10.
文字数 1,441文字
「それでは。
自分の後をついてくる。真っすぐの時はそのままだけど、曲がる時は自分と反対の動きをする。仲良くすれば、上手に踊れる。それは何だ?」
鯨は「フハハ」と笑い、こう続けた。
「小僧、儂を侮るでない。それは『尾』だ。儂らについておるではないか。それに気付かぬと思うのか?」
「正解。さすがです。それでは次の問題」
「ふむ。聞こう」
「元居た場所、仲間の許に戻ろうと、丸く縮こまっている。戻ることが出来たら、姿は見えなくなってしまう。これは何だ?」
鯨は再び「フハハ」と笑い、こう続けた。
「小僧、侮るなと言ったであろう。それは『泡』だ。空気が上に向かっているのよ」
「正解。さすがです。では―――」
キオはいくつも問題を出し、鯨はすらすらと解いていく。そのうちに鯨は上機嫌になってきた。巨大な体躯も軽やかに動いている。キオは自分も興奮していることに気付いた。それを押さえつつ、謎を出した。
「では、これは? 朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足の生き物は何だ?」
「小僧、侮るなと何度言わせるつもりだ? それは地上に住まう巨獣の出した謎ではないか。その答えくらい、儂は知っておるぞ。それは『人』だ。赤ん坊の時は這って歩くので4本。やがて2本足で立ち、いずれ杖をつくようになり3本だ」
「正解。さすがです。では、これは? 朝は2本足、昼は0本、夜はE。これは何だ?」
「なに?」
さすがの鯨もこれには戸惑った。そんな生き物は聞いた事が無い。直前に出された問いになぞらえているのだろうが、成長と共に変化するとしても、その姿が想像できない。何より『夜はE』とはどういうことなのか? それは足を表しているのか? それとも別の何かか?
「おい、小僧。その問いは少々卑怯ではないか? 謎の中に解らぬ謎が含まれておるぞ。どういうことなのだ?」
「まあ、それはそうですが―――」
キオはくるりと後ろを向き、そのまま猛スピードで泳ぎ出した。
「待て小僧! 気になるではないか!」
鯨はキオの後を追いかけた。
「小僧! 待つのだ! ヒントくらい残していけ!」
そんな鯨の言葉をよそに、キオはスピードを上げて泳いでいく。頭に描くのは日記に描かれた幾つかの絵。そして自分が歩き回った島の記憶。泳ぎ続けて、キオは見つけた。あの大人達の船と船着き場だ。少し前に、子供達を連れて来たようだ。大人達が建物を見ながら一息ついているのが見える。キオはそこに狙いを定め、泳ぎ出した。
「わかったぞ小僧! 答えを教えて欲しければ奴らを蹴散らせ、と言うのだな。いいだろう! お前の望みを叶えてやろう!」
キオはそのまま泳ぎつづけ、鯨は後に続いた。キオは船の下を通り抜け、鯨は船を木っ端みじんに破壊した。ついでに地上のあちこちを破壊した。惨劇の中、大人たちの叫び声が聞こえた。キオは振り返ること無く泳ぎつづけ、鯨はその後に続いた。
「ありがとう。お礼に答えを教えてあげる。答えは『コカトリス』だよ。でも、僕が作った半分オリジナルのコカトリスなんだ。鶏と蛇の混合生物であるコカトリスは、
生まれた時は鶏の血が強く2本足
成長すると空を羽ばたくから0本
成熟すると蛇の血が濃くなって地を這って進む。Eは地面(アース)のE。
これが答えだよ!」
鯨は「ハハハハハ!」と大笑いした。
「やられたぞ、小僧! 誠にあっぱれだ! こんな勝負ならまた受けて立つぞ!」
自分の後をついてくる。真っすぐの時はそのままだけど、曲がる時は自分と反対の動きをする。仲良くすれば、上手に踊れる。それは何だ?」
鯨は「フハハ」と笑い、こう続けた。
「小僧、儂を侮るでない。それは『尾』だ。儂らについておるではないか。それに気付かぬと思うのか?」
「正解。さすがです。それでは次の問題」
「ふむ。聞こう」
「元居た場所、仲間の許に戻ろうと、丸く縮こまっている。戻ることが出来たら、姿は見えなくなってしまう。これは何だ?」
鯨は再び「フハハ」と笑い、こう続けた。
「小僧、侮るなと言ったであろう。それは『泡』だ。空気が上に向かっているのよ」
「正解。さすがです。では―――」
キオはいくつも問題を出し、鯨はすらすらと解いていく。そのうちに鯨は上機嫌になってきた。巨大な体躯も軽やかに動いている。キオは自分も興奮していることに気付いた。それを押さえつつ、謎を出した。
「では、これは? 朝は4本足、昼は2本足、夜は3本足の生き物は何だ?」
「小僧、侮るなと何度言わせるつもりだ? それは地上に住まう巨獣の出した謎ではないか。その答えくらい、儂は知っておるぞ。それは『人』だ。赤ん坊の時は這って歩くので4本。やがて2本足で立ち、いずれ杖をつくようになり3本だ」
「正解。さすがです。では、これは? 朝は2本足、昼は0本、夜はE。これは何だ?」
「なに?」
さすがの鯨もこれには戸惑った。そんな生き物は聞いた事が無い。直前に出された問いになぞらえているのだろうが、成長と共に変化するとしても、その姿が想像できない。何より『夜はE』とはどういうことなのか? それは足を表しているのか? それとも別の何かか?
「おい、小僧。その問いは少々卑怯ではないか? 謎の中に解らぬ謎が含まれておるぞ。どういうことなのだ?」
「まあ、それはそうですが―――」
キオはくるりと後ろを向き、そのまま猛スピードで泳ぎ出した。
「待て小僧! 気になるではないか!」
鯨はキオの後を追いかけた。
「小僧! 待つのだ! ヒントくらい残していけ!」
そんな鯨の言葉をよそに、キオはスピードを上げて泳いでいく。頭に描くのは日記に描かれた幾つかの絵。そして自分が歩き回った島の記憶。泳ぎ続けて、キオは見つけた。あの大人達の船と船着き場だ。少し前に、子供達を連れて来たようだ。大人達が建物を見ながら一息ついているのが見える。キオはそこに狙いを定め、泳ぎ出した。
「わかったぞ小僧! 答えを教えて欲しければ奴らを蹴散らせ、と言うのだな。いいだろう! お前の望みを叶えてやろう!」
キオはそのまま泳ぎつづけ、鯨は後に続いた。キオは船の下を通り抜け、鯨は船を木っ端みじんに破壊した。ついでに地上のあちこちを破壊した。惨劇の中、大人たちの叫び声が聞こえた。キオは振り返ること無く泳ぎつづけ、鯨はその後に続いた。
「ありがとう。お礼に答えを教えてあげる。答えは『コカトリス』だよ。でも、僕が作った半分オリジナルのコカトリスなんだ。鶏と蛇の混合生物であるコカトリスは、
生まれた時は鶏の血が強く2本足
成長すると空を羽ばたくから0本
成熟すると蛇の血が濃くなって地を這って進む。Eは地面(アース)のE。
これが答えだよ!」
鯨は「ハハハハハ!」と大笑いした。
「やられたぞ、小僧! 誠にあっぱれだ! こんな勝負ならまた受けて立つぞ!」