文字数 12,395文字

今日は、今日だけはいつもより学校が楽しみだ。
普段は家でアニメをみたり漫画を読んだりする方がたのしいのだけれど
今日は、今日だけは学校が楽しみなのだ。

7:00 眠い。とにかく眠い。まだ眩しいと感じる煌びやかな朝日を手の隙間から浴びて起床。
「天気いいなぁ、、」
目は次第に慣れ、行動が可能だと判断し布団から起きあがり鏡の前までフラフラと歩き進めた。

「今日もかわいいぜ、とも子ちゃん。」と鏡にうつる自分とグータッチ。
「、、、ねむぅ。」部屋の扉を閉め食卓へ向かった。

7:15「おはようママ」あくび混じりの一言。
「おはよう、とも子。なんなのその生気の感じられないおはようは」母はテーブルに最後の皿を置いた。

「生気はなくとも生きてますよ、今日もとも子は」とも子はそう言ってトースト2枚が置かれたテーブルの前に座った。
「あれ?かずきは??」他にもトースト2枚が置かれた皿が2つ並んでいたがそこには誰の姿もなかった。
「あー、今ちょっと和室にいるわ。」1席を母が座りそう言った。
「へぇーそうなんだぁ」サクッ。1口食べた。
「あの子あんまお腹空いてないんじゃない?とも子これも食べちゃいなさい」
「いらないよぉ、2枚でいっぱい。お腹いっぱいよぉ。」

7:45 テーブルにはパンのかすだけの皿が2枚、トーストが2枚残っていた。

「そろそろ行ってくるわ!!」お腹いっぱいになったとも子は制服に着替えちょっぴり化粧を施し食卓に降りてきた

「なんなのとも子、今日化粧濃くない??」
「いやいや、んなことないしょ!!今日もかわいいとも子っしょ!!」

とも子は母の言葉を背に受け食卓を出た
「まぁいっか、、」母は呟き洗い物を始めた。

「あら、また皿が減ってるわ」

とも子は玄関に向かい靴紐を結んでいた時、和室の方から声が聞こえた

「姉ちゃん。手伝ってー」
かずきだ。

「んー?かずきぃー??姉ちゃん学校行かなきゃだからちょっとー」少し声を張って言った。

「、、、、」「、、、、」「わかったぁー」
少し間が空いてかえってきた。

「大丈夫かな、まぁいっか!かずきー!なんかあったらお母さんに言いなよーー!」

「はーい!!」今度は直ぐにかえってきた。
「じゃあ、いってきまーす!!」
8:00 登校

8:05 「あ、きたきた。おーい!!とも子ー!!」
「うぃすーー!!おはーー!京子ーー!」
「LINEしたのにぃ、なんで見てないのぉー」

毎朝の待ち合わせの場所の清水橋。とも子は学校まで徒歩。京子は自転車で登校している。

「ねぇ、とも子自転車買わないの??」
「、、あたし??買わないよぉー!お金ないしー!」
とも子はオバサンが「そぉなのよぉ」と言いながら手を振るように手を振りながら言った。

「いや、でも、、、」
「それよりさ!2人乗りさしてよ!!あたし後ろ!!」

「、、、、」満面の笑みを浮かべたとも子に冷たい視線。
「高校生にもなって、、、もぉ仕方ないなあー」京子はほんとに仕方なさそうな顔をして自転車に腰を掛けた。

「あざすぅーー!!」ギュッ。とも子は荷台に座り京子に掴まった。

「じゃあ行くよ!!以外と時間ないんだから!!」

8:25 キーンコーンカーンコーン
「ちょっと!!もうあと5分じゃん!!」予鈴と同時に校門に入った2人。
「やばいやばいやばい!!!」
「とも子が途中こちょこちょしたりするから!!」

