろうか…目が覚めると私は病院にいた。身体中が痛い。

意識の戻った私のもとに先生が呼ばれてくる。


私の目の前に来た先生は彼だった…


16歳の夏、私はすべてをかけて彼の命を救えたんだ。

生きていてくれてありがとう…

そして今度は私が彼に命を救われたんだ…

今あなたは幸せですか?







ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み