第5話 鏡餅

文字数 399文字

 プランターに芽が出たのを見て、浩は感激した。

 そして、たまに水や肥料を与え、こまめに手入れをした。
木は順調にそだち、数年後、小さな蜜柑がなった。

 浩は、それをその年に鏡餅の上に乗せ正月を祝ったのだった。

 蜜柑の木は、浩にささやいた。

 「約束通りに植えてくれてありがとう。
おかげで木になれたよ・・
ささやかな御礼として、子供を枝に付けた。
ありがとう・・、そして子よゴメンよ。」

 だが、浩には蜜柑の声などわかるはずがなかった。
ただ、浩は蜜柑がなったことに感激した。
本当に実がなるなんて・・・
自分が栽培し実がなったたことで愛おしくなり、実家に持ち帰り庭に植えた。

 やがて浩は結婚をして実家に移り住んだ。やがて娘が生まれた。
娘が小学校に上がる頃には、立派な木となり甘い蜜柑を毎年つけた。

 ただ、蜜柑と浩は互いの生を終えるまで、二度と夢で会話をすることはなかった。
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