「ごめんごめんんんー!!」
「あーー!今日学校楽しみだったのにーー!!」京子は珍しく叫びながら2人はガンダガンダと言いながらガンダッシュで教室へと向かった。

8:30 キーンコーンカーンコーン本鈴と同時に教室に到着。
「はぁ、はぁ、はぁ、なんとか、、なんとか間に合った」
京子は息を切らしながら教室の扉を開けた。
「そうだねぇ!!!こんな大事な日!!遅刻したら台無しだったよぉ!!」とも子は満面の笑みで京子の後ろから教室に入った。

まだ先生は来てない。クラスの皆は席に着いていた。

「誰のせいよ!!はぁ疲れた、、とも子お昼ジュースね」
「はいよ!!ジュース注文ありがとうございまーす!!」

沈黙とも言えるシーンとした教室のなかでその会話が響いた。

「「あ、すいませーん」」2人は声を揃えて席に着いた。
とも子は窓際の1番後ろ角の席、京子は扉側の1番後ろ角。

「ん??隣の席空いてんな、、」とも子の隣の席が空いておりとも子はそう呟く。
何故か、いや理由はハッキリしているがクラス中の女子の視線がとも子の隣の席に向いているように感じた。京子の視線も当然向いている。

「、、、こりゃ生きずらいな。」

ガラガラガラ。教室の扉が開き先生が入ってきた。

「皆おはようーごめんごめん遅くなった!今日はまた天気がいいなぁー!太陽の光をビンビンに感じて、先生の先生もビンビン!!なんつって!」
男子、とも子爆笑。その他女子ガン無視。

「、、、、今日は。皆に話していた転校生が来る日だな」
ハゲあがった頭に太陽の光を浴びた先生がそう言った。

「入ってくれー」
ガラガラガラ

「「「「「「「「 きゃぁあああ!!!」」」」」」」

その他女子発狂。男子、とも子平然。
「はいはいはい!静かに!!!」まだハゲてる先生はそう叫ぶ
「えぇ、やばぁい。」「えぇ、本物だよ。」「えぇ、かっこいい。」「すごぉ、、生すごぉ」
その他女子の心の声が漏れ漏れで教室に飛び交う。

「はぁー、男前だなぁ」流石のとも子も心の声が漏れた。
未だにハゲてる先生は転校生に向かって
「はい、自己紹介をお願いします」

「はじめまして、東京から転校して来ました柳沢俊太郎です!趣味はTikTokを見たり撮ったりすることです!自分の事を知ってる人も知らない人も全員と仲良くなりたいのでこれからよろしくお願いします!!」

パチパチパチパチパチパチ
自己紹介中に心の声が漏れないように息を殺して聞いていたその他女子達の拍手。

「やばぁいほんとかっこいいんだけど」「えぇ、インスタ交換出来るかな」「えぇ、LINE聞きたぁい」「えぇ、付き合いたい」

「漏れてる漏れてる。心の声ジャジャ漏れじゃん。」
とも子の心の声がボソッと漏れた。
それを聞いた周囲の男子は数人、とも子と笑った。

「えーっとじゃあ木本の横の席あそこに座ってもらえるかな」まだまだハゲてる先生は転校生にそう言うと転校生は「はーい」と行って持ってきたカバンを担ぎ席に向かった

「よろしく!隣の席だね仲良くしてね!」転校生はとも子に手を出した
「あー、よろしく!!男前ですね、えーっと、、」
「ナギーで!!」
「あ、じゃあナギーくんね!私木本とも子って言いますちょっと古臭い名前だけどよろしく!!」

劇的にハゲてる先生の残りの話の間、女子の痛い視線を浴びながらお互い自己紹介をした。周りの皆も自己紹介をしている中、とも子は京子の顔をうかがった。

京子は口パクでなにかを伝えようとしている
「パク パク パク パク」
「 ず る い ぞ 」
察しのいいとも子は一発で読み取り
「パク パク パク パク パク パク パク」
「パク パク パク パク パク」
とお返し。

