EPISODE1「復活」

文字数 8,240文字

 古代の日本。
 戦闘に秀でた女ばかりの部族があった。
 その名はアマッドネス。
 彼女たちは戦闘能力を高めるため特殊な儀式を用いて動物や植物。昆虫などの能力を取り込み異形と化して行った。
 そして次々と村や町に戦を仕掛けては壊滅させて行った。

 アマッドネスの次のターゲットとなったのは神殿を頂く都市・ミュスアシ。
 強固な城壁も役に立たず兵士たちもその魔力の前に倒れていく。

 だが魔力には魔力。
 三人の戦乙女が決死隊となった。
「はぁぁぁっ」
 髪の短いまだあどけない少女の気合のこもった拳の一撃。
 現代風に言うならノースリーブでミニスカートのワンピースというところか。
 動きやすさを優先されていた。
 右手には真紅の鳥を象った手甲。左腕には蒼いいるかを象った手甲(ガントレット)をしていた。
 その右手が蜘蛛を思わせるアマッドネスにめり込み倒した。
「ふう。次から次へと切りがない」
「大丈夫ですか? セーラ様?」
 付き従う黒猫が語りかける。
「平気。まだまだいけるよ。キャロル」
 得意げに語るがだいぶ疲れている。
 精一杯の強がりだ。
 そしてその疲労ゆえに注意力もなくしていた。
 頭上の敵に気がつかなかった。しかし
「危ない。セーラさん」
 叫び声が上がった直後に風きり音が。
 飛翔した矢がコウモリのような異形を撃ち抜いた。
 束ねた髪の少女が矢を放ったのだ。こちらはかなり布地が多い。ただ激戦の末あちこちが敗れている。
 それでも射手らしく直接の攻撃はそれほど受けていない様子。
「大丈夫ですか。セーラさん」
 ウェーブの掛かったセミロングの少女が心配して言う。
「はは。ありがと。ジャンス。助かったよ」
「主人の身を案じるなら敵の接近も教えなきゃなぁ。使い魔失格だぜぇ。キャロル」
「う……」
 「ジャンス」と呼ばれた少女の傍らにはカラスが。これまた人語を喋る。
「言いすぎよ。ウォーレン」
 空を行く使い魔は主人の弓使いに窘められる。

 二人が合流した。そこでは鎧に身を固めた少女がピラニアのような異形を袈裟切りにしていた。
 優雅さを感じさせる金色の長い髪。いわゆる縦ロールがそれを増強させていた。
 セーラとジャンスが可愛い顔立ちなのに対して、彼女は美人と言う感じ。
 彼女は剣士である。鎧には返り血がたっぷりとついており、それが激戦を物語る。
 荒い呼吸を整えて女剣士は二人に注意を促す。
「二人とも。気を抜くな。クイーンは近いぞ」
「ああ。わかってるって。ブレイザ」
 三人の少女は108の魔物を打ち倒しながら敵の大将を目指す。

