趣味

文字数 1,746文字

おれの趣味は変わっている。
何が変わっているかって?どんな趣味か気になるか?


おれは今日も大好きな観葉植物をぼーっと寝転びながら眺めている。
少し目線より高い場所にあるたくさんの種類の観葉植物はおれの唯一の友達。話すわけでもないが見ているだけで心が落ち着く。観葉植物はただただ、おれの心の支え。暇な毎日、少しずつ変わる個性豊かな観葉植物は本当に面白い。おれの生活に彩りを与えてくれるものとも言える。特に、おれのお気に入りはシェフレラだ。葉によって微妙に色が違うのを観察するのが最高だ。毎朝水を与えられ、少し元気になった姿を見るのもまたいい。話が変わったが、今のが趣味かと思ったか?そんなわけない。観葉植物は見ているだけのものだ。今から趣味の時間に入る。そろそろ出かけようじゃないか。考えただけでワクワクする。皆、どんな趣味か楽しみにしてくれ。

おれは部屋を出て、道を歩く。最近の好きな道は河川敷の細い道。今は秋。最近、だんだんと紅葉してきた木々がまたいい。そして原っぱの草と草の隙間にひょっこり隠れている虫もいい。おれは虫はそこそこ好きだからな。

少し歩くと〇〇通りに着く。ここはそこそこ有名な道である。日本、いや世界でも有名で観光客が多く訪れる。
友人と笑いながら歩く者、スーツを着て足速に歩く者、楽しそうにしている外国籍の者。通行人は多種多様である。
そんな、人通りの多い昼下がり、おれは心を踊らせて道を歩く。そんなおれに見向きもしないで皆は通り過ぎてゆく。

あっ!あった!!

地面に落ちている少し踏まれた煙草の吸殻。それをおれは拾い上げる。

突然のことに驚いたか?
煙草の吸殻を拾うことに。
実はこれがおれの趣味だ。だがこれだけがおれの趣味では無いぞ。


今から良いものを見せてあげようじゃないか。
とりあえず一度家に帰ろうか。
家に着くと、おれは拾ってきた煙草の吸殻を一度床に置く。
そしておれはベッドと机の間にある隙間に入った。ここは俺の秘密基地。ここには誰にも見せられない大切なおれのコレクションが飾られている。大切なコレクション、とは煙草の吸殻アートだ。皆気持ち悪いと思うかもしれないが、これが意外と面白い。しかも、煙草の吸殻はゴミになるし、最終的には二酸化炭素にもなる。煙草の吸殻は正直環境に悪い。環境問題は今深刻だ。そんなものを拾い楽しむおれ。いつもはぼーっと怠けているが意外と社会に貢献しているのではないか?
毎日拾っては飾る。日によって違う種類なのが面白い。それが1日の日課であって、おれの最大の趣味でもある。
最近おれが作っているものは大好きな観葉植物、シェフレラを作ることだ。煙草は色が変わっているものがありそれでおれの好きなシェフレラの特徴を捉えられる。
今日拾ってきたものを慎重に置く。
おお、いい感じだ。だがまだ完成には程遠い。だから今から俺はもう一度出かけるか、おれの煙草を見つけるとっておきのスポットへ。

ビルとビルの一メートルほど隙間を慎重に歩く。そこを抜けると夜の街に出る。夜の街の昼は静かだ。人っ子一人いない。ときどき寂しそうに吹く風だけ。そこに俺は足を踏み入れる。煙草離れしている現在、夜の街は今もなお煙草を吸う人が多い。だから吸殻が多くある。そこから俺は観葉植物シェフレラのアート作品に使えそうな物を道の隙間や店裏を探し、いくつか拾って帰る。

そしてまた、シェフレラを眺めながら吸殻を置いていく。だんだんいい感じになってきた。
おれの煙草の吸殻で作った物は沢山ある。いろいろな観葉植物やよく行く夜の街など。初めのうちはリンゴや冷蔵庫などを作っていた。
この作品たちは誰にも見られないように厳重に置いているつもり。

すると、ドアが開く音がした。やばい、誰か帰ってきた。おれはもとに居た場所に戻る。おれが外出していることは内緒だ。

「まろちゃーん、ただいま〜元気にしてた?」
おれは立ち上がる。
「ニャアー」




今日もまたおれは暇な毎日で煙草の吸殻集めをしている。
飼い主に見つからないように、


数週間後
「何これ?私こんなもの置いてたっけ?」
終った…
「にゃあ?」
「これ煙草の吸殻?まろちゃんが集めてたの?」

この日を境に俺の趣味は終った。








だが、今もなお隠していたベッドと机の隙間にはおれの煙草の吸殻アートが残っている。

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