「全然わからん」京子はため息混じりで囁いた。
満面の笑みでとも子は「全然わからんって言ってるわ」

8:40 キーンコーンカーンコーン1時間目開始
次のハゲあがった先生が教室に入ってきたとき、ナギーがとも子の耳元で囁いた。

「ねぇ、放課後空いてる?」
とも子は不思議そうな顔をして頷いた。

1時間目が終わり京子がとも子に話しかけた。
「さっきなんていってたのさ!?」
「あー、あれ?あれは」
「有名かなんか知らんけど自分の事知られてる知られてないって謎の判断基準もってていかにも自己承認欲求の塊だねって言ったの」
「すごいこと言ってたやん、、てかとも子ナギー知らないの?」

ナギー。数ヶ月前にTikTokに上げられた1本の動画がきっかけで「カッコよすぎる」「なんだこの美少年は」と一躍人気者へ。今ではSNSのフォロワーも20万人を超えるほどの人気っぷりだ。

などと京子から一通り聞かされたとも子は
「へぇー、なんでこんな田舎の学校に来たんだろ??」

「なんか前にいた学校で騒がれすぎちゃって私生活に影響が出たとか言ってたよ」
京子はスマホでなにか探しながら答えた。

「へぇー、でもここでもこんなんじゃ意味無いなぁーかわいそ。」
「SNSでこの辺の学校来るってのは大体知ってたんだけどまさかこの学校に来るとはね!うれしいよ!!」
京子は今であまり見た事のないニヤニヤ顔をしていた。

「、、、まぁ有名な人ってことなんだな」
スマホで探しものを終えた京子はスマホをこっちに向けた
「これこれ!!この動画で有名になったの!!」

「ドゥンチャドゥンドゥンピープープンスカピープンスカプンスカピードゥンピードゥンチャドゥンチャドゥン」

呆然と動画を見終えたとも子は
「、、、まぁなんかあれだな。男前が小気味よく音にあわせて踊ってらっしゃるね。」

「、、、すごいこと言う。まぁとも子はこうゆうの苦手だもんね」

深く頷いたとも子は思い出したように口にした
「あ、なんかナギーくんに放課後空いてるか?ってさっきゆわれた」
「えーー!!なにそれ!!ずるいよ!!まだ私なんか喋ってすらないのに!!」
京子は天を仰ぎながらそう叫んだ

「いや、ずるいとか別にあたしは、」「私もいく!!」
天を仰ぐのをやめた京子はすかさずそう言った。

すこし戸惑いつつもとも子は

「、、、わかった」


16:00 放課後

2022年7月20日。夏休み前日。高校生最後の夏。
この日にこの夏の運命、覚悟、行動、命運が決まっていた。

「おまたせーー!」学校中の女子の求愛から解放され校門で待つとも子と京子のもとにナギーが走ってきた

「あれ?君は、、」ナギーがとも子の後ろに隠れる京子に問いかけた

「は、はじめまして!!よ、吉田京子って言います!」
「同じクラスの京子、なんやらついてきたかったんだと」
とも子は前に突き出すように京子を紹介した。

「そうなんだ!!よろしく!京子ちゃん!!」

「きょきょきょ!!」
京子はさかなクンのようなリアクションを見せ、3人は学校を出た

16:30
ミンミンとセミが鳴き、眩しすぎる太陽も少し日が落ちてきた。学校を終えた生徒たちでいっぱいになった並木道を3人は歩いて帰っていた
少し前を歩くナギー、その後ろにとも子、京子は自転車を押し2人でヒソヒソ話しをしていた

「ね、ねぇ聞いた??さっきナギーが京子って!!」
「あー聞いた聞いた、さかなクンっぽいの出てたな」

「そりゃでるよ!!さかなクンもでるよ!かっこよかったなぁ〜」

「そうかいそうかい、それはようござんしたね。それよりナギーくん」
京子のノロケ話を打ち消し、とも子はナギーに話しかけた
「あたしになんか用事でもあったんじゃない??」

いつの間にか下校中の女の子に話しかけられていたナギーは女の子に「ごめんちょっと、、」と言い女の子から離れとも子と京子の間に入ってきた

「ちょっと、、たすけて。用事はその後、、」ナギーは顔をカバンで隠すようにしてとも子と京子の間で隠れた

「わかったよ、とりあえず人の少ない所まで行こ」
「そ、そ、そそうだね」
平然と受け入れたとも子、明らかにナギーとの距離が近く動揺している京子はそのまま人通りの少ない抜け道へと向かった。


