第1話 J再開の日

文字数 508文字

○ある退役夫婦の居間で
おーい、おーい!
車椅子のお父さんに呼び出されたお母さん。
なんですか、アンタ。
は、はじままったのか?

はじまってしまったのか?

いやだわお父さんったら、もうとっくの昔にあがってますよ。
ちっ、ちがーう。これじゃ。

カズ。

お父さん、右手を股間に当て腰をグイッグイッと動かす。
あらいやだわお父さんったら、頭はボケてもアッチの方はまだ現役なのね。もう、子供達も成人したんだし勘弁してくださいね。
お母さん、お父さん秘蔵のビニール本をもって来る。
ちがーう、ほれこれ。
お父さん、右脚をポンとまえに蹴り出す仕草。
あらいやだ、ビタミン不足で脚気なのかも。
お母さん、胡瓜の浅漬けを持って来る。
ちがーう。

オーレ、オーレ!

まっ、気がつきませんですみませんね。
お母さん、ミルクと砂糖がたっぷりと入った熱々のカフェ・オ・レを持って来る。
ちがーう。

J....J....

そうよね、もう初夏ですもんね。冷たいのが欲しいんだわ。
お母さん、ヒンヤリとしたコーヒーゼリーを持って来る。
ちがーう。
何が違うのかしらん。
タ、タマ....
いやだわ、新婚じゃあるまいし、もうお父さんの○んタマなんて触りたくもないわ。
認知症夫婦のかみ合わない会話は続く。
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