第4話

文字数 736文字

 今日も。
 雨は降り続いてる。
 頬杖突いて、校庭を眺めて、たくさんの水鏡がざわめいているのを見ている。
 この、泣きはらした目を、誰の目からも隠したい。

 わたしは朝から視線を感じていた。
 思い過ごしかもしれない。けれど、泣きはらした目は鏡を見て気づいていたし、朝一番の朝礼前、ほんの一瞬、荒崎君と目が合ったせいも、きっとある。
 思い過ごしだとか、思い込みだとか、思い上がりだとか、いろいろ考えているうちに、今日は終わっていく。
「みなさん、明日からの期末テスト、頑張ってください」
 先生が言うと、クラスメイトたちの意識が、それとなくわたしの後ろの席に集まる。
 学年一番の秀才君が注目を集めている。
 でも、わたしの出す問題には、こいつじゃ答えられない。
 終業のチャイムと共に、わたしは頬杖を崩して机に顔を伏せた。
 ノートの見せ合いっこや、誰かの家で勉強をするような話と一緒に、教室から潮が引いていく。
 最後に、背後でカタン…と椅子が鳴って、彼も教室を出て行った。
 サーッと雨音が忍び込んでくる。
 うながされて外を見ると、校庭をたくさんの傘がショートカットしていく…。
 わたしは傘の一つ一つを目で追った。すらりと背の高い、彼の姿を待っていた。教室を最後に出て行ったから、出て行くのも最後なんだろう。
 無意識に、待っていた。
 幼なじみの特権で、聞いて欲しかったんだと、今頃、気づいた。
 でも、答えの出ない問題になるから、聞かないのが正解…。聞くのは悪い。知れば、彼も理解してくれる。
 ……。
 まだかな。
 せめて、背中でいいから、聞いて欲しいのに。

「あまねちゃん…」
 予期せず、名を呼ばれた。
 遠慮がちな、懐かしい響き…。
 声の方を振り返ると、教室の戸口に、彼が立っていた。

(つづく)
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