17:00
抜け道を通り、下校中の生徒たちから離れ古民家が立ち並ぶ路地へと出た。

「この辺まで来れば大丈夫かぁ」
「そうだね、ここまでは追ってこないと思う」
とも子と京子は真顔と不満顔でそう言った

「ありがとう、助かったよ」
ナギーは安心した顔で伝えた。

「それにしてもすごい人気だな、さすがTiktokerってか!!」
「ちょっととも子、ナギーの人気はこんなもんじゃないんだから!!」
「はは、、ありがとう。」
「、、でとも子ちゃん、京子ちゃんお願いがあるんだ。」
ナギーは真剣な面持ちで胸中を打ち明けた。

「「ボディーガード!?!?」」
2人は驚いた顔で驚いた声をだした。

ナギーは何故、高校3年生のこの時期に転校してきたか。そして何故、2人にボディーガードをお願いしたいのか説明した
「実は有名になってから、前の学校の生徒にもずっと付き纏われていたんだ。。私生活が無くなってそれで、、それで、、」
ナギーは怯えた表情でそのまま膝から崩れ落ちた

「もう大丈夫だよ!!もう大丈夫!!話さなくても大丈夫だから!!」
すぐさま京子は駆けつけナギーの手を取った。
「そうか、ナギーくん。怖かったな、、有名人にはそんなことが、、」

2人はナギーのボディーガードを引き受けた。

17:30
少し日が落ちてきた。3人は清水橋で解散することにした。
「じゃあこの辺で、、」
京子は自転車に跨り帰ろうとしたその刹那荷台がずしり。
「ねぇ、京子家まで送ってよぉ〜」
「あーとも子!!頑張って帰ってよ!!」

「いいじゃん〜2人乗り2人乗り!!」
「あ、ちょっと京子ちゃん話あるんだけど。」

「「え?」」

本日2回目、2人は驚いた顔で驚いた声をだした。
ナギーと京子は2人で河原へと向かって行った

17:45
ナギーと京子の話が終わり、結局京子はとも子を家まで送ることになった。

「いやぁ〜楽ちん楽ちん。ありがとね京子〜」
「今日だけだからね!!夏休み明けにはちゃんと自転車買ってよー!!それかちゃんと修理してもらうか!!」
「うぃうぃ」
日も完全に落ちようかといったところ、自転車に乗る2人には朝とは違う涼風が吹いていた。

「結局なんであたしたちがボディーガード頼まれたのか聞けなかったなぁ〜」
「そうねー」
「まぁでもとりあえずギャラリー達が集まらないようにナギーくん守りますかぁ〜」
「、、、、」
京子のペダルを漕ぐ足が止まった。

「私ナギーに告白された。」

「え?」

今日は今日だけはいつもより学校が楽しみだった。

「え、それは、、」

普段は家でアニメみたり漫画読んだりする方がたのしいのだけれど今日は今日だけは

「で、付き合うことになった」

学校が楽しみだったのだ。

「、、、それをさっきナギーから伝えられたの?」

何故?有名人がうちの高校に転校してくるから?

「うん」

明日から夏休みだから?

「明日初デートなの」

どれも違う。

「へ、へぇいいね、、」

今日、ある覚悟が出来ていたからだ。

「でしょ、楽しみ。でね!」
「好きだ」

だから、だから今日の学校が楽しみだったのだ。



同日東京 とある高校
16:00 終業のチャイムと同時に教室から飛び出すように数人の女子生徒が走っていった。

「転校、転校って!!なんで!!なんで!?」
「とりあえず家!!ガンダで家行ってみよ!!?」
「、、、、、」
「なんで急に居なくなったのーーナギーーー!!!」

廊下中に響き渡る声と足音で女子生徒達は悶絶していた。

16:30 ナギー宅到着
ピーンポーン
ピーンポーン
ピーンポーン
「、、、いない。」
「、、、ほんとにほんとに転校しちゃったんだ。。」
「、、、、、」
「ナギー、、なんで転校なんてしちゃったんだよ。。」

