プロット

文字数 2,849文字


主人公の高柳(たかやなぎ)日向(ひなた)は中学一年の男子。最近不機嫌な事が多い。
よくわからない流行病のせいで、始めたばかりの部活は休みだらけだし、給食は黙食。楽しみは少ないのに、中間テストや期末テストはあるし、親はこの機会にもっと勉強をしろ、というばかりだ。そんな日向たちが思いっきり会話を楽しめるのは、オンラインゲームの中ぐらい。
ある日、共働きの親がいない昼間、日向がお気に入りのゲームをしていると、ゲームのギルドメンバーから都市伝説のような話を聞く。それは「明け方の四時四十四分四十四秒に、とあるアプリゲームにアクセスすると、異世界に飛ばされる」という、いかにも怪しい話だ。
どうせ嘘だろうと言いつつ、ギルドのメンバーたちと明け方四時半にオンライン上で待ち合わせをして、都市伝説の検証をすることになる日向。噂通りにアプリゲームにアクセスすると、次の瞬間、異世界に飛ばされていることに気づく。
そこは緑の深い森の中だった。そしてギルドのメンバーとはリアルでは初めて会うから誰が誰だかわからない。ギルドマスターをしているカナはイメージのままの中学三年男子だったけれど、女の子だと思っていたサエラは男で、よくコンビを組んでモンスター退治をしていたトモは女の子だった。
パニックになりながらも、ちょうど目の前にあった小さな洞穴がある洞窟の中を確認し、そこを背にして、いったん落ち着く彼ら。ゲームでよくあるアイテムボックスを出すことが出来ることに気づいて、お互いのスキルやアイテムを確認する。どうやらスキルに『魔法無効・反射』と書かれていて、魔法の攻撃は受けないのかもしれないと気づく。



そんな彼らに近づいてくる気配がある。自分たちのような子どもの姿だ。一番前に立っているのは、その中でも一番背の高い男子だ。顔は日本人みたいな黒髪黒目で、言葉も通じた。どこから来たのか、と聞かれるメンバーたち。事情を説明すると、彼らの村に連れて行ってもらう日向達。
たどり着いた村には、子どもしか居ないことに気づく。子どもだけで生活が出来るなんて楽しそうでいいな、と気楽な事を言う日向だが、子ども達の中で最年長のヨウはその言葉に首を横に振る。大人達がいないので、自分たちで畑を耕して、食べ物を作り、狩りをしてなんとか生活しているのだという。
病気になったら治療をしてくれる人も居ない。不安でいっぱいだと言う。
実は大人達が居なくなったのは、ここ五年ほど前のことで、そしてこの村からも大人になったと認められる十六歳になる夜に順次その人間が消えていくらしい。次に消える予定なのは、ヨウだと聞かされる。頼りにしているヨウがいなくなるかもしれないと、不安で落ち着くことの出来ない子ども達。
一方、自分たちも何故こんな世界に飛ばされてしまったのか、元に戻ることはできるのかと不安になるギルドメンバー。それでもリーダーのカナの話で、何故この世界から子どもが居なくなってしまったのか、その理由がわかれば自分たちも帰れるかもしれない。もしこの世界の魔法の力で飛ばされたのなら、自分達のもつ魔法無効の力が役に立つかもしれないと考え始めるメンバー達。
確かにこの村で使われている魔術具や、魔法は自分たちが触れると使えなくなってしまうのだ。
それどころか、サエラの作った網も魔法が使えるモンスター相手に魔法無効になるらしい。魔法無効のスキルとは、こういうことなのか、と納得するメンバー。



しばらくは裁縫と料理が得意なサエラが、子ども達の家事を手伝い、トモと日向、カナは一緒に狩りを手伝ったり農業を手伝ったりする。このところ体を動かせてなかったから、この世界の子ども達とも仲良くなれて楽しいと思う四人。
だがそれからしばらくして、すっかり仲良くなったヨウの16歳の誕生日の日が来てしまう。今までと同じなら、今日の夜中、ヨウが消えてしまう。
それを阻止しようと、その日、ギルドメンバーはヨウの手や足を握って夜中の時間を待つ。もし自分たちのステイタス画面にある「魔力無効」が発動されるのなら、突然ヨウが消えてしまう事は防げるかもしれない。改めてお互いの事を話しながら、夜を過ごすギルドメンバーとヨウ。月が中天に昇るその時、ビリビリと何か電流のようなものが流れ、それが止まる。どうやら魔法が無効化されたことに気づく五人。その時、何も無いところから魔道士のような格好をした男達が何人も現れる。何故ヨウを連れ去れないのかと騒ぐ男達に、何でこんなことをするのだ。自分たちの親や兄や姉はどうしたんだ、と尋ねるヨウ。
するとどうやってもヨウを連れ去れないと理解した魔道士達は、自分の目で確認するのだな、と言ってヨウを連れて行こうとする。子ども達にちゃんと帰ってくるからと伝え、ヨウと共に、魔道士についていくギルドメンバーたち。



連れて行かれた先では、大人達が魔力を振り絞って戦っていた。敵は黒い炎を吐くドラゴン。子ども達のために、ここでドラゴンを食い止めているのだという。本来なら人とドラゴンの世界には境界線があってこちらの世界には来ないはずなのに、何故かこちらに来てしまったのだという。魔力で対抗してもここに居る人間達だけでは、押し返すほどの力が無い。魔道士達は助けになるものを求めて、召喚の儀式をしたのだが、何も召喚出来なかったのだという。
もしかして召喚されたのは自分たちだったのでは、と気づくメンバー達。魔法無効・反射のせいで、こちらの世界に来たところで召喚された魔道士達のところにたどり着かずに、村のそばに落ちてしまったのではないかと考える。では自分たちであれば、このドラゴンの魔法攻撃を受けても無効化できるのではないかと気づく。そして魔道士によればこのドラゴンは物理攻撃はしてこないらしい。
早速サエラが作った網を使い、カナとトモ、日向でドラゴンを囲い込み、大人達の力も使って結界の向こうに押しやる。ドラゴン退治は出来なかったものの、これで人間の世界に帰ってくることはないだろうと魔道士達が言う。
自分たちが元の世界に戻ることは出来ないのか、と尋ねると、未だに発動したままの時空移動のための魔術具があるのだという。そしてその道具が止まれば、元の状態に戻るのではないかと言われる日向達。いろいろ話し合った結果、やっぱり自分たちの世界に戻りたいと思う日向たち。
四人で魔術具に触れて、発動を止めると共に、意識が遠くなる四人。
目が覚めてみると、各々の家に戻っている。時間は四時四十五分ちょうど。日付も変わっていない。
「うわあ、学校行かないと」「寝てないのに」ネットの向こうとこっちで叫ぶ。全員が無事戻っていることを確認して、お互いに笑顔を見せる四人。
今日の夜、またオンラインで会うことと、今のこの状態が終わったら、みんなでオフラインで会うことを約束して、眠い目を擦って日向は学校に向かう準備をする。
今までと同じだけど、少しだけ違う朝日を見て、楽しくない毎日は、自分たちの力で楽しくしたらいい、と考える日向。









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