文字数 687文字

【何でも屋の日常】
「だから言ったでしょう。やめておけと」

私が呆れながらそう言うと、

「しかし、最終的には丸く収まっただろう?解決したわけだからいいじゃないか」

と私の目の前に座る男は楽しそうに言った。

「だからといってトイレごと吹き飛ばすのはやりすぎですよ。何考えているんですか」

「便器ごと火星まで吹っ飛ばす勢いだったな。我ながら上手くいった」

男は満足そうに頷いた。私は呆れながら

「依頼人は嫌味な上司をこらしめてほしい、と言っただけでしょう!それが何で便器ごと宙を舞うことになるんですか」

「あいつはそれぐらいされて当然さ。調べたらセクハラ、パワハラのオンパレード。とんだろくでなしだったじゃないか」

「だからといって社員旅行のキャンプで全社員の目の前で吹き飛ばさなくても・・・」

「全部計算通りにいったろう?まず、上司の飲食物に強力な下剤をまぜる。そしてあらかじめ便器が吹き飛ぶように仕掛けをしておいた仮設トイレまで上司を誘導して、あとはスイッチを押すだけ。着地のわら山に突っ込むとこまで完璧だったじゃないか」

「そこにいた社長に便器の“中身”が全部かかるところまで計算通りでしたか?」

私がそう尋ねると、探偵は笑いながら

「あれは傑作だったね、見たかい?あの社長の顔。いや、もう見れたもんじゃなかったけど」

まったく、と私は肩をすくめると

「それで上司はその後どうなったんです?」

「体はなんともないさ。ただ左遷が決まったそうだよ。まぁ全社員の前で尻丸出しでとんだあげく、社長をああしちゃったわけだからねぇ」

私が呆れた顔で見つめると、男は笑いながら

「全く何でも屋っていうのは汚れ仕事が大変だよ」


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