「ナギーのボディーガードもここまでか、、ワンチャン付き合えると思ったのにな、、2人とも帰ろ。」
「「うん」」
「、、、、、」

「「「え?」」」

「だ、誰!?!?」
「え!?怖い怖い怖い怖い」
「逃げて逃げて!!!」
ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッ

「、、、、、」「、、、、、ふ」「、、、、、ふふ」
「、、、、、ふふふ」

「わたしからはにげられないよ。」


18:00
とも子は京子に送ってもらい家まで帰ってきた

「ただいまぁーーー」
「おかえりなさーい!!」

「あ、かずきただいまー。あれ?お母さんは?」
とも子は靴を脱ぎ靴下を脱ぎ家へと入った。家では裸足タイプなのだ

「あー、お父さんと電話中ー」
かずきはそう言うと和室へと入っていった

「そうなのねぇー、あーお腹空いたぁあ」
とも子は裸足で廊下を歩く音を響かせながら食卓に向かった

「あー、おかえり」
母は今ちょうど電話を終えたところのようだ

「ただいまぁー、お母さんご飯んんんー」
「お母さんはご飯じゃありません、もう少しで出来るから待ってて」

「うぃーー」とも子はまだ未完成な献立の前に座りスマホをいじりだした。
長かった日は完全に落ち、しかしまだ今日は終わらないと主張するかのような月が出ていた。

「ねぇ、お母さんー。私今日京子に告白したー」
「、、、え?」

「今日だ、今日しかないって決めてたんだー」
「でもね、今日転校生が来てねその男の子すごい有名人っぽくてー京子顔ニヤニヤしてたのー」
「だからね、やっぱやめようかなーって思ったんだけど京子、その転校生に告白されたんだよねぇー」

