第1話

文字数 3,095文字

2月某日、私には重要なミッションがあった。
それは、数ヶ月前に来日したばかりの同僚に、一泊二日の大満足石川県観光ツアーをすること。

国内旅行をしたいけど、どこに行くべきか…と悩んでいた彼女に、日本で最高にクールでファビュラスでデリシャスな地に連れて行ってあげる!と大口を叩いていた手前、なんとしてでも素敵な旅行にしてあげたかった。

旅行初日。
朝、東京駅で待ち合わせ、北陸新幹線"かがやき"で金沢へ向かった。

グランクラスに乗ると、アルコールも飲み放題らしいよ!
え⁈宝くじ当たったらグランクラスに乗りたい!

なんて他愛もない話をしているうちに、車外の風景はどんどん雪景色に変わっていった。
東京をでて約2時間半、ナカタヤスタカ作曲の駅メロが流れ、金沢に到着。
すっかりお腹を空かせていた私たちは、早速昼食へ。

金沢での最初の昼食は、金沢駅西にある三休庵のカレーとなった。
ゴーゴーカレーをはじめとして、色々なお店の金沢カレーが有名になっているけれど、三休庵のカレーを超える美味しいカレーはこの世に存在するのか?と真剣に思うほどここのカレーは美味しい。甘さと辛さを含むコク深いカレーは、一口食べたら忘れられない味だ。

これってカレーだよね?
今まで食べたカレーと別物に感じるんだけど!
もう一皿食べたい…!
東京にも店舗欲しい…!

かなり後ろ髪を引かれてる彼女を連れて、今度は香林坊エリアへ。

金沢にきたならここよね、と21世紀美術館に向かう。21世紀美術館では、もはや定番となっているプールの展示から。普段の生活じゃ、見ず知らずの他人に手を振ったりなんて絶対しないのに、このプールに来ると恥じらいもなくやってしまう。

ひとしきり見学したあとは、写真スポットになっている花柄の壁紙とウサギのイスが並ぶゾーンで撮影大会をしてから、徒歩で金澤神社へ。

香林坊近辺の神社と言えば尾山神社や石浦神社も有名だが、私は金澤神社の雰囲気が一番好みだ。

境内にはいくつも連なる赤い鳥居があるのだけれど、心の中でプチ伏見稲荷と呼んでいる人はきっと私だけではないのでは…?

金沢神社では、水みくじというおみくじが楽しめる。最初文字が書いていない白い紙を渡されるのだが、水に浮かべると文字が出てくるもので、アトラクション性があり文字が浮き上がるまでドキドキ待つのが醍醐味だ。

大吉を引いてご満悦の彼女と、大吉とは縁がなかった私とで、今度は石川県立美術館へ。

といってもお目当ては美術館内にあるカフェ"ル ミュゼ ドゥ アッシュ kanazawa"の予約限定で楽しめるお茶のコース〜コンセプトG〜である。

モダンな個室の茶室に案内されると、目の前のカウンターにはお茶を入れるための設備が。
部屋の側面がガラス張りになっているので、外の雪景色を味わいながらお茶のコースを楽しめるのだ。

最初お茶のコースを予約したと彼女に伝えると、お茶のマナーわからない…正座できるかな…と焦っていたが、このコースは特別なマナーなんて必要ないし、イスに座って楽しむから正座もしなくてよい。

コンセプトGの詳細については、ぜひ前知識を入れずに行って驚いてもらいたいので省くけれど、実にGを堪能できるものである。

お茶のコースが終わった頃には、すっかり日が沈んでいたので、兼六園の夜のライトアップへ。

冬夜の兼六園のライトアップは、実に神秘的だ。
2月の金沢のツーんとするような寒さに、雪吊りの風景はマッチする。思わずうるっとしてしまった私をみて、寒い?風邪ひいた?と彼女が心配しだしたので、ニット帽を深く被って次の目的地へ。

