第5話

文字数 302文字

帰りはちゃーんと玄関から帰り、彼の部屋の窓外に置いていたトナカイのそりを口笛で呼び、俺は颯爽と乗り込んだ。
 本当に忙しいのは今からだ。町が寝静まる聖夜、この時間が一番せわしない。
 
 「あーあ、随分といかつい玩具を作ってしまったな。持って帰るのが大変だ」
 
 そう一人ごちて、共にそりに乗り込んだ、男の子の父ロボットを見やる。

 ふと、彼の笑顔を思い出す。
 父の死を受け止め、父の生きた証を受け止めた十は生きた男の子。

 彼にプレゼントを渡すことができるのは、もうあと数回も無いのだろう。

 そんな直感を秘めながら、緑のサンタは夜空を駆ける。
 トナカイの赤鼻を光らせて。
 無数の星と一つの月の下を、駆けて。駆けて。
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