 そして、最後の戦いが始まっていた。

 ジャンスの放つ矢が最後の一人・敵の大将を撃つ。
「うおおおっ」
 血まみれのブレイザが駆け抜け様にそれを斬る。
「はぁぁぁっ」
 とどめがセーラの拳だ。
 それぞれの技が炸裂するがまだ倒れない。
「ふふふっ。その程度か。戦乙女たちよ」
 なんと傷がふさがりつつある。さらには彼女に連動しているのか、倒されたはずの魔物たちまでが立ち上がりかけている。
 特筆すべきはその姿。異形ではない。つまり戦闘形態ではない。
 もっともこれは別に侮ったからではない。
 激闘の果て、既に闘いのために戦闘形態への変身も出来なくなっていたのだ。
 それでもまだ倒れない。
「なんて奴だ。このままでは負ける」
「あの紋様。魔力で不死身になっているようです」
「女王が蘇えるとコイツらまで。逆に言えば女王を倒せば全てが終わる」
 三人は顔を見合わせる。決意を固めた表情だ。
「ブレイザ様。まさか」
 剣士の使い魔である黒犬が狼狽して叫ぶ。
「どのみちこのままでは滅ぼされるよ。ドーベル」
「仕方ありませんね……既にこの命は神に返すつもりでしたし」
「奴を倒してみんなを守るにはあれしかない」
 のろのろと立ち上がる女王にあえて攻撃を入れない。
 一度は灰にしたのにあっさり蘇えったのだ。
 むしろ中途半端な方が復活に時間が掛かるようだ。
 その隙に三人の戦乙女は女王を取り囲むように正三角形の陣を。
 呪文を唱える。その詠唱が終わると三人は一斉に跳んだ。
「はっ」「やっ」「はぁぁぁっ」
 凄まじい気迫の短い掛け声と共に、全身全霊をこめた飛び蹴りが炸裂した。
 ただの蹴りではない。魔力を込めたらしくそれぞれの足が光っていた。
 そしてその光がクイーンに注ぎ込まれる。
「ぐぎゃあああっっ。魔力がぁっ……おのれ。我が力の源を断ち切ったかっ!?」
 悶絶する女王。だが三人は跳ね返された。
 それが限界だったかクイーンも膝を折る。
「くくく。この場は負けを認めよう。だがこれでは肉体を滅ぼすだけ。魂までは滅ぼせぬ。封印どまりだ。そして貴様らも我が

を受けている」
 戦乙女たちが足からどす黒く変化している。
 女王の力の源である魔力が彼女たちに流れ込んできたのだ。
「くっ。こちらも同じだ。魂までは屈せぬ。例え蘇えっても我らと同じ魂を持つものが」
 最後までいえなかった。
 セーラ。ブレイザ。ジャンスの三人はクイーンに注ぎ込まれた魔力によって爆発。
 その肉体は17才の若さで朽ち果てた。
 だがそれと同時にアマッドネスのクイーンも爆発を起こし封印された。
 それにより復活しかかった魔物たちも再び倒れた。
 神官が叫ぶ。
「急げ。全てを土に返す。埋めてしまうのだ。この場を清める」
 一同旗で聞いている。
「そして神殿を建てよう。魔物どもを封じ込め、戦乙女たちを称えるべく」
 ここで歓声が上がる。
「そうだ。戦乙女たちはまさに神になったのだ」
 災いを退けた時の声。
 そして

の戦乙女を称える声が上がる。

 幾多の犠牲を払い闘いは集結した。
 封印を主目的にしつつ三人の戦乙女…バルキュリアを称えるための神殿が建立された。
「神官様。われら使い魔は主達に殉じたいと思います」
 黒犬のドーベルが申し出る。
「我々もこの神殿を見守り続けます」
「いい加減疲れちまったし、寝させてもらうぜ」
 黒猫キャロル。カラスのウォーレンが続く。
「そうか。ならば見守ってくれ。女神たちを」
 こうして使い魔たちは神殿を守る存在として奉られた。

 長い年月が経ち、いつしか神殿の存在も歴史の闇に埋もれていく。
 戦国時代にはとうとう神殿も破壊されたが、封印自体は効力を保ちアマッドネスは閉じ込められたままだった。
 やがて神殿の存在も忘れ去られ、その土地には街が作られていく。

