月光 Clair de lune/bergamasques

文字数 957文字


月明かりに惹かれ 表に出ていた。


さほど大きくもない秋の終わりの 冬の始まりの青い月。

その澄んだうす青い明かりは、草原を、森を照らす。

虫の音も無く、風の音も無く、音のない、薄い光と影だけの世界。


ゆるやかな歩みは止まらない。どこまでいくのだろう 足は私と別体になったように

誘(いざな)われるまま、照らされる森の小道に入る


いきなり、森が切れた。いや、、、木々が無い空間に入った

なぜかそこだけ森の中にポッカリと、小さな草原

青い光に照らされる舞台にように。

ああ、音のないこの空間に、私の耳には音が聞こえる。かすかな音楽が聞こえる。

月の淡い光は音に変わったのだろうか



いつの間にか、その草原の中程に、、、踊っている?

その身は軽く、軽やかに跳ね、ステップを踏む。

見えない相手と踊っているのか? 私には相手が見えない。

妖精なのだろうか、、

流れるように、喜ぶように、月の明かりの、月の音楽の、それを楽しむ影


幻影か

ああ、曲が終わりに近づく、、



私が嘆く間もなく消えてしまうと思った。




「あなたも?」

「・・君は、、、妖精なのか?」

「この、月に惹かれて出てきた者は、妖精か、その眷属よ?」



ーーー


彼女はひとであった。

「あなたも?」

の言葉通り、その彼女も月の光に惹かれ、導かれ、あの場所に。

そして、月の光の奏でる曲に誘われて踊った。

「月が、踊る相手を欲しがったのよ」


でも、


私には、踊る彼女の背に、薄い薄い羽が見えた気がした。

今にも飛び去ってしまうのではないか、と思うほど

彼女は軽く薄く 見えた。



「そうね、私も、飛べるかも、と思ったくらい。」


彼女は何処から来たのだろう?
何処へいくのだろう?


「私も知らないわよ?」




それから、毎年、音のない季節、青い月の光の夜は、

二人に訪れる。



二人は部屋から出、手をつなぎ、導かれるまま


そのつど、私は恐れる。彼女がそのまま飛び去ってしまうのではないか、と



だが、

彼女が月の光に踊るのが、淡く青い光の楽曲が、無上の幸福を私に与える





ああ、私も飛べたら、一緒に行けるのに  あの淡く青い世界に








Back Ground or Ending Music : Suite bergamasque, L. 75: III. Clair de lune
https://www.youtube.com/watch?v=Kn7MnQc0rC0
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