ランドセルを背負う私たち

文字数 1,235文字

私は那奈(なな)
今日、クラスの好きな男の子に無視されてまじ最悪。
なんかやたらと睨んでくるし。
私、何かしたっけな?
なんだかむしゃくしゃして、たまたま(りん)の妹が通学路で歩いていたから、頭を(はた)いてやった。
これは私の隠し事。


私は美雨(みう)
今朝、各々で育てている朝顔に水をやりに行ったら私の鉢だけ倒れていた。
誰がやったの?
まじでむかつく。
だから私はその気持ちを紛らわす為に、玲奈(れな)の机の中に丸めた紙屑を入れてやった。
これは私の隠し事。


私は(りん)
最近妹がやたらと泣いて帰ってくる。
理由を聞いたら「誰かに叩かれた」だって。
なんなのそいつ、最低じゃん。
苛立ちは八つ当たりに。
次の日たまたま給食当番だったから、優希(ゆうき)の嫌いなじゃがいもばかり、皿に盛ってやった。
これは私の隠し事。


私は玲奈(れな)
5時間目の授業前、社会の教科書を取り出そうとしたら机の中から一緒に紙屑が出てきた。
は?
私のゴミじゃないんだけど。
だから那奈(なな)の好きな男子にありもしない事を言ってやった。
誰かを巻き添えにしたくてね。
これは私の隠し事。


私は優希(ゆうき)
じゃがいも嫌いだって言ってんじゃん。
なんなの、あのモサモサした食べ物は。
今日はなんだか多く皿に入っているし。
だから美雨(みう)の鉢を蹴飛ばしてやった。
偶然手前にあったからね。
私だけが我慢するのっておかしいもの。
美雨(みう)も1番最後に花が咲けば私の仲間。
これは私の隠し事。

◇◆◇◆◇

私は那奈(なな)
今日は私の好きな男の子が、朝から笑顔をくれた。
君っていい奴だねって。
いきなりどうしたの?
浮かれた私が朝、朝顔に水をやりに行くと美雨(みう)の鉢が倒れてた。
起こしたついでに水もあげといたよ。
美雨(みう)には内緒。


私は美雨(みう)
今朝、いつも通りに朝顔を見に行くと既に葉が濡れ花が咲いていた。
隠れたヒーローが水でもあげてくれたのかな?
だから私は帰りの通学路、涙する(りん)の妹にも優しくできたんだ。
心配しちゃうといけないから、(りん)には内緒。


私は(りん)
今日は妹が笑顔で帰ってきた。
どうやら優しい上級生が帰り道に頭を撫でてくれたらしい。
心弾む私が次の日朝1番に教室に着くと、玲奈(れな)の机から溢れんばかりの紙屑が見えた。
私はそれをゴミ箱に捨てた。
玲奈(れな)にはもちろん内緒ね。


私は玲奈(れな)
今朝はゴミが1つも机に入っていなかった。
よかった。
このままいじめられたらどうしようかと思っていた。
そういえば優希(ゆうき)はじゃがいもが嫌いだったな。
今日の肉じゃがは、私が半分食べてあげよう。
先生にバレたら怒られちゃうから、これは2人の内緒だよ。


私は優希(ゆうき)
一緒の班の玲奈(れな)が私の皿からじゃがいもばかりを掬って食べてくれた。
なんて優しい子なのだろう。
だから私は向かいに座る少し物憂げなアイツを励ましてやった。
アイツの気になってる子の良いところを全部教えてあげて。
私が言ったって、那奈(なな)には内緒だよ。

◇◆◇◆◇

隠し事は人類皆にある。
無い人なんてきっといない。
さて。
あなたの秘密はなんですか?
犯した罪?
それとも不意にした功徳(くどく)
どちらにしても墓場まで持っていきましょう。
決して白日(はくじつ)の下に(さら)してはいけませんよ。
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