 だが、闘いは終わってなかったのだ。







 現代の日本。二月の東京。
「何の用かな?」
 手にしたかばんを肩に担ぐようにしていた少年が、余裕のある態度で辺りを見回す。
 少年は高校一年にして180センチの長身。体重も80キロと堂々とした体格だ。
 色黒のラテン系の顔立ちは陽気そうに見えるが短い髪は逆立ち、いやでも威圧してしまう。
 その後ろではポニーテールのセーラー服姿の少女が震えていた。
 二人の周辺を囲むのはお世辞にも柄がいいとはいえない少年たち。
 釘を刺したバット。チェーン。ナイフを持っている3人だ。
「へっへっへっ。昨日は仲間が世話になったからよ。御礼に来たのさ」
「ああ。カツアゲしていた奴の仲間か。社会に適応できるように矯正してやったが、わざわざ御礼に来るとは義理堅いな」
 「ふざけた態度」に三人は切れた。
「ぬかしやがれ」
 三人一斉に攻撃してくる。しかし同士討ちを避けるためどうしてもタイムラグが生じる。
 得物の小さいナイフの男の攻撃が最初に届きかける。
 襲われた少年はその右手のナイフを左手で払いのける。
 防御と同時に右手への攻撃となる水平に薙いだチョップだ。
 動きの止まったところでがら空きのボディに右の拳がめり込む。
 いや。上へと突き抜けそのままあごを砕く。
「ぐはあっ」
 ナイフの男は盛大にっ飛んだ。
「野郎」
 ナイフ男を巻き添えにしまいと攻撃を避けていた釘バット男の攻撃がきた。
 野球で言うならレベルスイング。最短距離を薙ぎに来る。
 それをなんとジャンプでかわした。
 とんでもない跳躍力に目を奪われていると、そのままサッカーのオーバーヘッドキックのような蹴りが脳天に見舞われ気絶する。
 残ったのはチェーンの男。がたがた震えている。
「ま、まさかあんたは?」
「色々よくない噂もあるようだがな。それを信じるなら帰ってくれると俺としても助かるんだが」
 あくまで正当防衛。自分から手は出さない。そんな態度。
「既に伝説を築いた男。高岩せいら…」
「誰が『セイラ』だ?」
 形相が怒りのものに変わる。チェーンの男をつかまえてしまう。そしてそのまま頭上に掲げ上げる。
「俺の名はな、高岩清良(きよし)だ」
 叫ぶと猛烈な回転を始めた。
 回されているチェーンの男は既に目が回っているが本人は平気だ。
「いい加減にしなさい。キヨシ」
 少女の怒声で清良は回転を止めた。どことなく肩をすくめているように見える。
 ゆっくりとチェーンの男を下ろしてやるが、三半規管がやられてまともに立てない。
「オ、おい。友紀(ゆうき)。先に絡んできたのは奴らだぞ」
「いくら正当防衛でもやりすぎよ。だから変な噂が立つのよ」
「言いたい奴には言わせて置け」
「反省しているの?」
「…………すみません」
 母親に怒られた小さな子供のように謝る。しかし心中では
(なんだよ。守ってやったのに。


などと思っていた。
「何か言った?」
「い、いや。何も」
 恐るべき勘である。
 三人の不良を残して二人はその場を去る。そして影から出てくる黒猫。
「間違いない。あの人こそ……」
 黒猫は清良の後をつけ始めた。

「あつつ。チキショウ。今度あったら高岩の野郎……」
 清良に叩きのめされた不良たちは憂さ晴らしとばかりに町へくりだした。
「おい。『サイフ』どうした?」
「ああ。今呼ぶよ」
 釘バットの男が携帯電話を取り出した。

 約一時間後。気の弱そうな。
 そして体格も貧弱な少年が三人の不良に金を差し出していた。
「ああ? これだけかよ。しけてやがんな。もっと持ってこい」
「でも、親にばれたら」
「んなこと知るか? バレねぇようにうまくやりゃいいんだよ」
 そう言いつつ差し出された札を取り上げる。
「じゃあな。また頼むぜ」
「警察なんぞに駆け込んだら殺すってこと忘れるなよ」
「ひゃはははは」
 品性のカケラも感じさせない表情と言葉遣いで釘を刺す。
 残された少年は悔し涙を流す。
「僕に…僕にもっと力があったら……あんな奴らに」



 頭の中に直接声が響く。
「わっ?」
 思わず声を出してしまう少年。安楽知由(あらく ともよし)
 その頭上から知由の眼前に蜘蛛が降りてくる。
「わわっ。く…蜘蛛っ」
(怖れることはない。お前と私は近しいものだ)
「蜘蛛が…喋っているの?」
 恐怖心が麻痺してきた。否。


(私と一つになれ。そうすれば


「無敵の…力…」
 その甘美な言葉に意思の光が少年の瞳から消える。
 彼は蜘蛛を手に乗せる。
 それを額に運ぶ。
 蜘蛛は額に張り付くと泥沼に沈むように額から少年の頭へと溶け込んで行った。

