第1話

文字数 5,105文字

 この前、インドネシアの若い子達と焼き肉やスイーツの食べ放題に行って来た。ネットを見ると「パパ活」の文字が躍っていた為、何か悪い事でもしてるんじゃないか? って一瞬、罪悪感が芽生えたがセックスしたい訳ではないし、まあどうせ働きもしない引き籠りか、阿保で幸福の観念すら認識出来ない頭の悪い黄色人種の放言ばかりのSNS。(アメリカでも暇な奴しか書かないSNSに世論が反応するのは阿保であると言われ始めている。ネットの時代はもう終わっている)
まあ、そんな事はどうでも良いのだが、日本人の面倒臭い女と話するよりナチュラルで本能的な彼女らと話する方が楽しいだけである。
女との約束には律儀な私。約束の一〇分前には予約してあった店に入り面倒な会計をしていた。すると明らかに暇な店先に現れた三人の外国少女達。コンニチワ。今回の食事会の言い訳はJって子の誕生会である。入って来たJに「誕生日おめでとう」と言うと、女の子たちは皆、奢って貰っていいの? って聞く。私は「遠い国から来て頑張ってるんだからたまには良い事もなくちゃね」と応える

 ちなみにこの店。彼女らに聞くと何度か来た事があるらしい。職場の近くであるのと食べる事は全世界共通の娯楽である事は確からしい。決して安い店ではないし、かといってポピュラーでもないのだが。
私は後輩夫婦に連れられて一度しか来た事のない店なので彼女らの動きに見習って食材を取って回った。インドネシアはイスラム教の国なので豚肉は食わないし酒も飲まない。途中、Jに「誕生日だから酒飲んでいいぞ。神様には俺に騙されて飲んでるからバチあてるならコイツですと言えばいいぞ」と言ったのだが「いいです」と断られた。
当り前だが肉は牛しか取らない彼女達。私はラム肉があったので「ヒツジは大丈夫? 」と聞いた。豚以外なら大丈夫らしい。ちなみにインドネシアでは牛も食うが山羊の肉の方が食われるらしい。隣の国のインドは牛は絶対食わないので多分仲は悪いだろうなと思う私。彼女らに聞くとインドネシア人ですと日本人に言うとインド人? って思われる事が多いらしい。インド人は色が黒いから違うと言う彼女達。確かにインド人は色が黒いし、顔立ちは白人のように彫りが深い。対してインドネシア人は小鼻がちょっと脹れていて黒人系の子もいたり、白人系の子もいるし、黄色人種系の子もいて色はインド人程黒くはない。血の混じりの少ない日本人からすれば異国情緒ではあるのだが、彼女らからすれば中国人と日本人は顔一緒じゃんってなる。
とは言うものの、日本人男一人に対し、インドネシア人三人である。ましてや女だ。少々慣れてる節もあり会話が止まる。そこで意気地なしで小心者な私はついつい会話を繋げたく焦ってしまう。
なんと律儀な事だろう。日本人女を人とは思わず、自らの観念とエゴで振り回し、地獄を轢き回していた男が女の機嫌を取ろうとしていた。随分、人の道を究めたものだ。
ボックス席に座るとJが真正面で隣にU、私の隣には一番仲の良いA。丁度、一か月前位にAとJは一緒に食事をしたんだが丁度、その日はAの誕生日だった。それを知らなかった私は「丁度いいじゃん」って言っていたらJの誕生日ももうすぐと聞いていて、ちょっと放ったらかした後、そう言ってたなと思い「飯食うか? 」と誘った所こういう事になったのだった。
「ところでいくつになったの? 」
 とJに聞くと二四と言う。先日、聞いていたので分かってはいてAの方を向き「そういえばAも三〇になったしな」と言うとJとUはワハハと笑い、Aはふくれた顔をして「じゃあ、いくつに見える? 」と聞く。実際はAは二六になったのだが「一二歳」とAに言った。よしよしと頷くAに「子供かよ! 」と私が言うとUは「中学生? 」と笑い転げる。老いに対する懸念は世界共通なのだ。
そうするうちに今日は居ないのだが同じインドネシア人の実習生でIという二〇位の子の話になった。彼女が今度結婚するらしい。
以前に彼女から彼氏の写真を見せられた為、あっそうなのって話だったのだが、何と彼女と彼氏は一回しか会った事が無いらしい。
