第1話

文字数 1,597文字

 リコちゃんは5さい。ほいくえんがだいきらい。きょうも、おしたくしないでにげちゃった。
「だってらんぼうなこがいるし、おひるねなんてしたくない。みんないっしょの、おおなわとびもこわいんだもん」
 ひとりでえほんをみるのがすき。まどからそとをみるのがすき。
 ママに「あしたはいこうね」っていわれても、ぷーっとふくれておへんじしない。
 でもね、リコちゃん。ほんとうはこまっているの。みんながたのしそうなこと、じぶんだけがいやなの、なんでだろうって。
 リコちゃんのこころは、おそとのけしきとおんなじ。すっきりしない、くもりぞら。
「あーあ……」
 リコちゃんが、おおきなためいきをつくと、まどのそとから、すずめのこえがきこえてきたよ。
「ふふふ、きょうはたくさんいる!」
 リコちゃんは、まどからすずめをみるのがすき。ちいさくてまるい、かわいいすずめが、だいすき! みんなおなじにみえるけど、おおきさやもようが、すこしずつちがうんだって。
 それでね、リコちゃんさいきん、きになっているすずめがいるの。いつもみんなとすこしはなれて、いちわだけでいるこがいるの。「なかまはずれなのかな?」ってしんぱいしてた。
 でもね、ちがうみたい。だっていつも、とってもたのしそうなことしてる。
 きのうは、ありのぎょうれつの、あとをつけていたよ。そのまえのひはじめんに、はなびらをならべてた。
 リコちゃんは、ゆうきをだしてはなしかけてみた。
「ねえ、すずめさん。あなたはいつも、ひとりであそんでいるけど、さみしくないの?」
「にんげんさん、いつもひとりでまどからみてるけど、さみしくないの?」
 ふたりはかおをみあわせて、どうじにおなじへんじをした。
「「ちょっとだけ、さみしいわ」」
 そしてそのあと「ふふふ!」とわらいあって、おともだちになることにしたんだって。
 すずめのなまえは“ちゅんちー”。ふたりは、まいにち、いっしょにあそぶようになった。
 ぼうしのついたドングリをさがしたり、たいこをたたいて、うたったり。まいにちたのしくて、リコちゃんはますますほいくえんへ、いかなくなった。
 そんなあるひ。
「リコ、ごめんね。きょうで、おわかれなの。むれが、ちがうまちへ、ひっこしするの」
「ちゅんちーとおわかれなんてイヤだよ!」
「ちゅーちーもかなしいけれど、それがすずめのきまりなの」
「それならリコも、すずめになる。すずめになって、ちゅんちーといっしょにいく!」
「そんなのダメだよ。リコはにんげんでしょう? ちゅんちーは、いまのままの、リコがすき」
 ちゅんちーは、リコちゃんのほっぺをつんつんと、くちばしでつついた。
「ちゅんちーね、すずめのおともだちをつくるよ! ひとりもいいけど、おともだちとあそぶのも、すてきってわかったの。だからリコも、にんげんのおともだちをつくってみて」
「わかったよ。でも、にんげんのおともだちができても、リコのいちばんはちゅんちーだよ」
「ちゅんちーも。リコがいちばんのおともだち! またきっとあいにくるよ!」
 ちゅんちーはさいごに、くるくるとリコちゃんのまわりをとんでから、なかまのところにいってしまった。
 リコちゃんはちゅんちーがちいさくなって、みえなくなるまで、ずっとずっとてをふった。

 つぎのひリコちゃんは、ほいくえんにいってみた。そしたら、おにわのすみで、ひとりでおだんごをつくってるおんなのこがいたよ。リコちゃんにはそのこが、はなびらをならべていたときのちゅんちーと、そっくりにみえたんだって。
 ひとりでたのしそうなそのこは、きっとリコちゃんやちゅんちーとおなじ。だまってならんでおだんごつくってたら、それだけですこしたのしいきもちになった。
 あしたはゆうきをだして、はなしかけてみようね。そしたら、きっとすてきなことがおきるよ。

 それはちゅんちーがおしえてくれたこと。リコちゃんと、ちゅんちーがみつけたこと。
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