 翌朝。
 清良は登校すべくいつもの道を歩いていた。
 現在は住宅街。ちょうど誰もいないところ。
 彼の前方に黒猫がいるだけだ。
 傅いているように見える。それが僅かに心に引っかかるが無視して通り過ぎようとした。
「お待ちしてました。


 ぎょっとなり彼は立ち止まる。周囲には誰もいない。
(テレビの音か?)
 ドラマの台詞が民家から漏れたかと考えた。それ自体は何の不思議もない。
 だからまた歩みを始める。
「こちらですよ。私です。キャロルです」
 振り返り確認する清良。だがやはり黒猫だけ。
「お会いしたかったです。セーラ様」

?」
 至極当然のリアクション。そして次に額を押さえる。
「そうか……疲れているんだな。こんな幻聴があるなんて。学校フケよっかな」
「セーラさま。私を無視しないでください」
 カチンときた。
「おい。それはオレに話しているのか?」
「そうですよ。先ほどから」
「オレの名はな『たかいわきよし』だ。女みたいな名前で呼ぶな」
 凄まじい形相。元々威圧感がある。たじろぐ黒猫。
「い、今は男の体ですがあなたの魂は太古の戦乙女。セーラ様のそれ。あなたはセーラ様の生まれ変わりなのです」
「戦乙女? オレのどこが女だ」
「大丈夫です。戦う時には本来の姿に」
「やかましい。幻覚の分際で口答えするんじゃねぇ」
 不機嫌そのままに彼は黒猫・キャロルを無視して学校へと向かう。
「ああ。セーラ様ぁ」
 追いかける。しかしバスに乗られてしまい振り切られた。

 放課後。幼なじみの少女。野川友紀が清良に近寄る。
 二月である。当然冬服。長袖のセーラー服だ。冬服なのだが白い。タイの色は赤。
「どうしたの? 今日は一日ぶすっとしてたけど」
「疲れてるんだよ。朝っぱらから変な幻は見るし」
「なに? それ?」
「オレにもわけがわかんねぇよ」
 そんな何気ない会話の途中だ。彼の脳裏に嫌な予感が走る。
「!?」
「どうしたの?」
 友紀の問いかけを無視して清良は走る。彼自身もどこに行くのかわかっていない。
 ただ心の命ずるままに。

 高校の裏側。知由はまた三人組に迫られていた。
「てめえ。いい度胸じゃねぇか。俺達を呼びつけるたぁよぉ」
「それとも何か? 昨日の足りない分でもくれるってか」
 昨日までならがたがた震えていたであろう。しかし知由は薄笑いを浮かべている。
「なんだぁ? その人を馬鹿にしたような笑い方は?」
 さすがに今は持っていないが釘バットの男が知由を殴る。だが
「い…いてぇ。何だコイツ? 鉄板でも殴ったみたいな」
 頬を殴り飛ばしたはずなのに。
「痛いじゃないか」
 まるで抑揚のない声で知由は言う。無表情いうよりむしろ狂気を孕んだ目だ。
「これはもう

が必要だね」
 言うなり口をがばっとあける。その喉の奥から大量の「糸」が吐かれる。
「うわぁぁぁぁっ」
 これをテレビで見たなら特撮のそれと笑い飛ばすが、明らかな「人間」がいきなり蜘蛛のように体から糸を出したのだ。
 恐怖に駆られるのも無理からぬところ。
 だが悲鳴を上げたのが皮肉にも致命的だった。
 大きく開けられた口にその「糸」が入り込む。
 窒息して悶絶する「釘バット」。そして動かなくなる。
 「チェーン」「ナイフ」は恐怖で動けない。
「た、助けてくれ!」