「それって親が決めた結婚相手なの? 」
 と聞くと違うらしい。どうやらネットで出会い、毎晩ネット電話で話す後、結婚を決意したらしかった。ほ? ネットで知り合い一回しか会ってないのに結婚? 。
「おいおい、もし旦那が女より男が好きだったらどうする? もし結婚式当日に会って、身長一メートルだったら? それか身長三メートルあったらどうする? 」
 と聞くと目の前にいたJが笑った。彼女たちが言うには新鮮だからいいかもしれないとも言う。日本にも見合い結婚や親が決める許嫁制度もあったし、それはそれでうまくいっていたからあながち間違いでもないのだが。
いくら何でもな。確かに彼氏は茨木で働いているらしいからわざわざ行ってデートをする訳にはいかないだろう。ネット電話だけで愛情を深め結婚に昇華出来る想像力は敬服するが、そもそも一〇代には一〇代にしか味わえないセックス…… もとい、恋愛があり二〇代には二〇代にしか出来ないセックス(おいおい、しつこい)いや恋愛があって然り、それを抜けた末にまあこいつなら許せるかとするのが結婚であると思う化石にも似た私。まあ、彼女達もネット電話で妊娠するとは思っていないだろうが女特有の種の保存本能は異常な想像力の増殖を起こすのだろうか? と恋愛感情以前に女を抱いていた私が言うべき資格もないのだが。(勿論、イスラム教徒の彼女らに私の下品なセックス論議をすると罰当たりの悪人としか思われないのでしない)
 男と女のあるべき姿が変わっているのかもしれないとは思うが、安易であればある程スリルは味わえないだろう事は確かであり、私のような悪い男(昔の話)にとっては現代はパラダイス! 女騙し放題であろう。
ユダヤ教から派生したキリスト教、それから派生したイスラム教で全部旧約聖書が聖典であり、モーゼやキリスト、ムハンマドは同じ預言者とされるイスラム教。日に五回のお祈りは日本人には奇異に感じるが、それ以外の戒めはユダヤ、キリスト教より緩い。何らかの宗教に入る事を法令化しているインドネシアなので私のような無宗教者は違法なのである。まあ、宗教云々は価値観の違いってだけで勝手にすれば良いのだが、貨幣信仰つまりはお金があれば幸福といった観念は世界共通である。すでに世界征服を果たし世界共通の概念といって間違いない。
だが、ハッキリしている事は社畜として会社勤めをしていて金持ちになるのは不可能である。又、小銭を持ったところで満足などせず金の呪縛に苛まれるのがオチ。家族や子供で満足し必要なだけ金があれば幸せと思うのが賢いかもしれぬ。人は生まれてきた事に使命を帯びている訳ではないだろうし、あくまでも人類継続の一部分と思うのが妥当だろう。
只、面白く愉快に生きねばならない。あの世も地獄も天国も信じないというより、今を楽しめない輩にあるのは死ぬ時の後悔だけである。歳と共に楽しみやスリルの鮮度も落ちて行く。年取って良い事があるなどと大嘘である。人間は死に向かって常時劣化をしていく。若い頃に人の何倍も楽しんできた私はざまあみろと才能のない同輩を見る度に舌を出している。
まあ、君たちは決して弱者ではない。冷静に考えれば不細工に生まれてしまった日本人女の方がもっと弱者であり不幸である。恋に恋するのも勝手ではあるが、世界は広く老いない限りは可能性に満ちている。老いぼれが夢を語ってはお天道様に申し訳ない。静かに象の墓場でも紛れ込み一生を終えるべきである。
なんて事をグダグダいう程老いぼれてはいない私。彼女達も処女懐妊でもしてキリストを育てる野望は持っていないだろうし、若い頃のエネルギーの捌け口や焦燥感、思うようにいかないって感じはよく分かる。バンドに明け暮れ、水商売にドップリハマり、女とやりまくっていた私は二〇位の頃には五〇メートル先からも分かるようなオナガドリのようなホステス達(勿論、全部奢ってくれた聖母のような悪魔達)を連れて飲み歩いていたし、別な若い女からは毎日飯を運ばせていた。それでも上手くいっているって実感はなかったな。