「、、、、とも子。」

「だからね、やっぱ今日告白した。」「好きだ」って

「、、、、振られちゃった」
スマホから顔を上げたとも子の目には涙が溜まっていた

「、、、、、とも子。ご飯食べる?」

溜まっていた涙を拭うことも隠すこともせずただ下へ、下へと落とすようにとも子は泣いた。
「うん!たべる!!」

18:30
少し冷めた完成した献立を前に母ととも子は座り食事を始めた。

「おいしい、、」
「、、、よかった。ほら、これも食べちゃいなさい」

母は自分の生姜焼きを1枚とも子の皿へ入れた

「、、、ありがと。」
「これも食べちゃいなさい。」

「え?でもそれはかずきの、、」
かずきのおかずもとも子の皿へ入れた

「あの子あんまりお腹空いてないんじゃない?」
「、、、、そうなの?まぁでもお腹いっぱいだよ私も」

「、、、そっか」

とも子はお腹いっぱいになり、シャワーを浴びて自分の部屋へ向かった

20:00
「はぁ〜さっぱりしたぁ〜」
1日の疲れを声に乗せたような声をあげベットに飛び込んだ

ベットから見えた月はとも子に「今日は色々あったな」と語りかけるように顔を照らしていた

「、、、、、」
「、、、、、だめだったかぁ」

「ナギーくん。すごいなぁ、、1日で京子好きにさしちゃって、、」

「じゃあ話聞いてくれよ」と言わんばかりにとも子は月に向かって独り言を喋り始めた

「あたしなんか高校生なった時から好きだったんだよぉ、、」

「京子のあの優しさに惚れちゃったんだよなぁ、、」

「笑った顔、可愛くて、気づけば友達の好きから恋愛の好きになってたんだよなぁ、、」

「明日11時集合だって、、初デート」

「良いなぁ、あたしもデートしたいなぁ京子と。」

とも子は月に話を聞いてもらいながら徐にスマホからナギーの動画を月に紹介した

「なんかこの動画がナギーくんを有名にしたんだと」

「なにがいいんだよ音に合わせて動いて」

「TikTokって言うんだって」

「しょーもない。何がコメントだよ。誰がこんな動画に、、」
とも子はスマホを動かす手、月へ向けた口を閉じた

「、、、、なにこれ。」

とも子のスマホの画面はGoogleへと変わり検索に

【⠀Tiktoker ナギー 彼女 】

そう入力した。

0:00

高校生最後の夏が始まった。

「自由と不自由が渦巻くこの世界で自由と不自由の境界線に立つ彼、彼女らはいかに今日の不自由を受け入れ、自由を乗り越えられるか。それにこの世界はかかっている。」

とも子は徹夜で読んでいた少年バトル漫画の最終回の一コマを読み終えた。最後に時計を確認した。

10:00

「そろそろ時間だな。」
着替えを済ませ毎朝定番の鏡の前に立ちつくした。

「今日もかわいいぜ、とも子ちゃん。」
「、、、、あたしの知る限りでは2番目だ。」

「、、、よし行こう。」と鏡にうつる自分とグータッチ。

食卓に降りたが人影はなく、とも子は自分でトーストを1枚焼き食べた。

「あ、かずきは起きたかな。お腹空いたかな」
とも子は和室へ向かい襖をゆっくり開けた。

「あ、姉ちゃん」
かずきは勉強机に向かっており、手元には1枚の絵が描いてあった。

「かずき、おはよう。お腹空いてない?」
「うん、大丈夫だよ。それより見てこれ描いたの!」

そこには昨日の夕飯の生姜焼きがあった。

「うまっ、めっちゃうまいじゃんかずき!」
すごいすごいととも子はかずきの元に近づき頭を撫でた

「ほんとすごいうまいじゃん。昨日の晩御飯、見て描いたの!?」

「ううん!ぼくのはぐちゃぐちゃだったから」
「ん?ぐちゃぐちゃ?」

とも子は和室を見渡すと悪寒がする程の残飯と汚れた皿があった。

「だから想像して描いたんだー!!」
「かずき、これはどうゆうことなの??」
「ぼくさ、学校全然行ってないけどこの絵は夏休みの宿題で出せるかなー?」
「、、、、、」

