プロット

文字数 1,452文字

起)和倉学園初等部は、夢を持つ子どものための小学校。個性豊かな子どもたちが集うが、その親もまた一風変わった大人たちである。主人公の小松歳馬(さいば)の父、心理(しんり)は大学の准教授で、歳馬が小学校で出会った不思議な出来事を話すと、たちまち得意の心理学を使って謎を解決してくれる。夕食を終え、ソファに沈まる歳馬。食器を洗い終えた心理が、コーヒーカップを持って歳馬の向かいのソファに座る。始まるぞ。歳馬はこの瞬間を心待ちにしていた。
ことり、カップがローテーブルに置かれる。
「歳馬、学校はどうだい?」
そらきた。歳馬は春休み明け、クラスの話題をかっさらったとっておきの謎を心理にぶつける。

承)仲良しの優(まさる)が春休み明けに教室の扉を開く。騒がしかったクラスメイトがぴたりとお喋りをやめた。
「優、いったいどうしたんだ?」
恐る恐る歳馬が尋ねる。病気かもしれない。でも優の顔色はよく、真新しい白いシャツは輝いている。眼鏡なんて前は掛けてなかったのに。まるで別人の様だった。
「それのどこが不思議なことなんだい? 優くんは元気に学校にやってきた、何も問題無いじゃないか」
歳馬は首をいきおいよく横に振る。心理に大切な事を伝える。
「優は春休み前までは太っていたんだ」

転)春休み前の優はどっぷりしたお腹を前に突き出し、いつもお菓子を手にしていた。冬でもパンパンのTシャツに短パン、サッカーに誘っても首を横に振る一方だった。
「同じ一個だろって、僕が持っているおにぎりの3倍くらいの大きなおにぎりを頬張るんだよ」
春休みはそんなに長くないけど、劇的に痩せてたのか、という心理の質問を歳馬は否定する。心理にうながされ、春休みの前後で気になったことをノートに書きだす。
●病気ではない
●以前より痩せてるけれど、少しすっきりしたくらいで、歳馬に比べるとまだまだ太ってる
●ご飯もおやつも食べる。でも前より量は減ったみたい
●優のお母さんは優の身体のことをすごく心配している。
●服のサイズが小さくなった
●おしゃれ眼鏡をかけだした
「ストップ、なんでおしゃれ眼鏡なんだい?」
優の視力は悪くない。現に眼鏡を外しても遠くが見えているようだった。心理は唸りながら考え込む。
「どうして眼鏡を掛けるようになったか聞いてみた?」
「心配したお母さんが用意してくれたって」
もう少し優の話を詳しく聞かせて欲しいと心理が頼む。運動は嫌いだけど、eスポーツは得意で、全国大会に出たことがある。将来の夢はゲームクリエーター、お母さんが作ったゲーム機に合うゲームを作るのが夢。
「お母さんが作ったゲーム機?」
優の母はゲーム機、とりわけVRゴーグルの開発者であることを伝える。
「それだ! たぶん優くんの眼鏡はーー」

結)不思議な眼鏡だった。優の眼鏡は食べ物だけが大きく見える眼鏡だった。
食べ物が大きく見えると、実際の食べた量よりもたくさん食べたように感じて満腹になるらしい。ちょうどVRゴーグルを使ってクッキーを大きく見せる研究を心理は論文で読んでいた。
優の母親はその技術を応用した眼鏡を作って優に与えた。
「かき氷のシロップが同じ味だって知ってるかい? 匂いだけ変えると味が変わったように感じるんだ。世の中は心理学を応用した不思議な現象で溢れているんだよ」
「もっと知りたい」
「ただ教えても身につかないよ。歳馬が実際に体験しないと」
春休みの謎は、ソファに座って謎を解く名探偵の手によって解明された。
「体験か、じゃあまずはかき氷をたくさん買って食べなきゃね」
歳馬と心理は笑いあった。
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