第1話
文字数 734文字
【起】
小学三年生のサナは、学校でいじめられていた。もう逃げたいと思っていたある日の帰り道、とある広告を目にする。そこには『あなたの物語、実現します』という文言とともに、BOXが置かれていた。サナは現実逃避で書いたファンタジーを投函する。
六年生になったサナは、ついに屋上から身を投げようとしていた。そこにタキシード姿の一人の男が現れる。男の名はロード。ロードは、サナが書いた物語を実現する案内人だという。自分の物語を投函したことすらすっかり忘れていたサナ。ロードはサナに、屋上から飛び降りるよう促す。飛び降りた先に、ファンタジー世界への扉があるのだと。サナは勇気を振り絞り、屋上から飛び降りる。
【承】
気が付くと、サナは大空を猛スピードで落下していた。地面に激突しそうになるのを、巨大な怪鳥が助けてくれる。見下ろす雄大な世界は、サナが思い描いていたファンタジー世界そのものだった。
ロードの案内で異世界を行くサナ。しかし、ここは小学三年生のサナが作った物語の中。魔物に追われたり、王子が何人もいたりと、はちゃめちゃな展開に悪戦苦闘する。
【転】
そんな中、この物語に暗雲が立ち込める。サナが生み出した魔女ドラルーガが暴れだしたのだ。世界の崩壊を防ごうと奮闘するサナだったが、ロードともはぐれ、自らも荒れ狂う海の中に落ちてしまう。
【結】
人魚族に助けられたサナは、魔法の道具の力で、ドラルーガを倒し、世界は再び平和に戻る。
充分自分の世界を楽しんだサナは、元いた世界に戻りたいとロードに願う。しかし、ロードは、それはできないという。サナが理由を聞くと、ロードは答えた。
「だって、屋上から飛び降りたじゃないですか」
サナはすでに死んでいて、この世界が天国であることを知る。