かずきは母から虐待を受けていたと今知った。

「ちょっとお母さんと話してくる。」とも子は和室から出ようとするとかずきがとも子の手を取った。

「まって、、ぼくは大丈夫だから。姉ちゃんがいれば大丈夫だから。」
「いや、でもかずき。。」
とも子はかずきの手を握り締めた。

「痛いことはされてないから、、」
「、、、、そうゆう問題じゃ」
とも子はかずきの手を強く握った。

「前はお父さんと2人だったからちょっと大変だったけど今は姉ちゃんがいるから大丈夫だよ」

「、、、ごめん。全然気づけなくて。」
とも子の目から涙がかずきの握り締めた手に落ちた。

「泣かないで、、」
姉弟2人は抱きしめ合った。

「かずき、やっぱ姉ちゃん帰ってきたらお母さんと話してみる。あたしたちは家族でしょ。」

「、、うん!ありがとう」
とも子は襖を閉め、和室から出ようとした時かずきが口パクでなにかを発した。

「 パク パク パク パク パク パク パク パク 」
「 姉 ちゃ ん あ り が と う 」

「姉ちゃんありがとう。あたし口パク読み取るのうまいや。」
と呟くと和室をあとにし家を出た。

家を出ると即座にスマホを取り出し警察へ電話した。

「〇〇警察です。」

「あ、すいません。あたしの家、住所〇〇〇〇〇〇の者なんですけど母親が子供を虐待しています。すぐに助けてほしいです。」

「あなたとの関係は?」

「その家の家族です。姉です。大切な人たちです。」

「、、、分かりましたすぐに向かいます」

「お願いします。」プツッ
電話切ると、スマホの時計に目がいった。

「やばい、急がないと。」
とも子は走り出した。もう1人の大切な人の元へ。



とも子は京子とナギーの集合場所、清水駅へ着いた

ハァハァハァハァ

「やばい、、時間は」
スマホを見ようとするが電源が入らない。
「、、、あー漫画読んだまま充電してない」

とも子は清水駅の周辺を走り回り京子とナギーを探した
しかし、2人の姿は見当たらなかった。

「おー、木本じゃないか」
振り返るととも子の目には見覚えのあるハゲがうつった

「先生!!!!京子!えーー、吉田と柳沢は見てないですか!?!?」

「おー、、なんか清水橋の方歩いて行ってたぞ」

「ありがとうございます!!!ハ!えーー、先生!!」
とも子はすぐさま清水橋へ向かった

「あー、なんか東京から来たお友達も一緒だっ、、て行っちゃったか」
「わざわざ学校に電話して来てまで会いに来るとは、、青春だねぇー」



「ナギー、今日は2人の初デートだよね!?」
「、、、、う、うん」
「、、、、、」
京子たちは清水橋の方へと向かっていた。

「なのに、、誰?この人。」
「、、、、と、東京の友達だよ。ね、ね?」

「うん。元カノ?的な?ふふふっ」
ナギーと京子の後ろをつけるようについてくる。

「、、、ねぇ元カノって言ってるけど」
京子はナギーに耳打ちした。
「、、、なんで。なんでここまで。。」
ナギーには京子の声は一切届かず、ナギーの口はプルプルと震えていた。

「ねぇ!!2人は付き合ってどれくらいなの!?」
女が急に喋りかけてきた

ビクッ ビクッ

「えー、あー昨日ナギーから告白されて、、」
京子が応えると続けるようにナギーが応えた
「そ、そうなんだよー。一目惚れしちゃってさー」

「一目惚れだったの!?へ、へぇそんな可愛いかなぁ」
京子はニヤニヤと嬉しそうにしていたが、そんな京子に目も向けずナギーはついてくる女の様子を恐る恐る伺っていた

「、、、私の時と同じね。。」
女は囁くと

「逃げろ!!!!!!京子!!!」

女はカバンからナイフを取り出し2人を追いかけて来た

「え?」

ダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッダッ

「き、きゃあああああああ!!!!!」

京子とナギーは全力で走り出した。女はそこまで早くはないが明らかに正気ではない目で追いかけて来た

「京子!!離れろ!!!あいつはおれを殺しに来たんだ!!」

「え!?!?いやだ、怖い怖い怖い怖い。」
京子の息が荒くなり目は焦点があっていない

「だ、大丈夫だ!!お、おれが助けてやる!!!」
「ナ、ナギー、、」
ナギーは近くの森の方へ向かい、京子は清水橋の方へと向かった。


「あれ?京子いないなぁ、、」
京子を探しているとも子は清水橋に向かっていた。

「と、とも子!?!?!?」

「あ!京子!!探したよ!!!!」

ハァハァハァハァハァハァハァハァ
京子は息がきれていた

「ど、どうしたの!?!?なにかあった!?」
「逃げて、、とにかく逃げて!!!!」

京子はとも子に必死に告げると2人は走った
ハァハァハァハァ
「ね、ねぇ誰から逃げてるの!?!?!?」
ハァハァハァハァ
「な、なんかナギーの元カノ?ぽい人が急に襲ってきて」
ハァハァハァハァ
「え!?元カノ!?!?ストーカーじゃなくて!?!?」
ハァハァハァハァ
「ストーカー!?!?」

とも子は京子にナギーの過去について詳しく説明した。
ナギーはあの動画で有名になる前から、ストーカーに付けられており困っていた。
動画で有名になると、同じ学校の女子生徒にボディーガードをお願いしストーカーから身を守っていたと。

ハァハァハァハァ
「あくまでネットの情報だけど、、その動画にうつってるのよ女の人が、、」

息の上がった2人は、清水橋に着き足を止めた

「その動画にうつってるのがストーカーだって?」
「そ、そう。コメントそれしかなかった、、」

「じゃ、じゃあストーカーから逃げるために転校してきたってこと!?!?」

「う、うんたぶんね。。」
とも子はそう応えると、京子は心配そうに森の方に目を向けた

「ナギー、大丈夫かな、、」
「、、、京子。あんなやつ気にせず逃げよ。」

「、、、でも。」
京子は森から目が離せずにいた。京子はナギーを本気で好きなのだと。こんなことになった今、自分よりナギーを心配するなんて本気で好きなんだととも子はそう感じ無理やり京子を連れていけなかった。