想像力も湧かないうちにセックスしてしまうと、どんな美人であろうと物にしか見えない。街で見かけた大学の後輩が「先輩! 凄い美人でスタイル抜群ですね」なんて言っても「へえ? そうか? 」なんて答えしか出来なかった。それは物というか、物体でしかありえなかったから。
時代は男が女の機嫌を取る為、貢ぎに貢ぎまくっていた頃で、当時私はそんな血迷った時代が信じられなかった。三〇超えて童貞だと妖精になるって話もあるが、妖精だと森の中をコバエのように飛んでいるだけってイメージがあるので早く風俗にでも行って棄てた方が良い。呑む打つ買うについては世界的にみてもトコトン緩い日本である、さあ簡単。安い所だと一万円ちょっとで決別出来るぞ童貞君。
おっとこんな下世話な話は敬虔なイスラム教徒の彼女らには言えない、即、悪人決定である。いざ! 男根…… 恐らく笑っては貰えぬだろう、やめとこう。
まあそこで「彼氏なら何でも良いが、結婚相手はハンサムの方が良いぞ」と助言してやった。女は綺麗や可愛いで若いうちはチヤホヤされるかもしれない。それもアッという間だ。ところが男はハンサム程出世しやすい。顔だけで選ばれる訳ではないが、会社にとってもイメージが良くなるし、そもそも営業でも対外的な仕事でもハンサムの方が実績を上げやすいのだ。当然、人が良いだけの馬鹿や問題が起きた際にすぐ頭の中が真っ白になるポンコツは出世の道は厳しい。頭の悪い男ほど善人に見え、優しそうな男ほど弱い。目の前に人参ぶら下げられ人を蹴落として出世を目指すような某〇天の社員のような連中はやがて自滅するだろうが、現実は意外とシンプルである。
って言われてもよく分かんねえよな。
そのうちインドネシアのどこら辺に実家があるのか地図を見ながら聞いていたんだが、ジャカルタは結構近いらしい。あんまり田舎ではないようだ。バリ島いいよって話になって「行った事ないけど」って笑っている彼女達。丁度、パプアニューギニアとの国境が線で引かれていたので「壁でもあるのか? 」って聞くと「壁??? 」と笑われた。
赤道直下の国だからだろうか、食い物は香辛料を使ったちょっと辛いものが多いらしい。
「そういえばインドの外国船は近くに行くだけでカレーの匂いがする。ロシア船はミルクの匂い。中国船はお香の匂いだな」
 って話していて「じゃあ日本は? 」と聞くので「醤油の匂い」と答えた。実際、日本人にはあまり分からないが外国人に聞くと日本の匂いは醤油である。「インドネシアはどんな匂い? 」と聞くので「山羊の匂い」と言うとみんな大笑いした。ちなみに隣に座るAの肩を匂うと甘いシャンプーの匂いがした。
 ちなみにインドネシアの人口で一番多いのは二〇代らしい。その点、ヨボヨボの高齢社会で苦しむ日本とは大きく違う。だが、やはり女の方が多いとの事。売れ残ったらどうする? と聞くと「奥さん四人まで持てるよ」と言う。あくまでもイスラム教徒に限りらしいが合法でもあるとの事。でも第三夫人とかでもいいの? と聞くと皆「嫌」と言う。そりゃそうだよな、間に男が入っただけでそれまでの友情も信頼も木っ端微塵に粉砕される女の本能にいくら宗教の力が及ぼうと無理だろう。男をめぐる業は女の本能でもあり元々神様が運命づけたものだ。

そろそろ出ようかなってしていると、何やら団体の若い男の子達が入って来た。それを見たUが「あ、ベトナムの子がたくさん来た]
」と言う。どうしてベトナム人だと分かるんだ? と聞くと「見たら分かる」と皆が口を揃えた。ほ? 額にベトナム人と書いているようには見えないが。「それにベトナム人は髪を染めた子が多い」との事。じゃあ、俺はベトナム人と間違われないように髪を染めるのは控えようっと。日本人は国や人種や宗教などの価値観に鈍感なだけで世界は意外と敏感に感じ取っているようだ。
その後、店を出て彼女たちは自転車に乗って帰っていったのだが、いっぱいお菓子やドリンクの入った紙袋を渡された。一昔前のピィリピーナなら「ご馳走さん、又、食わしてね」で帰った所だが、タダで奢って貰っては申し訳ないという彼女らの健気さを感じる
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