プロット

文字数 2,974文字

起)地味でネガティブだがお菓子作りが大好きでお人よしな主人公の女子小学生、天見星名は自身と二人暮らししている母がとある病院に長期入院しなくてはいけなくない都合から、母が入院するまでの間その病院があるあやかし町に住む和菓子屋にしてお菓子作りの師匠である祖母の家にこの春から住むことに。初登校日、緊張と持ち前のネガティブさで憂鬱な顔の星名はクラスメイトのガキ大将、霧崎元気が落とした写真を拾って渡すも感謝されるどころか「天見というより雨見な顔」と揶揄われ「アメ」というあだ名を勝手に付けられるも、お転婆なクラスメイトの雪宮杏子に「アメって響きが飴みたいでかわいい」と反撃してもらい、星名改めアメと杏子は友達になる。

承)
初登校日の帰り道、流星が近所の神社に落ちるのを見たアメと杏子は神社に二人で行くが、流星が落ちた場所に転がっていた怪しい箱に興味のまま触れようとする杏子。嫌な予感がして彼女を止めようとして箱に触れたアメだけが箱から突如出て来た半透明の狼獣人型の怪物に「魂をよこせ」と掴みかかられる。狼の口から出る煙に二人とも包まれ、気絶する杏子と掴みかかられたままでピンチなアメ。しかしアメの祖母が乱入して怪物の口に餡子玉を投げ入れると狼獣人はマスコットサイズに。アメの祖母曰くこの怪物は「生きた悪い魔法」略して「悪魔」。この町に悪魔はいっぱいいるが本来は人間には見えないらしい。狼獣人、塩理の呪いの煙を至近距離で浴びたことによってアメは塩理に魂の一部を奪われ余命が一か月になったこと、中途半端に魂を奪ったせいで塩理はアメから離れられなくなったこととアメの目が悪魔が見えるようになったことが発覚。しかし、祖母曰く町の悪魔たちの心を癒すことで出る「癒し玉」を得られれば魂の一部を取り返せるとのこと。アメは祖母の餡子玉で弱体化した塩理と共に祖母の仲間であり彼女に力を貸す個性豊かな悪魔たちに挨拶回りをしたり「悪魔を癒す」ということが分からないアメは祖母の友達の悪魔の皆さんに肩叩きやお菓子のお裾分けやお手伝いなどをするが、仲良くなったり感謝こそされど癒し玉は出ず、癒すということについて悪魔に尋ねても「悪魔によって癒されるものは違う」と返されるばかり。素直でない塩理との共同生活もどうにも喧嘩ばかりだが、なんだかんだで面倒見の良くお菓子が好きらしい彼が悪人ではないようにアメには思えた。一方ガキ大将の元気はやっぱり様子がどこかおかしく、いつも給食では人参を残していた。元気はいつもアメを揶揄うばかりで結局話をちゃんと聞いてくれないことにアメは不満と違和感を抱く。

転)
悪魔たちと仲良くなりはしても癒し玉が出ないことに焦りを感じるアメと、流星の夜の一件の事情を説明されず、その上様子のおかしいアメを不安視する杏子。こうなった原因である塩理にアメは何故魂を欲したか、癒し玉探しを妨害しないか聞いても誤魔化すばかり。ある日学校で「家で親にお弁当を作ってきてもらって、学校で食べる」というイベントが行われることになるが、ガキ大将の元気が自分のお弁当を「ちがう、母ちゃんの作るお弁当の人参はもっと甘い、こんなの食えるか」と泣きながらこっそりゴミ箱に捨てる姿を発見。咎めると一方的に怒る元気。これをきっかけにアメと元気はたまりにたまった不満が爆発して大ゲンカ。そして元気に初めて会った時拾った写真に写っていた女性の面影がある悪魔が窓の向こうで元気を見つめていることに塩理が気づく。この女悪魔は元気と何か関係があるらしく、元気に人参を食べてほしいらしい。アメとしては元気に良い印象はないが、様子のおかしい元気を放っておけず女悪魔のお願いを聞き入れる。どうすれば彼に人参を食べてもらえるか、元気に人参を食べてもらうきっかけはどう作るべきか塩理と共に考えたり、ここで杏子と改めて喧嘩して、余命についてや母の持病など自分が抱え込んだ不安を吐露したりアメと塩理の事情を明かすことで仲直りし、一緒に考えてもらう。女悪魔から話を聞いて、そして行きついたのが「特別人参ケーキ」を作ることだった。塩理と杏子と一緒に作るもなかなかうまくいかず、しかし仲は改めて深まる。

結)
杏子がクラスの仲間達に提案したことをきっかけにアメと元気の仲直りパーティを行うことに。表向きはアメの歓迎のためだが実は元気に人参を食べさせるために杏子が思いついたもの。特技紹介のコーナーでアメは元気に「あなたと話がしたい、アメというあだ名の響きは気に入ってるけど私という人間についてあなたにも知ってほしい、ともだちになろう」と人参ケーキを手渡す。「こんなもの食えるか! 」と跳ねのけようとする元気だったが「食べれないなんて恥ずかしくないのか」と塩理がアメの祖母のカステラの力で一時的に元気にだけ声が聞こえるようにした状態で囁き、人参ケーキを食べさせると元気は涙がぽろぽろと出てしまう。実は女悪魔の正体は元気の母親だった。悪魔、生きた悪い魔法。その正体はこの町にかけられた大いなる魔法の力によって強い未練を持った生物の魂が異形の姿で具現化したもの。様子がおかしかった元気も実は母を一か月前に喪ってしまってからこうなっていた。よそ者であるアメに母の写真を持っている姿を見られたのが母への未練を断ち切れない自分を再認識させられているようで気持ちがぐちゃぐちゃになった末に、「母ちゃんに強い男になると約束した」という記憶を歪めて解釈した末にアメに意地悪な対応をしてばかりになっていたのだという。人参ケーキのクリームの中には人参グラッセが入っていた。アメが言うところの特別な人参ケーキというのは中にグラッセが入っているからであった。元気の母は人参嫌いな我が子のためにいつも人参を甘いグラッセにしていたからこそ、元気の母の提案でアメはケーキのクリームの中にグラッセを入れた「特別人参ケーキ」を作ることになったのだ。アメに謝る我が子の姿をみた元気の母は自分のために強がることを辞めたことや歪んでしまうことはもうないだろうと安心して、癒し玉を一つ残して消えてしまった。成仏したのだ。なにはともあれ一応解決。しかし残念ながら癒し玉ひとつでは余命は一か月から半年に先延ばしできる程度にしかアメの魂を塩理から取り返せなかった。アメの祖母は自分が悪魔たちの成仏、即ち「魔法の夜明け」を手伝う役目を持つ悪魔を視る力を持つ者「魔法使い」であることを元気の一件を終えたアメや塩理、杏子に明かす。不思議な餡子玉やカステラも魔法使いとして悪魔から借りた力で作り上げたものだった。「誰かが悲しい顔をしてるのは嫌だ、元気くんや元気くんのお母さんにできたように、少しでも誰かの心を明るくできるなら」「それにアメちゃんの命もなんとかしなきゃ」かくてアメは魔法使い見習いになったのであった。杏子も手伝うことを決意。塩理はややいやいやといった感じではあるが、アメの近くにいたいのかそれとも魂が欲しいのか「仕方ないな」と協力することを決めたのだった。アメの祖母は塩理に見えぬところで一人ぼやく。「人から魂をとったところで人間には戻れないのに」と。おばあちゃんの部屋の箪笥の中に塩理の入っていた箱は静かに今も眠っている。それでもアメのあやかし町での日常は、これからだ。
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