第4話 楊貴妃の現代転生

文字数 1,840文字

今日は珍しくスケジュールが空いておるな……

例の【次元布】とやらで、【次元戯動画】でも見てしんぜよう。

いつ見ても不思議なものじゃ。

奇っ怪で、鮮明で、まるでもう一つの世界でも映しているような――――


む、〝峮峮(チュンチュン)まとめドキュメンタリー〟これは民族舞踊じゃな。

それはこの小説の作者が投稿している動画。その子をかつての楊貴妃のように崇めているらしい。


ちなみにその動画には字幕機能が付いている。宋語ではないようだけど

ユエ、詳しいな。さてはあの女と同様【マニ教】じゃな。

いや、待て――――その作者とは、化物のお前達がしのぎを削る中、妾の戦闘力を一般人並に設定し無理ゲーを強いておる者の事か?

この女性、何故かとても親近感がある。

髪型とか体型とか、眼鏡も掛けていて、運動も好きみたい。


私が護衛隊を統率するように、何かの集団を統率しているように見える。

確かに、ロリムチな外見は似ておるのう……よく食うところもソックリじゃ。

しかし、決定的に性格が違う。

このように活発で明るい笑みなど、大人しいお前と対極的じゃ。


大体、楊貴妃の生まれ変わりと名高いのはこの妾じゃ。ユエではないのじゃ。

美しさの定義は時代で繰り返すと言われている。花雪のような長身スレンダーが美しいとされているのは宋代での話。文献にも『楊貴妃はふくよかで愛らしい魅力があった』と記述されている。


――――ロリムチ系という表現にも不服。

あっ、お前っ! これを機に、妾の楊貴妃の生まれ変わりの座を奪う気じゃな!

そもそも花雪は〝楊貴妃のようだ〟と言われる度に〝他人と比べられるのは不快だ〟と、不機嫌になる。

嫉妬する理由が判らない。

判っておらぬな。〝楊貴妃のようだ〟という賛辞すら不服と切り捨てるのがカッコいいのじゃ


――――別に嫉妬しておらぬもん。

えっ……この人、以前はまるで印象が違う。


暗くて冷たくて『緊張』とか『無愛想』という言葉が並んでいる。今の明るい性格からは考えられない。

ほう……以前の性格は、まるで今のお前じゃな。

『自分は頭の良いインテリ』のように気取っておる所など、特にな?

私、皆からは、こんな風に見えてるの?
大体そうじゃ。まあ、塩対応で妾の右に出る者はおらぬがな。

じゃあ、私もこの人みたいに、変われるのかな。

皆に慕われる、この人みたいに。

お前は十分慕われておるし、可愛いよ。


じゃが、より良く挑戦する事は、何も悪いことではない。

どうしてこんなに変わったのだろう。

ここに映っている男性との出会いが、彼女を変えたのかもしれない。

そうか?

むしろ、この娘が変わったから、この男とも出会えたのではないか?


まあ、舞や表情は、出会った後の方が遥かに彩りを増しておるがな。

男性も以前は攻撃的な印象だけど、今は朗らかな印象。

彼にも、彼女との出会いが影響しているのかもしれない。

お互い相手に無い物を持っていて、お互いが目標にするビジョンも近かったのじゃろう。

じゃから支え合えるし、一緒に進めるのじゃ。パートナーとはそういうものじゃ。


妾とユエのようなものじゃよ。

え……こっちの男性、死んでしまったらしい。

嘘じゃろ?

お前、この間は妾に〝悪い冗談は禁止〟などと言っておったのに……

嘘じゃない。ここ、私達と言語体系が非常に近い。

亡くなった旨が書いてある。

蛤?

では、これからこの娘を、誰が支えると言うのじゃ?


支え合う片方が無くなれば、柱は倒れるが自明の理じゃぞ。

(もし、花雪がいなくなったら……)
(もし、ユエがいなくなったら……)

……私は、この子を支持したい。


この子が選んだ全てを尊重しようと思う。

当たり前じゃ! 妾もこの娘が、もはや他人とは思えぬ!

何か支援をするんじゃ!

支援て、どうするの?

言語体系は近いけど、私達には、彼女が世界のどこにいるかも判らない。


そんな相手をどうやって支援するの?

そ、そんなことないわ!

妾達がこうやって騒いでおれば、この娘を知り、支持しようとする者が増えるじゃろう!?


増えたから、何?

どこに住んでいるかも判らないのは変わらない。


文化背景を見れば、とても遠い所に住んでいるのは明らか。

世界は人が繋げておるのじゃ! 悪い噂も、良い噂も、すぐに広まるんじゃ!

広まればあの娘の周りの人間とか、行(企業)なんかが、あの娘を支援するじゃろう!


妾達は行商人、噂も運ぶのが行商人というものじゃ!

花雪はそうやって、いつも無計画で始めちゃうから……こっちの身にもなって。

そう言いながらお前も、いつも協力してくれるがな?

うん、当然。


私も挑戦は好き。

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登場人物紹介

呂晶(ルージン):20歳♀ 補正:力極、スキルマスタリー:内功=黒殺槍法>炎功

成都のアクセサリー店『呂礼屋』を家出。盗賊として非道を尽くす中、結盟『真夜中の旅団』へ幹部待遇で加入。外功の扱えない特異体質ながら爆裂加速した斬撃により気功家屈指の近距離戦闘能力を持つ。

重度の阿片中毒でバイセクシャル、創造説よりも進化論を推す偏屈なメンヘラで己の哲学『真理』を己の命よりも優先している。以前は手の付けられない狂暴さを誇っていたが結盟加入以降、性格に変化が訪れる。

ヘレン=アップレケ―ンタ:16歳♀ 補正:知極 スキルマスタリー:魔法>クレリック=バルド

赤子の折、北欧フィンランドの孤児院に捨て子として預けられる。生まれながらにゼロ点量子エネルギー『大気の乙女』を操るがそれにより幼少期に友人を殺害する。

以後は魔法による狩りで村に奉仕しながら罪を償い、15歳で成人した後は『大道貴族芸人』としてローマ帝国へ単身上京する。7歳でヘラジカを仕留めたことが自慢。

花雪(ファーシュエ)18歳♀ 補正:バランス、スキルマスタリー:寒月直伝飛天剣法舞踏派=炎=雷=氷

国務執行機関、戸部右曹の侍郎を務める魏征の一人娘で貴族。楊貴妃の再来と言われる美貌と帝王学により『傾国のカリスマ』の異名を持つ細巨乳。複合企業・花雪牙行の会長であり、数百名の精鋭気功家で構成される『花雪象印商隊』の隊長を務める。同副長のユエとはライバル貴族家でありがなら幼馴染。自分の身体を他人に洗わせるのが趣味の変態。

寒月(ハンユエ)18歳♀ 補正:知極、スキルマスタリー:飛天剣法=雷>炎>氷

戸部左曹侍郎、邦県令の一人娘で貴族。文林三絶、武林三絶『文武両道』の異名を持つケツデカロリ眼鏡っ子で、花雪象印商隊では護衛隊長を務める。インテリ気功家の代名詞『雷功』をこよなく愛し、中華最強の雷功使い『雷帝』に最も近い人物と評されている。趣味は読書、コミュ障と言えるほど大人しい自分と大きな尻にコンプレックスを持つ。花雪とは幼馴染であり彼女と眼鏡を馬鹿にされるととても怒る。

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