第１話

４月１日。この日だけは嘘をついてもいいという日。
現在これを実践している人間は自分の周りにはほぼいない。そりゃそうだ、あまりにもルールに無理がある。嘘なんて誰もが他の日でもちょこちょこついている。嘘は良くないのは当然だが、その嘘で成り立っている人間関係もあるし、人を幸せにする嘘だってある。

と、なると。「嘘は良くない」という大前提がひっくり返されるべきものなのではないかと。
そこで新しい提案なのだが。

「４月１日だけは本当のことしか言ってはならない」

人間の煩悩を受け入れ、嘘は必要悪であるという考えに基づき、４月１日を全く逆の日にしてしまおうという試み。この日だけは嘘をついたら即死刑。
男女間の浮気は毎年この日に発覚し、容疑者は突然真相を語り、不透明な税金の使い道も明らかになる。１年以上の継続的な嘘はつけなくなるわけだ。どんな嘘も４月が来れば真実が明らかになってしまうということになれば、結果としてこっちの方が「嘘は良くない」という意識は広まり、人々を正直な方向に導くことができるのではないか、と。

よし、俺はこのマニフェストを掲げ、政界に殴り込むぞ。俺の力で日本を正しい国にしようじゃないか。

…それが嘘だろ。
ちゃんちゃん。