「京子。あたしまだ京子のこと大好き。」
京子のナギーへの気持ちは理解した。でも、とも子の口からは京子への愛が溢れ出てきた

「、、、ありがと。でもとも子昨日も言ったけどわたしは、、」「わかってる。」

「でも、もう一度言いたくなったの。」

「あのね、覚えてる?ナギーが転校してきた時さ京子に口パクしたじゃん??」
「覚えてるよ、覚えてるけど今はそれどころじゃ。。」
京子はパッと後ろを振り返った。

「え?」

「あの時さ、実は「京子以外は興味無い」って言ってたんだよね。だからあの時が実は初こくは、」
「とも子!!!!後ろ!!!!」

「ん?」
グサッ

「、、、ふふふっ。やっちゃった。」
京子のお腹にナイフが刺さった。

「え、京子?京子!!!!」

「、、、ふふふっ。おまえだおまえが悪いんだ。」
女は奇妙に笑いながり消えていった。

バタン

「京子!!!京子!!!」
倒れた京子に必死にとも子は声をかけた

「、、、と、とも子大丈夫??」
「だ、だ大丈夫だよ、京子。なんでなんで、、」
「、、、よかった。」
「なんで、、なんで京子が」
ナイフの刺さった腹からは血がとめどなく流れた

「京子、待ってて今すぐ救急車を、」
京子はスマホを取り出すが、スマホの画面には焦り戸惑う自分の姿しかうつらなかった

「京子スマホ、スマホかして!!」
「、、、、さっき逃げる時に落としちゃった。」

「、、、、」

「とも子。わ、わたしね何故かからだが勝手にうごいたの、、」

「京子、、」
とも子は持っていたスマホを離し京子の肩を握った

「、、、さ、さっきまでナギーのことばっか心配してたのにね、、」

「京子、、もう喋っちゃだめだ。ちょっと待ってて周りに誰か、、」

「、、、いいの。とも子大丈夫だよ。」

「何言ってんの!!!大丈夫じゃない!!」

「、、、、ありがとね」

「だから喋っちゃだめ!!傷口、傷口開いちゃうから!!」

「、、、、、ありがと」

「清水橋越えたら人がいるはず、ちょっと誰か。誰か」

「、、、、、、ありが」

「京子。ちょっと待ってて今人影が、」

ありがと、好きになってくれて


高校生最後の夏。京子にはこの日が最初で最後の夏となった



数日後
「面会時間は10分となります。では、どうぞこちらへ」

「、、、姉ちゃん。」
「かずき。」

「どう、、元気にしてた?」
「うん。なんとか」
「、、そう。よかった。」
「姉ちゃんは、大丈夫?元気?」
「うん、大丈夫よ。」

「「、、、、、」」

「最近ね、読書してるんだ。」
「へぇ、いいね。どんなの読んだの?」
「最近読んだのはね、「嫐」ってタイトルの本かな」
「へぇ、、うわなり。どんな話だったの?」

「なんか、男の人と女の人が付き合ってたんだけど別れちゃって男の人に新しい彼女が出来たんだけど前の彼女が嫉妬でその新しい彼女を殺すって話」

「、、へぇなんか難しそうね」
「うん、すごい難しかった」

「ねぇ、かずき。あの日姉ちゃんが和室から出る時口パクしてたでしょ?あれなんて言ってたの?」
「あー、あれは「でももう限界」って。」

「そうだったのね、、やっぱ姉弟ね。」
「うん、姉弟だよ」



「面会時間終了です」


「じゃあまた来るから、元気にね」
「うん。ありがと姉ちゃんも「嫐」読んでみてね」
「、、、うん。わかった。」
「、、、でも読書感想文には書けないかな」


「そうね、夏休みの前に読みたかったね」


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