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文字数 1,062文字

 無機質な毎日は、太陽の訪れで始まる。
 常に燃えている太陽は、水素がヘリウムに変わる現象と言われているけれど、その燃料は尽きることなく、大地に恵みを与え続ける。
 何気ない日常も、地球の自転で顔を出す太陽に操られるかのように、始まりを告げる。
 この太陽が燃え尽きて、なくなってしまえばいい。そう憎くも感じてしまう。
 無機質な日常がなくなってしまえば良いと、そう願いながら。
 光は秒速三十万キロメートルで突き刺さってくる。地球には八分三十秒遅れでその姿を現す太陽の光は、恵みの光なのか、モノクロームの日常が始まり、死に向かっていくカウントダウンなのかも知れない。今の現状に照らし合わせるのであれば、後者を選ぶ。すべての時間が動き出し、すべての終わりが近づいてく。
 すり減っていく時間を、無駄に浪費している様にしか思えない。そんな朝日は憎らしい。太陽の燃料だってすり減っている。世界はおわりへとつながっていく。これを恵みと言えるのだろうか。その恵みはいつまで続くのであろうか。その恵みを当然のようにむさぼる姿は、醜いと感じてしまう。
 この朝日と言うものは、希望を照らすものなのだろうか。皆はそういうだろう。けど、その明かりを絶望と捉える人間だって少なくとも居るはずだろう。その一人はここに存在するのだから。
 うっとうしいぐらいにまばゆい光は、いらだちを覚えさせられる。
 それは、退屈の一日が始まるのだから。
 それは、死へのカウントダウンが始まるのだから。
 それは、世界が衰退する始まりだから。
 それは、すべての終わりの始まりだから。
 すべてが終わるのであれば、始まりもあるのだろうか。今が終わればなにが始まるのだろうか。
 けたたましく鳴り響く、目覚まし時計を叩き止めて、布団の温もりに甘えたい気持ちと葛藤する。その葛藤に打ち勝って、無理矢理に身体を起こして、カーテンを開ける。
 既に起きあがっている太陽の光は、八分三十秒前の姿を見せつける。当然ながら、カーテンを開ければ一瞬で部屋をまばゆい光で満たしていく。
 モノクロームの一日が始まるはずなのに、部屋は様々な彩りで飾られる。と、言っても、部屋自体が無機質なので、偽りの彩りは現実に戻していく。
 情熱の赤。
 冷徹の青。
 息吹の緑。
 複雑な色の絡まりで、網膜を揺らすその光線は、脳内への刺激に変わってゆく。この彩りを感じられる生物は、人間以外にはどれくらいの生き物が感じるのであろうか。その特権を人間は持っているのであろうか。
 そして、終わりに向けた始まりが、日差しの色で切られた。
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