次の目的地は本日最後の目的地である第七餃子だ。
ここのホワイト餃子が美味しくて食べたくて。
カリッとしながらもちもちの生地に、肉汁たっぷりの餡。冷凍餃子の販売をしていた頃、何度か家で焼いたことがあったけれど、お店のようなカリッじゅわ〜感は一度も出せなかったなぁ。

トロトロのネギが美味しい豚汁も一緒に食べると、さっきまで兼六園で冷えていたはずの体がすっかりあったまった。

1日目の予定はこれでおしまい。
お腹いっぱい満足になって、初日の夜が終わった。

翌日の朝、パン・ド・ファンファーレのクリームパンを食べながら、能登へ向かった。

日本で唯一砂浜を車で走行できる、千里浜ドライブウェイからみた海の水面は、冬の澄んだ天気が反射してキラキラ輝いてみえた。

あぁなんだか映画のワンシーンに出てきそうな景色。

そんなことを考えながら車に乗っていると、輪島の朝イチに着いた。
着いた頃にはもうお店は出ていなかったけれど、ほぼ毎日ここで市場が開かれているのかと思うと、その光景が勝手に頭に浮かぶ気がして、なんだかとっても不思議な気分になった。
今度はちゃんと間に合う時間に行かなきゃなぁ。

朝イチ周辺を散策したあとは、千枚田へ。
テレビでは何度も見たことがあるけれど、実際くると圧巻の風景。一番下まで降りて上を見上げると、戻るのが億劫になるほど遠く感じる。
千枚田のイルミネーションの前で告白なんてされたら、絶対断らない。きっと。多分。

さてさてお腹が空いてきたので、また少し車を飛ばして木村功商店の牡蠣食べ放題へ。

このお店は最初に少し衝撃を受ける。
なぜなら食べる場所が、海に浮いているように見えるからだ。我々が案内された席は海の上に床が張ってあり、ビニールでできた壁で囲まれた席だった。
誰かが歩くと少し板がきしむ。ビニールから海風が入ってくる。

バケツいっぱいの牡蠣が運ばれ、支給された軍手とトングを使って目の前の網で焼く。
焼き立ての牡蠣は、どうしてこんなにも美味しいのだろう。何もつけなくても、磯の匂いと牡蠣のジューシーさで十分すぎるご馳走だ。

こんなバケツ一杯食べれるはずない!なんて言ってた自分がバカに思えるほどあっさりバケツを空にして、〆に牡蠣アイスを食べて、再び金沢へ。

予約していた忍者寺こと妙立寺へ着くと、彼女のワクワクは今まででひとしおだった。

忍者って本当にいたの⁈
忍者寺って、手裏剣が飛んできたりする⁈

そう目を輝かす彼女に内心、ごめん、きっと思ってるのとは少し違うかも…と思いながら入場。

今までにも何度か行ったことがあるけれど、毎回新たな発見がある忍者寺。
江戸時代に作られたこのお寺は、時代が時代なだけにITや電気を使ったしかけはないけれど、だからこそのからくりが面白い。
こんなの思いつくなんて天才だよね。
そう尊敬しなくてはいられない仕掛けたち。

そう大きくないお寺なはずなのに、どうしてこうも沢山仕掛けがあるのか。

解説ちゃんと理解できるかな?と彼女は心配していたけれど、出口の彼女の表情を見る限り、しっかり楽しめたようだった。

忍者寺を巡った後は、どうしても食べたかったので、まだお腹空かない!という彼女に無理を言って、フルーツパーラーむらはたへ。
フルーツパーラーのパフェだけあって、果物が新鮮で甘く目でも美味しい豪華なパフェ。

もう何も入らない!と言っていたはずの彼女も気がつけばペロリとパフェを食べていた。

楽しかった旅も、そろそろ終わりに近づいた。
金沢駅に戻って鼓門で写真を撮って、中田屋のきんつばを買って新幹線に乗る。

私たちの石川県旅行はこれでお終い。
本当はもっと連れて行きたい場所もあったけど、大満足してくれたようなのでよしとしよう。

次は、どこに行こうかね、アシャンティ?
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