第1話 プロローグ

文字数 641文字

 どの世界に住んでいる人間でも、終わりと始まりは突然やって来る。

 突然の別れも、突然の出会いも。
 どちらも教えてくれる者は1人もいない。

 俺たちは生きることが当たり前だと、いつしか思っていて、大切な人との別れなど、想像すらしていない。

 それは俗に、この世界が平和だからだ。

 だから、突然たった1人しかいなかった、心の救いだった家族を殺された俺の気持ちは、到底理解してもらえないだろう。

 哀れだと思われるだけで、可哀想という言葉を言われるだけで、その言葉に重みは一切ない。

 残酷な世界だと、俺は苦笑した。

 何十億人といる人類の中の1人が死んだ。

 テレビのニュースを観ていても、その程度にしか思わないし、その程度にしか捉えないだろう。それが赤の他人ならば尚更に。

 ならばそれが身内なら、知り合いならどうだろうか。取り乱し、叫び散らかし、喚き散らかし、この世界に絶望し、感情の制御が出来ずに、自ら壊れにいくだろう。自ら破滅の道へと進み、勝手に自爆すると思う。

 もちろん、俺も勝手に自分自身を追い詰めて、壊していった。俺という人間を一つずつ壊して壊して。最終的にはなかったことにしようとした。

 そんな俺は、悲しみや後悔よりも先に、怒りが来た。

 怒りに身を任せた。そして全てが終わった後、後悔で押し潰されそうになった。

 妹を助けられなかった、自分の非力さを嘆いて。
 何故、そんなことになったのか。
 俺の身に何が起きたのか。
 そしてその先に起きた出来事。

 この物語は、それらを記したものである。
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