第1話

文字数 1,055文字

「ディナーはまだか!」
困ったものだ。言われる前に用意しておけ、とあれほど言っているのに。使えないやつだ。こっちが養ってやっているのに、私の邸宅でふんぞりかえっている。おまけにポテトチップスというものを床にこぼすのだ。私が綺麗好きなことを知っているくせに……。

……っといけない。愚痴ばかりになってしまう。たまには召使いのいいところをさがしてみるか。
1つ目。土曜と日曜はディナーが豪華なことだな。召使いは私の健康に非常に気をつけているから、いつも栄養バランスのとれた食事になっているな。デザートは毎日欠かさずに食べているが、最近同じので飽きてきたな。そろそろ変えさせるか。
2つ目。私に忠実なところだな。私の頼みごとは断らない。当たり前か、私が選んだやつだからな。しかし、こないだのあれはゆるせないぞ、あれだ、あれ。召使いはたまにつかえないところがあるからな。あれというのはあれだ。うーん私は記憶が少し悪いからわすれてしまった。まあいい。細かいことはあとでだ。
うーん。召使いのいいところが思ったより少ないぞ。基本悪いやつではないのにな。
やっとディナーがきたか。おお、今日は白身魚か。まあまあだな。

私と召使いの出会いは3年前だ。雨が強い日で、そう、嵐だったな。
召使いは暗い顔で1人でいたな。よくおぼえてないがな。そこで私はかわいそうに思って、拾ってやった。それから私の召使いにしてやった。私にしては珍しい決断だったな。その日に引っ越したし、召使いに最高の環境を用意してやったな。

そういえば、この間、お正月というのがもうちょっとでくると召使いが言っていたな。ちょうど1年くらいにもそういうのがあったな。あれはいやだな。1年で1番の屈辱だ。お正月というものが来るときは、決まって何人かが私の邸宅に無断で入ってくる。新しい召使いにしてやろうと思っても3日ほどで来なくなるからな。召使いは1人でじゅうぶんだがな。ただ1番私をむしゃくしゃさせるのは
「あらーかわいいペットね」
この一言だ。
最初、ペットという言葉を知らなっかたからなんとも思わなかった。後でテレビを見てわかったのだが、「大切にかわいがるために飼われている動物」ということらしいな。
私は召使いに飼われている覚えはない。それに何も言わない召使いもおかしい。何度も言うが養っているのはこっちなのに。

おっといけない愚痴ばかりになってしまう。そろそろ給料の時間だ。ニンゲンをトリコにさせる愛くるしさで、膝にのってニャっと鳴いてやるか。召使いに幸せなひとときをあたえなきゃニャ。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み