 僕が今まで何度そういったと思う?」
 言いながら楽しそうな笑顔を浮かべる。
 復讐を果たせる喜び。それよりも暴力に酔いしれている。
 異変は糸だけではない。平らな胸板がせり出してくる。
 筋肉が盛り上がったのではない。いきなり女の豊かな胸になった。
 髪の毛も生き物のようにうごめき伸びていく。
 顔も女のそれへと変る。ただしただの女ではない。
 まるで蜘蛛のように縞模様が入っている。
 ワイシャツ越しにでもウエストの括れがわかる。
 その上が盛り上がるとワイシャツを突き破って一対の腕が出てくる。
 気がつけば下半身も異様になっている。
 女どころか人間ですらない。蜘蛛の下腹部だ。
 本来の足がそれぞれ二つに裂け四足になる。
 例えるならギリシャ神話のケンタウロス。半人半馬の存在。それの蜘蛛版だ。
 その「蜘蛛女」は新たに生えた腕で二人の不良の首根っこを捕まえる。
 まるで重さを感じないかのように持ち上げる。
「絞首刑」に処される二人はもがくがやがて手足から力が抜けだらんと垂れ下がる。
 その二人を乱暴に投げ捨てる蜘蛛女。
「くくく。安心しろ。このまま死なせやしないよ。お前たちはあたしの奴隷になるのさ」
 口を開くと釘バットを相手にやったように口の中に糸を流し込む。

 まさにその現場に清良は駆けつけた。
「な、なんだ? ガキ向けのドラマの撮影か?」
 そう思うのも無理はない。女郎蜘蛛のバケモノが人を襲ったのだから。
 現実にはありえない。
「見られたか……ならばお前も奴隷となれ」
 腕を振るうと襲われた不良三人組がむくりと起き上がる。
 その姿が女へと変っていく。
「男が……女に?」
「ふん。下らぬ男など要らぬ。みんな女に作り変えて我らアマッドネスのために働かせる」
 発声器官が人と違っているのかくぐもった声で喋る。
 喋っているうちに三人は完全に女へと変化した。そして襲い掛かる。
 普段なら何てことないがあまりの非現実的な出来事に清良はパニックに陥っていた。

「セーラ様。戦ってください。そうすれば本来のあなたに戻れます」

 声はキャロルだった。どうやらバスを追いかけて学校まで来ていたらしい。
 そしてその「戦う」と言うキーワードが自己防衛本能と相俟って、彼は思わず三人の内の一人を右腕で殴り飛ばしていた。
 吹っ飛ぶ女。吹っ飛ばした右腕に真紅の手甲が。外に向かってひれのようになっている。
 反対側を見るといるかか鯨の尾ひれをイメージさせる形の蒼い手甲が。
「な、なんだぁ?」
 変化はそれだけではない。学生服の両腕が白く変化している。
 袖が絞り込まれてそのフォルムはセーラー服だ。
 白い部分が胸元を侵食し始める。同時に清良の巨体が縮んでいく。
 分厚い胸板が豊満なバストに。
 割れた腹筋がくびれたウエストに。
 もともと逞しい腰つきだったが、それが大きく丸いものに。
 学生ズボンはどんどんと短くなり、そして左右のそれが融合してプリーツスカートへと変化する。
 反対に靴下が面積を広げて太ももまで覆う。いわゆるニーソックスになる。
 穿いていたスニーカーも可愛いピンク色に。
 もちろん顔も変化している。
 威圧的な顔立ちが優しげに可愛らしく変わる。
 太い眉が細くなり、まつげが長くなり本数も増えて目が大きな印象になる。
 肌の色も健康的な白さに。
 髪は短めだがそれでもうなじまで一気に伸びる。
 その変化は僅かな時間で完了していた。
「き…貴様はセーラ。我らの復活に呼応して蘇えったか?」
 明らかに狼狽している女郎蜘蛛。
「なんだよ? 何が起きたんだよ……この声? まるで女の…」
 声すらもその容貌に相応しい可愛い声になっていた。
「まさか」
 もっと非常識な事態に気をとられた。
 自分の体をまさぐる。
 柔らかい肌。豊かな胸。無駄毛のまったくない「絶対領域」。細い手足。
「オ……オレは女になっちまったのか?」
 そこにいたのはセーラー服姿の美少女。あまりに非現実的で気絶すら出来ない。
「ああ。まさしくセーラ様」
 涙を流しそうな声のキャロル。

 拳の戦乙女セーラ。現代日本に復活。

次回予告
「それがセーラ様本来のお姿です。」
「こういうのも……暴力って奴だな」
「いいや。


「変身!」

EPISODE2「変身」
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